一章 徘徊スル悪夢 前編
祝!初の男の子登場!!あ、ちなみに、この物語に出てくるキャラクター、すでに皆立ち絵があるんですよ。機会があれば、公開"してくれる"かもしれないですよー。
では、本編どうぞ~。(前書きのネタが浮かばなかった。)
先ほどの教室から、廊下に出てきた。どうやらこの学校、長いこと人が来ていなかったらしく、所々に積もった埃や蜘蛛の巣なんかが、なかなかの雰囲気を醸し出している。うん。さっきから体の一部分がギリギリと音を立てているんだけど。流石に痛いよ?約一名蕩けた表情で悦んでいるんだけどね。やっぱり僕にはわからないや。
「ねぇ...窓から出られるとかいうオチってないかな...?」
かなでが、両手にさらに力を込めながら聞いてくる。そのペースだと僕の手が死んじゃうと思うんだけど。
「んっ...、多分...あっ...それ...はっ...無理かな...っ...!..やっ、そこぉ...♡」
割とガチ引きしたけど、無理という意見には賛成するしかなさそうだ。
かなでは不安そうに問う。
「な、なんで...?見た感じここ一階だよ?窓とか昇降口とかから出られるんじゃないの?」
その問いに対し、少し遠い目をしてしまう。
「まぁ、こういうことにはありがちだから最早お察しなんだけどね。ほら、見てみなよ。」
そういって、片手を窓の縁にかける。そして、その窓を開こうと目一杯引いてみるが、ビクともしない。
「こういうことさ。」
雅が諦めたように言う。かなでは、今後の事でも想像したのだろうか、顔を真っ青にしている。
「あと、握る力強すぎ。流石にそんなにされたら痛いよ。」
一名ほど悦んでいるんだけどね。
「あ、ごめん...。」
意外にもあっさりと聞き入れてくれた。...ちょっと言い方悪かったかな...。あとで謝っておこう...。
「ああん、今度は優しく握ってくれてるぅ...嗚呼、こんな風に振り回されるのも素晴らしくいいでござるぅ...。」
あっちは、最早僕には逆立ちしても手の届かない領域に行き着いたみたい。そっとしとこ。
「さっきから拙者の扱いが雑な気がするでござる...。これはこれでいいのでござるが...。」
「いや、雑に扱ってはいないよ。ただ、一人(?)の世界に入ってたからそっとしとこうと思っただけだよ。」
「ヴッ"...これこそが雅ちゃんの愛のカタチ...っ!この素っ気なさ...イイっ!」
ヒエッ雨音ちゃん怖い
そんなこんなで校舎一階を見て回ったが、見た感じ普段使いされるような教室がなく、技術室なんかがあった。おそらくここは、特別科目の教室なんかが入る特別棟なのだろう。一応外に出られそうな出入口を見つけたが...ね?そうは問屋が卸してくれなかったね。
「ここが特別棟なら、本校舎にいけば、もしかしたら何か情報を得られそうじゃない?」
かなでが、多少震えながら聞いてくる。やはり、気を遣わせてしまっただろうか...。
「さっきの言い方、やっぱりキツかった?ごめんね?」
雅が伏し目がちに聞くが、かなでは幾分か明るい笑顔で。
「ううん、それは普通に悪かったと思うし、大丈夫。みんなと一緒だと思うと、ちょっと心に余裕が出来てきたから。それに、お荷物にはなりたくないからね。」
嘘を吐いているような素振りはなかった。よかった。これからの付き合いに影響する可能性もあったと考えると、ここで変な空気を作るのはいただけなかっただろうしね。
「しかし、この階には本校舎に至る道はなさそうでござる。やはり、上の階にいくのが賢明な判断だと思うでごさるよ。」
お。やっとまともな会話に参加してくれた。よかった。ふと気づくと、握っているかなでの手に、微かに力が入っていた。
「大丈夫かい?これから上の階に行く事になると思うけど、もしキツかったらもうちょっと待っても「大丈夫。さっきも言ったけど、みんなと一緒だから。怖いことは怖いけど、いざとなったら三人で乗り越えれば大丈夫!」
ずいぶんと強くなったらしい。そして、ずいぶんと頼られているらしい。これは、期待にきちんと答えないとね。
「ア"ァ"ッ"、やっぱりかなでちゃん可愛いッッッ!!!」
あ、また悶絶してる。そっとしとこ。
「大丈夫、雅ちゃんの声も聞こえてるよ。そっとしておくという雅ちゃんなりの愛情...うっ...かなでちゃんとのダブルパンチ...気持ちいい...っ!」
えぇ...(困惑) そんなこんなで、(ちょっと目を背けたいものもあったけど。)上の階に昇ろうと、三人が階段に足を掛けた瞬間、丁度行こうとしていた上の階から、明らかに三人のものではない足音が。おまけに、何か叫び声のようなものもしている。急に、この先に行くことを体が拒んでいるかのように、三人の足が前に進まなくなる。平たく言えば、足がすくんでしまったのである。
「や、やばいでござるよ...。このプレッシャー、この先にいるのは、きっとただ者じゃないでござる...。」
先ほどまで軽口ばかりだった雨音が、急にガチな事を言い出す位には、ヤバい存在感がそこにあった。かなでは何も言わない。きっと、言えないのだろう。雅が、そっとかなでの手を握っている手に力を込める。
「大丈夫、三人で乗り越えればいいんだもんね。」
「...うん!」
「覚悟の準備ができたみたいでござるな。じゃあ、行くでござるよ!」
固まっていた三人の足が、力強く前に進んだ。
上の階につくと、そこは異様な空気に満ちていた。コツコツという足音は、正面から聞こえてくる。足音の正体を探るべく、三人はその階の探索を始めた。懐中電灯を進行方向に向けても、どういうわけか、光が当たることがなく、暗闇が広がるばかり。とにかく足元くらいはわかるようにと、足元を照らす。かなでは、震えてこそいるが、しっかりとついてきてくれている。雨音は...案ずることはなさそうかな。ちなみに、怖がってはいるが、すごく瞳をキラキラさせてる。楽しそうで何よりだ。さて、どんなヤツが待っているのかな?
