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第七十五話 マップ機能

 2回目のドラゴンライドはヴイーヴルも多少慣れてきたのか離着陸で人が吹っ飛ばされるようなことはなかった。というか、僕たちも慣れた部分もあり、手の握力低下と足の筋肉プルプル疲労で何とか乗り切ることが出来たともいう。もう乗らない。きっと全員の意見は一致しているはずだ。


「大幅に時間短縮なのは認めるわ。夕方にはカイラルに到着してるんですものね。でも私は馬車でいいわ」


「空は自由でとても良いではありませんか。道を塞ぐものは何もない。好きな方向へ自由なスピードで向かえるのです」


「わ、私も緊急時以外は、ご遠慮願いたいな」


「あら、残念ですね。また乗ってくれそうなのは……ローランドぐらいですか?」


「はっ、私はいつでもお供いたします」


 ローランドさんはステータス的にも疲れとかあまりないのだろう。あと、彼はドラゴン愛が強いからね。ちょっと参考にはならない。


「とりあえず今日は作戦の話し合いをしてゆっくり体を休めるんだよね?」


「ハルトの体力が持たなそうでしたからね」


「レベリングの後にドラゴンライドがあるのを忘れていたよ。危なかったんだからね!」


 僕達は借りている家に戻って、買ってきた食料を大皿に盛りつけている。激しいレベリングとドラゴンライドでとても夕食を作る気力は残っていなかったのだ。


「そうですね。プロテクションの確認も出来ましたし、美味しいボア肉を頂きながら気になっているハルトの話を聞きましょう」


 フォレストエイプ狩りを終えた後に、休憩を挟んで防御上昇(プロテクション)を使った連携を確認したのだが、体の大きいヴイーヴルへの魔法でもMP消費は変わらずに使用出来たのは嬉しい誤算だった。


 防御的には僕の魔法が途切れた瞬間はヴイーヴルの体に負担がかかるが、すぐに次の魔法を撃って防御魔法再開。再防御中にヴイーヴルの自動回復で体力は元に戻る。練習ではクロエの火属性魔法で行ったが、これが広範囲魔法のパワーであってもヴイーヴル的には問題ないとのこと。流石、防御特化タイプのドラゴンだ。


「そうよ、もったいぶらずに『冒険の書』の新機能について早く語りさいよ」


 アリエスが我慢できなそうに先を促す。実はレベルが15に上がったことで『冒険の書』に新しい機能が追加されていたのだ。どうやら『冒険の書』も一緒に成長しているらしい。


「みんなには見えないからちょっと説明しづらいんだけど、1つ目はね『マップ機能』だよ」


「マップ? ハルト、それはどういう機能なのだ?」


「これはね、僕が行ったことのある場所が自動的に地図化されて見れるようになるんだ。これを見ると、自分が今どこを歩いているのか、目的地までの距離や地形等がわかるんだ」


「それは便利な機能なのだな。……迷子にならなくて済むのか?」


「微妙ね。とても微妙よハルト! つまらないわ! 私のドキドキを返してちょうだい!」


 どうやらお気に召さなかったようだ。マップ機能ってとても便利なのにな。新しく訪れる場所であっても方角や近隣のマップを見ればある程度位置が判断できる。旅に欠かせないアイテムになるだろう。


「ハルト、そのマップ機能には現在どこまでの情報が書かれているのですか?」


「マウオラ大森林、リンカスター、ハープナ、カイラルといった主要な場所の周辺と馬車で移動した街道沿い、それからヴイーヴルに乗って行ったハープナからマウオラ大森林、そしてカイラルまでのマッピングは全て出来ているよ。あっ、カイラルの港周辺の海もちゃんと地図になっているね」


「ちょっと待って! 馬車は許すとしてもヴイーヴルの背に乗ってるだけで地図が出来るのはズルくない?」


「そんなこと僕に言われても困るんだけど……。まぁ、どちらかと言えばラッキーなんだし、いいんじゃないかな。あとね、どうやら自分の今いる場所から目的地までのおおよその距離、時間を算出してくれるみたいなんだ。移動手段として、徒歩、馬車、ドラゴンの3つが選択出来るみたい……」


「ヴイーヴル、いつの間にかハルトの移動手段の1つにされているわよ」


「とても興味深いですね。つまりその『冒険の書』は私の飛行平均スピードを把握しているということですね。これは思った以上に優秀ですね」


「ハルト一応聞くのだが、ここからリンカスターまでの徒歩、馬車、ドラゴンそれぞれの移動時間はどのくらいなのだ?」


「徒歩の場合は約1日だけど野宿を入れて1日半だね。馬車なら約6時間半、ドラゴンなら約30分ってなってるよ」


「使い方によっては、意外に便利なのかもしれないな」


「やはりドラゴン、想像以上に早いわね。この時間を考えると……いや、止めておきましょう」


「ハルト、もう1つの方の新機能についても教えてもらえますか?」


 そう、今回追加された新機能は2つあったのだ。この機能に関しては今までの経験値取得状況が変わることにもなるので、相談が必要になるだろう。僕としては、こちらの方がゲーム的に慣れ親しんでいるというか、妥当だと思うので納得できる。さて、みんなの意見はどうなのだろうか。

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