第六十八話 二度目の死
セーブデータより何番をロードしますか?
セーブ1
マウオラ大森林 竜の巣
ハルト(16)レベル12
セーブ2
ハープナ 神殿1
ハルト(16)レベル12
セーブ3
ハープナ 神殿2
ハルト(16)レベル12
どういうことだ!? 何でローランドさんが! 何故っ! 頭の中がぐちゃくちゃに混乱してしまっている。
一体何があったんだ。あれは本当にローランドさんなのか? 何度、思い返してみても、話し方も仕草も疑いようがないぐらいにローランドさんだった……。
セーブデータより何番をロードしますか?
うるさいなっ!
セーブデータより何番をロードしますか?
暗闇の中、繰り返し頭に響いてくる声に仕方なく回答した。
「……3番で」
セーブデータ、ハープナ 神殿2をロードします。……………ロード中……………ロード完了しました。
目を開けると前回と同じように、まるで時間が巻き戻ったかのように僕は竜の間に立っていた。首に手をあてるも勿論、傷一つ付いていない。
でも、間違いなく僕はローランドさんに殺された……。
「……そうですね、心を読んでいるというよりも、聞こえてくるといった方が正しいでしょうか。きっと感情的なもの程、伝わりやすいのではないかと思いますよ」
「あと、繰り返すようですが、成長はしましたがベリルはまだ幼生体です。精神の振り幅はとても大きく、ちょっとしたことで悪い方へ変貌を遂げてしまうでしょう。引き続き、悪意からは遠ざけるようにして成長させてください」
ヴイーヴルの声が聞こえてくるが、頭に何も入ってこない。いや、しっかりしなきゃならない。この事を説明できるのは僕だけなんだ。今この場にはローランドさんはいない。事情を説明するなら今しかないだろう。
「あ、あの! みんなに話があります。今ここにいる僕は少し先の未来からロードされて戻ってきました」
「ロードだと!? ハルト! つまり、ベリちゃんの身に何かあったということなのか?」
「そうだね、何かがあった。何が起こっていたのかは僕にもわからないんだけど、僕は強制的にロードされて戻ってきたんだ」
「どういうことなのだ、強制的にだと?」
「えっとね、後で説明するけど僕はローランドさんに殺されたんだ」
「なっ!?」
「どういうことよ!」
僕は自分の頭の中を整理するように、みんなに事情を説明することにした。
「せ、先代の賢者だと!? な、何故! イシュメル様が生きている訳がない。『火の賢者』は確実に私が引き継いでいる」
「落ち着きなさいクロエ。それよりもローランドよ。何かあったとしても、何故ハルトを最初に狙ったのかしら。彼が裏切ったとしたならば、どう考えても私かクロエを先に潰すべきよね」
「そうですね。ローランドにしては、ちょっと考えづらい行動ですが、そこに理由があるのかもしれません。ハルト、ローランドの雰囲気はどのように感じましたか? どこかいつもと違うような所はなかったでしょうか」
「うーん、話し方もいつも通りに感じました。舟に乗ると真っ直ぐ僕に近づいて……」
「そうですか……。その時のローランドにとってハルトが一番の強敵だったと仮定したら理解できなくもありません」
「それって……」
「ひょっとしたらですが、シーデーモンには人を操る能力があるのかもしれませんね」
「人を操る能力!?」
「クロエが賢者候補から賢者になっていることからも、先代の賢者イシュメルは間違いなく亡くなられているのでしょう。シーデーモンが亡くなった者を操れると考えると辻褄が合います」
「イシュメル様が操られている……」
「また、ローランドの行動を鑑みると、思考から能力までかなりのレベルで操れているということも考えられます」
もしもヴイーヴルの言っていることが本当なら、ジャミルも先代の賢者イシュメルさんも操られている可能性がある。ローランドさんも操られたと考えると……。
「おそらく、魂浄化でしょう。その魔法は邪なるものに効果があるのでしたよね?」
「はい、そうです。つまり、あの時のローランドさんは既に操られていたかもしれないのですね。そして、魂浄化が操られている者にも有効だということになるのか……」
そう考えると少しだけ気が楽になった。信頼している仲間に裏切られるというのは精神的にもキツイ。
「あくまでも可能性の話ですが。実際に今、神殿にいるローランドからは邪悪な気配は全く感じられません。ローランドにもこのことを話した方がいいと思いますがハルト、構いませんか?」
「は、はい、勿論です」
「アリエス、ローランドをここへ呼ぶように伝えてもらえるかしら」
「わかったわ」
アリエスは竜の間を出ると、近くにいる神官さんへ指示をだしたのだろう。話をすると直ぐに戻ってきた。
「ハルト、その場にはローランド殿以外に先代も、イシュメル様も来ていたのか?」
「何というか、首をはね飛ばされて即死だったみたいなんだ。その後どうなったのかは全くわからないんだよ」
「そ、そうか。嫌なことを思い出させてしまい申し訳ないな」
「ううん。もう大丈夫……だと思う」
「失礼します、ローランドただいま参りました」
「入りなさい」
扉からはさっきまでと何も変わらない様子のローランドさんが、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。
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