第七十四話 フォレストエイプ
ある種の恐慌状態に陥っているのだろう。けたたましい叫び声と共にフォレストエイプはやって来た。上空ではヴイーヴルが追い回しているのが見える。おそらく更に数は増えていくだろう。
「アリエス、奴らこちらを見ていない。チャンスだ! 一気に落としていくぞ!」
「わ、わかったわ。これなら、なんとかなりそうね」
木の上で上空を気にしているフォレストエイプは下からの魔法攻撃であっさりと落とされていく。上空のドラゴン、下からの容赦ない魔法攻撃。なんとえげつない。
「ハルト君、どんどんいくよ」
ローランドさんは、落ちてきたフォレストエイプを殺さない程度に攻撃を加えて、大剣でさばいてひとまとめにしていく。サーカスか!? 僕は今、もの凄い神業を目の当たりにしている。何この豪華なレベリング! 最後に待ち構える僕は魔法を撃つだけだよ。よ、よし、やってやろうじゃないか!
火炎竜巻!
10体近くを討伐したことで、いきなりレベルアップした。これは予想通りだ。前回もすぐにレベルが上がったからね。新しい魔法を覚えた感覚もある。後で確認するとして、どんどんいこう。ローランドさんが作ったフォレストエイプの山がいつの間にか新たに二つも出来上がっている。
火炎竜巻×2
なんだかこのパーティメンバーの全力の戦いを初めて見たかもしれない。ローランドさんが近くの木を大剣で切り倒し、ちょっとした広場を作っている。その姿は重機といっても過言ではあるまい。一人で五役分ぐらいの働きをしているのではないだろうか。
クロエとアリエスも流石の魔法攻撃を披露している。少し余裕が出てきたのか、フォレストエイプの両足を的確に狙って落としている。落とされたフォレストエイプは動けないため、容易くローランドさんが山にしていく。
火炎竜巻×5
広場が燃え盛る死体の山だらけになるや、ローランドさんが、すかさず木々を開拓して広げていく。それを見ながら賢者組も気を利かせて開拓した方へフォレストエイプを落としていく。僕は魔力回復薬をグビッと飲みながら、ひたすら魔法を撃っていくのみ。よし、またレベルが上がった。これでMPが全回復する。
火炎竜巻×5
「ハルト君、大丈夫ですか?」
「はいっ! まだまだいけます!」
「了解です。では、もう少しペースを上げていきますね」
ちょっ、えっ? 今まで本気じゃなかったの?
暴風剣
ローランドさんの森林伐採に付与魔法が加わったことで後方が全て拓けた土地に変わってしまった。更に大穴を開けて燃えた死骸を放りこんでいく。どうやら死骸置場を確保したらしい。これなら燃え広がることもないね!
「気を抜くな! 新しいグループも来てる! 更に増えるぞ」
クロエの声に慌てて振り返ると、見える範囲全てフォレストエイプで溢れていた。
「う、嘘でしょ……」
新しく誘導されてきた2グループの集団が左右からぶつかり合って、とんでもない状況になっていたようだ。仲間同士で勝手にぶつかって落ちてくるのもいれば、喧嘩を始める個体も少なくない。
おそらく、上空ではヴイーヴルとベリちゃんによる挟み撃ちが見事に成功したのだろう。何も同時に持ってこなくてもいいでしょうに。
「ハルト君、私も多少は数を減らしながら出来る限りこのレベリングを継続させる。退路を確保しながら魔法攻撃を」
「は、はいっ! わかりました」
それから先のことはあまり覚えていない。
気がついたら魔力回復薬も全て使い尽くして、森の中で空を見上げてぶっ倒れていた。一応意識はあるし、みんなの声も聞こえているんだけど、体が重く起き上がる気力がない。
あれだけいたフォレストエイプはその殆どが討伐されていた。僕が全て倒せていたら良かったのだろうけど、流石にあの乱戦の中では難しく、最後の方はみんなの協力のもとなんとかフォレストエイプを討伐していった。
「ハルト、レベルはいくつ上がったのだ? 防御魔法は覚えたのか?」
「うん、レベルは15になってる。魔法も防御魔法の他に氷刀と癒しの風だよ。いぇいっ!」
「おぉ、遂に回復魔法を覚えたのだな。よかったなハルト。防御魔法も覚えたのだから、最低限のノルマはクリアしたといったところか」
「MPが増えれば、それだけ防御魔法もプリフィーソウルも撃てるのだから上々よ。それにしても、これ私達でもやらないようなレベリングだったわよ」
「ですよねー」
ハルト(16)レベル15
☆新しい魔法を3つ覚えました
職業:魔法使い
HP:103/160
MP:36/140
筋力:75
耐久:70
早さ:70
魔力:150
運:200
魔法:魂浄化、火球、火炎竜巻、毒消治癒、深眠、☆氷刃、☆防御上昇、☆癒しの風
装備:魔法使いのローブ+5、木の杖(魔法攻撃)+20
次のレベルアップまで経験値あと31800
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