七色の鱗 8
学校が終わるとともに裕太は学校を飛び出した。
息を切らしながら走って走って走った。
裕太は和馬の家のドアの前に立った。
インターホンを押しても反応がない。
厚い扉をドンドンと叩いた。
家の固定電話も携帯もメールすら通じないとクラスメートが話していた。
何か大変なことが、起こり始めたのかもしれない。
「おい!和馬いるか!大丈夫か!」
いくら叩こうと鉄の扉はびくともせずに立ちふさがっている。
和馬の家は母親一人しかいない。その母親も今日は仕事で帰りが遅くなるはずだ。
「くっそ!」
裕太はカバンを投げ出すと、扉を全力でけりつける。
ガン!ガン!ガン!
誰もいない階段に鈍い音が響き渡り、反響してグワングワンと唸るような音を立てる。
しかし部屋に入ることはできない。
裕太はドアをたたき続けた。
こぶしの皮がむけて血がにじんだ。
足にもぬるぬるとした感触がある。
しかし、裕太はドアをたたく。
ガン!ガン!ガン!ガン!
階段に音が響く。
日が暮れて階段が茜色に照らされる。
黒い扉は開かない。
ガン!ガン!ガン!
裕太が部屋に入れたのは、日が暮れてしばらくたって和馬の母親が帰ってきてからだった。




