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第八十一話 消滅

「さぁ、あまり時間を掛けるつもりはありません。返事を聞かせてもらいましょうか」


舟を囲うようにして集まる魂浄化(プリフィーソウル)の靄にイシュメルも理解が及ばない魔法を恐れているように思える。目の前でジャミルが消え去ったのを見ているので余計にそうだろう。


「そのまま逃がすとでも? ニーズヘッグと向かい合ってきたクロエにその覚悟がないとでも言うですか」


 ヴイーヴルは再びドラゴンの姿へ戻りイシュメルの注目を集めるようにして立ちはだかる。


「それが、あなた達の回答なのですか? 残念ですが、舟でここを出るまではクロエには盾になってもらいます。仕方ないですね、あなた達にはこの洞窟ごと消えてもらいましょう。全てを破壊し尽くす特大の広範囲魔法を受けてみるといい」


 イシュメルの全身から魔力がうねるように集約されていく。右手に持つその杖には、紅く光り輝く塊が弾けんばかりに暴れている。劫火の塊が撃ち出されようとしていた。


 深紅の爆裂(クリムゾンフレア)


 先程とは比べ物にならない規模で爆裂が広範囲に広がっていく。激しく炸裂しながら激しい深紅の爆裂が近づいてくるのだが、激しい音とその凄まじい光の連続が視覚、聴覚、そして近づいてくる凄まじい高温がどうしても死を感じさせる。


「ハルトっ!」


 防御上昇(プロテクション)


 イシュメルの広範囲魔法を自ら抑え込むようにしてヴイーヴルが翼を広げて盾となる。光っていたヴイーヴルがあっという間にその光を吸い取られるかのように消えていく。


 防御上昇(プロテクション)


 追加の魔法をヴィーヴルに放つとすぐに魔力回復薬を飲む。魂浄化(プリフィーソウル)をかなり撃っていたようだ。МPが既に切れかかっていた。あと少し、持つのか……。


 防御上昇(プロテクション)


 5回目の防御魔法を放った時だろうか、ようやくイシュメルの広範囲魔法が終わった。そして、舟の上では、自分が使える一番の魔法を防がれて茫然としているイシュメルが立っていた。


「な、なんだその魔法は!! やはりお前か! お前がイレギュラーなのだ! 異物なのだ! そんな魔法は知らない! 私の知らない魔法がなんでそんなにあるのです。お前はいったい何者なのですか!! お前から、お前から殺せばいいのですね……」


 これが殺気というものだろう。明確に向けられる強い意志が僕の足を竦ませる。


 と、ここでタイミングよくベリちゃんが魂浄化(プリフィーソウル)のブレスをイシュメルの後方から放った。ベリちゃんナイスだ! しかも魔法を避けようとするイシュメルの足をクロエが抑えている。


「ちっ! 小賢しい真似を!」


 慌てて後ろを向き回避態勢をとるイシュメルの目線が外れた瞬間、僕はその隙に深眠(ディープスリーパー)を発動させる。このタイミングを待っていた。


 イシュメルが広範囲魔法を撃ったとはいえ、依然として洞窟内は僕とベリちゃんが撃ちまくった魂浄化(プリフィーソウル)の光で溢れており、深眠(ディープスリーパー)の魔法が目立たない。クロエも一緒に寝てしまうかもしれないけどそこは許してほしい。イシュメルの目線が切れているこの瞬間に計10発の深眠(ディープスリーパー)が舟全体を覆うように行き渡った。その瞬間、イシュメルの膝がガクッと折れる。クロエも同様に足から崩れるようにして倒れていった。


「な、何をした! し、知らない! こんな魔法は私の知識にない! け、賢者の知識にない魔法が一体何個あると……いうのですか……」


 意外に頑張るなイシュメル。さすがは最強の賢者といったところなのか、人によって魔力耐性的なものがあるのかわからない。しかしながらどうやら彼にも限界が訪れたようだ。クロエに遅れること数分、最強の賢者が遂に深い眠りに落ちた。


「ハルト! 早くイシュメルを!」


「もちろん! すぐに!」


 と、その時ベリちゃんから追加の魂浄化(プリフィーソウル)のブレスがイシュメルに飛んでいくと体全体が光に包まれるや否やイシュメルは光の中に小さくなって消えていった。消える時はあっさりとまるで存在していなかったかのように消え去っていた。


「美味しいところを持っていかれましたね」


「いえ、止めなんて誰が差したっていいんです。ベリちゃんありがとう! それと、さっきはごめんね」


「キュィ! キューィ!」


 おそらく気にするなと言ってるんだと思う。あと、クロエの治療を早くしてって言っているのだろう。クロエの顔に付いている血を舐めるようにして僕の方を見ている。クロエママめっちゃ愛されているな。


「そう言えば、この魔法はじめて使うな」


 癒しの風(ヒール)


 ステータスを見る限り、回復しているので問題ないはず。今は深眠(ディープスリーパー)の影響で寝ているだけだろう。みんなの力があったから何とかなった。誰一人欠けていてもイシュメルを倒すことは出来なかっただろう。


「ハルト、ローランドとアリエスのステータスを見てください!」


「そうだね、まだ終わってなかったね。急いで戻ろう!」


 HPがおおよそ半分を切っている。洞窟に入り後退しながら戦っている二人の姿がマップにも表示されていた。マーカーの色は黄色になっている。あと少し、とにかく急ごう。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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