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第九十五話 領主様からの提案

 領主様から出た提案は僕たちからするとちょっと意外なものだった。


「これは提案なのですが、対外的にリンカスターのドラゴンは消滅したことにしようと思っています。そしてベリルちゃんと賢者殿には、今まで通りこのリンカスターを拠点に生活をしてもらいたいと思っています。もちろん、条件もあります。一つは賢者殿とベリルちゃんの移動制限です。リンカスター、ハープナ、カイラル以外の場所への移動を禁じます。それからベリルちゃんにはこのままヒト型でいてもらいたいのですが、それについては大丈夫でしょうか」


「一応理由を聞いてもよろしいですか」


「私の力が及ぶ範囲がリンカスターとカイラルまでだからです。ハープナについてはヴイーヴル殿が許可を出してくれるでしょう。アストラルでドラゴンは神聖であり畏怖の象徴であり、また暴力の権化なのです。そのドラゴンが王都やその他の街へ行くというのは私の判断できる基準を超えます。つまり、国王様の判断になります。そうなると、優先されるのは私の具申や判断でもなく、ハルト君や賢者殿の気持ちでもなく、国としての危機管理が基準になってしまうのです」


「自分たちの街にドラゴンが入ってくることを許すはずがないということですね」


「その通りです。共生の道を歩んでいるヴイーヴルですら他の街への移動が許されていないのです。これは、その地域にいるドラゴンへの影響を考えてのことでもあるのです。ドラゴンは縄張り意識の強い種族であるとも言われております。自分のエリアに他のドラゴンが入って来た時にどんな災害が起こるのか予想だにできないのですよ」


 ヴイーヴルとベリちゃんが仲良くしているのは、ベリちゃんがヴイーヴルを慕っているというのもあるけど幼生体の頃からの付き合いだからなのかもしれない。ニーズヘッグのいた頃のマウオラ大森林にヴイーヴルが来たら大喧嘩になるのは目に浮かぶ。他の地域のドラゴンについては情報がないので何とも言えないけど、共生の道を歩んでいるドラゴンであっても自分の住むエリアに他のドラゴンが来るのはいい顔をしないかもしれない。


「領主様が言っていることは理解できます。クロエとベリルはセットで考えているということですね。僕には移動制限はないのですね」


「残念ながら制限する理由がありません。ただ、出来ることならリンカスターを拠点にして活動して頂きたいと思っています。ハルト殿には一級市民権を与えております。この街での暮らしに必要な費用は褒賞金以外にもお出しするつもりです。賢者殿やベリルちゃんと一緒に暮らしながら街の発展のために知恵をお借りしたいというのが正直なところです」


 領主のベルナールさんは、真っ直ぐな瞳で僕をみている。ドラゴンが消滅したと発表することは、領主としてもそれなりにリスクを伴うはずだ。そのリスクをとっても、街の発展や僕の持つ異世界の知識を欲している。


「少し時間をいただいてもよろしいですか? もちろん、その間はリンカスターを拠点にし、行動範囲も領主様の言われる移動制限内とします」


「勿論です。みなさんでじっくり話し合ってから決めてください。何か条件や相談があればそれも仰ってください」


「かしこまりました。あっ、ところでベリちゃんは、ずっとその姿でいられるんだっけ?」


「うん、パパ。大丈夫なの!」


 便利だね。寒い日とかは、ふわふわのドラゴンになってもらえたら暖かそうだ。ドラゴンの成長スピードがいまいちわからないところだけど、あっという間に大きくなってしまいそうだよね。ドラゴンベッド……いつか叶えたい夢だ。


「クロエもそれでいいかな?」


「うむ。それで構わない」


大事なことだ。ここですぐに結論を出す必要はない。孤児院に戻ってからゆっくりクロエとベリちゃんと話をして決めよう。それに領主様の案はベストではないが、それなりにこちらのことを考えてくれている提案だ。自らにリスクを課しているところも誠意を感じるところではある。


「では、この話は一旦ここで終わりにしましょう。次は商売の話ですね。ケオーラ商会の方が来る前に少し話をしておきたいのですが、ハルト君はケオーラ商会に輸送関連とリンカスター以外での輸出販売を考えているようですが合ってますか?」


「はい、そのように考えております。販売ルートが広がれば、その分リンカスターへの税収も増えていくと考えております」


「そうですね。それは大変ありがたいことなのですが、他の商会に話をしなかったのは何か理由があるのでしょうか? 商売というのは競合がいて切磋琢磨することでより良いものや仕組みが出来上がっていくのではないかなと思ったのですが」


「そうですね。それが最終的には正しい選択になると思います。しかしながらこの新事業は、大型荷馬車の手配、街道の整備やルート作り、冒険者への護衛費など、結構な初期投資が必要になる案件だと思っています。この事業を円滑に成功させるためには商会にわかりやすく利益を得てもらうことが重要ではないかと思ってるのです」


 最初に声を掛けてくれた商会だし、何よりクロエの幼馴染のベネットがいるというのが一番の理由ではあるのだけどね。


「なるほど、そのためにケオーラ商会に独占させるということですね。一つ問題があるとすれば、他の商会からの圧力、ケオーラ商会への嫌がらせ等が考えられます。そこをどのようにかわすことが出来るかは考えておいた方が良いでしょうね。そのあたりを踏まえて打ち合わせをいたしましょう。では、ケオーラ商会を呼びましょうか」

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