3.王都最強を名乗る剣士。
5月31日は作者都合で夜のみ更新かもです。
申し訳ございません<(_ _)>
――カイナとパーティーを組むことになった、翌日のこと。
俺たちはギルドで待ち合わせていた。今日も相変わらず、周囲の視線が刺さる気がする。昨日の一件の後、カイナに服を見立ててもらったのだが……。
首を傾げていると、不意に話しかけてくる人物があった。
「もし、訊きたいことがあるのだが良いかね?」
「む……?」
それは、どこか鼻にかかったような声をした剣士だった。
二枚目と三枚目の間であるような、そんな顔立ち。長い黒の髪を後ろで一つに結び、目の横には十字架の文様を刻んでいた。
背丈は俺と同じくらいか。
しかし、どこか細身で頼りなく思える身体つきをしていた。
「私の名前はザッコー・ファースト。この街一番の剣士だよ」
「この街、一番の剣士? そんな男が、俺になんの用だ」
「ふふん。一昨日の酒場での一件、見せてもらっていたよ?」
「酒場、一昨日……」
そんな男――ザッコーは、鼻で笑いながら語る。
言われたことに覚えがありながらも、素直に応えるのは癪に思えた。だから、少しとぼけた風に振舞うと、彼は腹を抱えて笑う。
「あっはははははは! とぼけないでくれよ、アドくん。もう、キミの素性はすべて調べさせてもらっているのだからね」
「な、に……?」
そして、その言葉を訊いて俺は眉をひそめた。
素性がバレている……? いったい、どういうことだ。
この街にやってきてから、俺が魔族であることを語ったことなどない。それにもかかわらず、この男は俺の素性を知っていると言った。
自然、警戒心が強くなる。
「いやいや、そんなに警戒しないでくれよ。私はただ、キミと交渉がしたいと思っただけなんだ。怖がらないでくれ」
「交渉……?」
「あぁ、そうさ!」
睨みつけると、ザッコーはおどけてみせた。
そして、こう提案する。
「私と勝負をしよう! キミが勝てば、秘密は守ろう」
「…………お前が勝てば、どうなる?」
訊ねると、彼はニッと笑ってこう言った。
「私が勝てば、キミはこちらの配下に加わる! どうだい!?」――と。
大仰に両腕を広げて。
ザッコーの提案に、俺は少し考えてから答えるのだった。
「なるほど、良いだろう」
事情は分からないが、こちらの素性を知るとなれば放って置けない。
高笑いするザッコーを見ながら、俺は静かに息をつくのだった。