足音は確かにしているので、それを追いかけていたはずだったのだが、いつの間にか廊下の端に着いてしまった。
「あれ?誰もいない...?」
かなでが恐る恐る口を開く。
「いや、わからない。もしかしたら真後ろにいるとか言うホラー映画のテンプレみたいなのがあるかも...。」
「じゃあ、誰か一人が振り返って、いなければ一回下の階に戻ろう。」
「じゃあ、拙者が振り返るでござるよ?」
おずおずと雨音が声をあげる。しかし。
「いいや、私がいくよ。」
おっと、これは予想外である。「大丈夫なのかい?」
「うん。なんかいたら、みんなで頑張ればなんとかなるよ!」
かなでの成長速度が異様すぎるのですがそれは...。「じゃあ、頼むでござるよ。ただし、危ないと思ったら...」
「大丈夫、みんなを引きずって猛ダッシュするから。(キリッ)」
oh...
かなでは一呼吸置いた後、パッと後ろを振り返る。しかし、誰もいなかった。
「なんだ...誰もいn「「うわあああああああああ!!!!」」えっ!?どうしたの!?」
二人の絶叫にかなでが振り返ると、二人の前に同じくらいの背丈の少年が...。
「ん?あんたらって...。なんでこんな所にいるんだ...?」
彼は三人を見るなり首を傾げ、思案顔になる。
「それはこっちが聞きたいよ。ここは?君は僕たちのことを知ってるのかい?」
雅が、怒涛の質問攻めをする。
「おおぅ。ちょっと質問が多すぎるねぇ...。まぁいいや。っても、どの質問に答えるにしても、俺が知ってる情報って不確定要素が多すぎてねぇ。流石に、答えられるような状況じゃないんだわ。ごめんな。」
彼は頭を掻きながら、申し訳なさそうに言う。
「代わりといっちゃ流石にお粗末だが、自己紹介だけしておこう。俺は、八雲 日向っていうんだ。覚えてくれると嬉しいかな。」
日向と名乗った少年は、金髪にピアスといった、普通にクラスにいたら近寄りがたいガラの悪そうな見た目をしているが、悪いやつではないというのが、三人には話し方でわかった。
「今、妹を探してるんだ。ちょうど、あんたらと同じ位の背丈で...ちょっと子供っぽいヤツなんだが...あんたらが見たってことは...ないよなぁ...。」
意気消沈といった感じで、ため息をこぼす日向。ちなみに、先ほどまで日向に怯えぎみだったかなでだが、妹という単語を聞いて、表情を変えた。
「あなた、妹さんがいるの?」
「ん?ああ。双子なんだが、これまた手の掛かる妹なんだよ。今もどうせかくれんぼかなんかのつもりで隠れてるんだろうなぁ…」
「わかる。それ。私は5歳差の弟なんだけど、そいつもすごく手の掛かる子で...。」
お、意外な所で意気投合した。まぁ、楽しそうで何よりだ。そういえば雨音は...。
「カップル成立の匂い...。このままでは、かなでちゃんが盗られてしまう...。しかし日向くんもなかなかのイケメン故に行く末が気になりまくるぅ...。どうするべきなのだぁ...。」
なんか難しい顔で呟いてら。ほっとこ。にしても、先ほどの足音が日向なら、あのプレッシャーは一体...?そんなことを考えつつ、日向とかなでの話に耳を傾ける。
「あいつ、もう高校に入ってるにも関わらず、まだ俺と一緒に風呂入ろうとするんだぜ?信じられるかぁ?」
「本当に!?ウチのは流石にそれはなかったなぁ...。あ、でも、末っ子ってみんなそうなのかな?弟はすっごくマザコンなの。未だにお母さんにベッタリで!」
「へぇ...ウチはそれがブラコンに変化した感じなのかな?母さんはいつも仕事で居ないし。」
「お父さんはいないの?。」
「ああ。ウチは両親が離婚してっからなぁ。」
「...なんかごめん。」
「大丈夫だよ。今はなんだかんだ楽しいからさ。そんなことより...。」
ふむ。やっぱり怪しい所は無いんだよなぁ。でも、あのプレッシャーが気のせいってことはないだろう。ということは、あれの正体は別に...?
「っ!危ないっ!!!」
次の瞬間、背中に強い衝撃が走った。振り返ると、同じく突き飛ばされたであろうかなでが唖然としており、その視線の先には、暗いもやに覆われた日向の姿が...。
続く...。