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第九十九話 美味しいビール

 箱の中は予想通り鉄製の細い管を氷でしっかり覆っており提供する瞬間にしっかり冷やして提供できるようなっていいる。これなら氷の量も少しで済むし、コストも抑えられそうだ。この鉄製の管が作るのに手間というか時間が掛かりそうだけど、もう少し改良を加えられる余地がありそうだ。


「この鉄の部分で一気に冷やしているんですね」


「はい、鉄は熱が伝わりやすいので管の中を通すことで一気に冷却することが出来ます。しかもこの箱の中はずっと閉めたままにしておけるので少ない量の氷で一日ぐらいならずっと冷えたままでいられます」


「この案はタルコットさんがお考えになったのですか?」


「私の案と試行錯誤しながら作ってもらった道具屋のデレクさんのおかげですよ」


「タルコットさん、私から提案があるのですがこの器具やタルコットさんのリンカスタービールの注ぎ方を街全体に広めて、どのお店で飲んでも美味しく飲めるようにしませんか?」


「もちろんそれが理想的なのはわかるのですが、そんなことしたらこの店の売上は落ちてしまうじゃないですか」


「一時的には落ちるかもしれませんが、しかし美味しい注ぎ方を教えているタルコットさんがいる店として広まることでお客さんがついてくるでしょう。それからタルコットさんさえよければ、ビール工場にて商品開発部門の役職付きで雇わせていただきたいと考えています。味や品質はもちろん、より良い提供の仕方など今後は専任で考えてもらいたいと思います。もっと多くの人に美味しいリンカスタービールを知ってもらいたくないですか?」


「僕が商品開発部門の役職に……」


「もちろん、道具屋のデレクさんにもお声掛けさせていただこうと思っています。私が見たところこの器具は更に改良の余地があります。これからリンカスタービールは様々な種類の展開も考えていますし、その為の試行錯誤はもちろん、日中にお店の方を集めた注ぎ方講習をすることで街全体のレベルアップを図っていきたいと考えているのです」


「何故、街全体のレベルアップをする必要があるのでしょうか? 確かにこの店は忙しくなりましたが今でも私一人で回せないこともない程度です。正直、そこまでする必要性を感じないのですが」


「詳細は理由はまだ言えないのですが、近い将来にリンカスターの人口は急激に増えていきます。直近でも王都から多くの労働者が大勢この街にやってきます。そして、すぐにハープナ、カイラルでもビールの提供は広がり、すぐに王都でもこのリンカスタービールが輸出されることになります。そうなればいずれ展開はアストラル全域になるのです」


「アストラル全域での商売を考えているのですか!?」


「アストラル全域から多くの人がリンカスタービールの美味しい提供の仕方を勉強するためにリンカスターを訪れることになるでしょう。そして、みながここで本場の味を知るのです。タルコットさん、本場の味を一緒に作りあげませんか?」


 いつの間にやら熱が入ってしまい、会話は僕とタルコットさんのみで、みんなは驚いてポカーンとした表情をしていた。まぁ、タルコットさんを口説くためとはいえ、少し先の話をあたかも確定事項のように話したり、アストラル全体での販売とか大風呂敷を広げた話までしているのだからびっくりもするだろう。


「ハルトはそんな先のことまで考えてリンカスタービールの展開を考えていたのかよ」

「これが異世界の知識なのですね」


「ママ、お腹がすいたの」

「パン包みを食べてみるか? リンカスター名物なのだ」

「うん! 食べるの」


 ロドヴィックさんとダリウスさんは驚いていたけど、クロエとベリちゃんはあまり興味がないようだ。


「ハルトさん、ぼ、僕でよろしければその話受けさせてください! で、でも一つお願いがあります。この店に私なりの恩返しをしたいと思っているので、講習会のタイミングというのは少し時間を頂いてもよろしいでしょうか」


「もちろん、そのあたりの調整はお任せいたします。他にも新製品のテスト販売や試食会などを優先してこちらの店で行ってもいいのではないでしょうか。新規のファン獲得に繋げられるかもしれません」


「そ、それは素晴らしい。是非とも提案させていただきたいと思います」


「明日はビール工場の方にも顔を出す予定ですので詳しい話はまた明日行いましょう。今日は長旅で少し疲れましたので、ゆっくり食事させて頂いたら休ませていただきます」


「はい、よろしくお願いいたします」


 と、とりあえず、少し強引だったかもしれないけど良き人材を引き抜き出来たようだ……。僕自身に何となく知識はあってもそれを実践する経験はない。僕の想いを形にしてくれる人材を周りに揃えることで力にすることが出来るのではないかなと思ったりした。


「ママ、賢茶のおかわりなの!」


 ボア肉のパン包みを頬張り、ベタベタにソースまみれになっているベリちゃんの口をクロエが拭いてあげていた。


「タルコットさん、賢茶とボア肉のパン包みを追加注文お願いできますか?」


「は、はい、ご注文ありがとーございまーす!」

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