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第七十九話 死闘

 地面に叩きつけられるようにしてバウンドすると、ベリちゃんは一度立ち上がろうとするも、崩れ落ちるようにしてその動きを止めた。距離が離れているので無事を確認できないが何とももどかしい。


 すぐにアリエスがベリちゃんのもとへ駆けつけようと走り出すものの、かなりの数のシーデーモンがイシュメルの指示でその後を追い掛けていく。やはり指揮系統はこの人のようだ。


「ローランド!」


「かしこまりました」


 アリエスとベリちゃんを守るようにローランドさんがシーデーモンを牽制しながら近づかせない。ヴイーヴルと僕はアリエス達を守るように位置どりを変更する。イシュメルに魔法を撃たせないためだ。


「ハルト、ベリルのステータスを!」


「あっ、そうか!」


 慌てて、『冒険の書』を開いてベリちゃんのステータスを確認する。HPが3、2と徐々に減っていっている……。


「アリエス急いで!」




「あれがマウオラ大森林の新しいドラゴンなのですか。やはり、ニーズヘッグは討たれたというのですね。信じられませんね……。あなたは、おそらくですがハープナのドラゴン、ヴイーヴルなのでしょう。ハープナから動けたのはちょっと意外でしたよ。ところでその位置どりは、私の魔法を防げるとでも言いたげですね」


「さぁ、どうでしょうね。あなた程の賢者が撃つ広範囲魔法は私も受けたことがありませんからね」


「広範囲魔法以外なら問題ないとでも言ってるように聞こえますが?」


「やってみたらわかるのではないですか」


 どちらも落ち着いたゆっくりとした口調で喋っているが両者共に隙がない。少しの沈黙の後、杖を構えて様子見とばかりに攻撃をしてきたのはイシュメルだった。


 煉獄乱舞(パーガトリーダンス)


「ハルト、この魔法は私の力だけで弾き返します。あなたは私の後ろに控えていてください」


 クロエの魔法よりも明らかに高出力の火炎魔法がヴイーヴルの巨体を包み込むように飛んでくる。その魔法は息をするのが厳しいレベルの熱波となり押し寄せてきた。


「うわっ、熱っ! ヴイーヴル大丈夫なの!?」


 ヴイーヴルの体にまとわりつくような激しい炎が、その激しさを増していく。


「これぐらいなら問題ありません」


 そう言うと、ヴイーヴルは尻尾を大きく振り払うようにしてあっさりと魔法を弾いてみせた。どうやら本当に問題無いようだ。自動回復も作用しているのだろう。火傷のような傷痕もあっという間に治っていく。


「流石はヴイーヴルといったところでしょうか。どうやら口だけではないようですね。そこの小さなドラゴンとは格が違いますね」


 少し考えるような素振りを見せるとイシュメルはジャミルに小声で何やら指示をしている。何か策でもあるのだろうか。


 こちらもアリエスからベリちゃんの無事を知らせる合図をもらえた。イシュメルと云えども流石に急なタイミングだったのだろう。急所は外れていたようだ。本当によかった……。


 ローランドさんもシーデーモンの数を減らしていっている。気は抜けないがこのままじっくりいけばいい。シーデーモンの数を減らすまで、こちらはとにかく時間稼ぎだ。


「ならば、次は広範囲魔法を撃ってみたらどうですか?」


「そうですね。ではお手並み拝見いたしましょう」


 深紅の爆裂(クリムゾンフレア)


 激しく炸裂しながらその範囲を広げるようにして激しい深紅の爆裂が近づいてくる。激しい音で耳が聞こえなくなり、その凄まじい光の連続で目を開けていられない。


「ハルト!」

「りょ、了解っ」


 防御上昇(プロテクション)


 僕は目の前にいるヴイーヴルにすかさず防御魔法を掛けた。これがいったい何秒持つのか。魔力回復薬のほとんどはアリエスに預けているので、なるべく長い時間もってもらいたいところだ。しかしながら先程とは比べ物にならない魔法が近づいてきているのを体が感じている。轟音と共に広範囲魔法はヴイーヴルの手前に落ちると目隠しをするように砂埃が舞いながら勢いそのままにぶつかってきた!


「ん? コントロールミス?」


 勢いが多少削がれていた分なのか、ヴイーヴルの体はまだ光り輝いている。


「い、いえ違います。この魔法は囮です!」


 少し目が慣れてきたときには、イシュメルとジャミルが海側にある洞窟へと続く部屋の入り口を走り去ろうとしているところだった。後ろを振り向くとイシュメルの魔法で2段階目、3段階目に強化されたシーデーモンがローランドさん達に詰め寄ろうとしている。どう見ても防戦一方になるイメージしか湧かない。


「嘘だろ……」


 固まるように防御態勢をとっていると、中から元気に飛び出すベリちゃんが魔法を放ちながら地上側の出口へと飛んでいく。魔法の照射線状にいたシーデーモンが次々と消滅していく。


 そしてベリちゃんは、一瞬僕の方を振り返ると大きく鳴いて見せた。


「キュィー!!」


 その鳴き声を聞いた瞬間、僕はベリちゃんとは逆側の海側の入口へ向かって走り出していた。


 ベリちゃんの意図していることが僕の考えと同じかわからない。


 でも僕には聞こえたんだ。「ママが危ないっ」って。「一緒にママを守ろう!」って。


 僕のせいで攻撃を受けてしまったにも拘わらず、そんな素振りを一切見せずに行動する。本当に優しいドラゴンに育っている。


 おそらくベリちゃんの位置からなら外を回った方が近いと判断したのだろう。間に合う間に合わないとかの話ではない。大切な人のピンチが近づいているのなら、いち早く駆け付けるのが男ってものだ。そういうことだよね、ベリちゃん。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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