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第六十六話 洞窟

 今日は朝からは、シーデーモンとマーマンクエストを進めていく。ギルドでマルローさんに挨拶をしてからみんなで港へと向かって歩いている。


「今日は良い天気のようだ。風もないから舟の上でも楽なのではないか」


「そうだね。まだあまり長いこと舟に乗っていないけど、小型の舟 小舟?だから揺れは結構ありそうだもんね」


「ハルト、私が船酔いしたらすぐに毒消治癒(デキトシーメディスン)をお願いするわ」


「まぁ、それは構わないけど、アリエスは船酔いするタイプなの?」


「そんなに乗ったことがないからわからないのよね。ほら、賢者ってあまりその地を離れられないじゃない?」


 アリエスが言うと全然説得力がないのは何でだろう。他の賢者にまとめて怒られればいいのにな。きっとアリエスは恵まれている方の賢者に入るはずだからね。


「それで、今日はどの辺りから探す?」


 今回のクエストの目標はシーデーモンの棲みかを押さえて、可能な限り叩くことにある。出来れば殲滅させたい。


「一番離れた所から順に確認してみるか?」


 クロエがギルドから借りてきた、付近の地形とあやしいポイントをチェックした海図のようなものを見ながら考えている。


「うーん。そうしたら僕に案があるんだけど聞いてもらえるかな?」


「誰も良い案を持ってなさそうだしな。みなに話してみたらどうだ?」


「ほら、昨日のベリちゃんだけどさ。鼻をスンスンさせて魔物の気配を感じてたような気がしてさ」


「確かに、まるで狙いすましたかのようにホーンラビットの巣穴を破壊していたな」


 そう、港でシーデーモンを仕留めた時もそうだった。賢者や上級職のローランドさんでも気が付かなかった敵をベリちゃんは見つけてみせたのだ。魔物の気配を感じる力はこのパーティで一番に違いない。


「ということで、シーデーモン探しをベリちゃんにお願いしてみようと思うんだ。どうかな? ベリちゃん」


「キュィ」


 任せろと言わんばかりの澄んだ瞳をしている。いけるのだろうか。いや、いけそうな気がする。


 別にここが怪しいとかの候補があるわけでもないのだ。初日だし、ダメ元でベリちゃんにお願いするのはありだろう。


「いいのではないでしょうか。私は賛成です」


「そうね。特に反対する理由もないわ」


「よしっ! ベリちゃん、この間のシーデーモンがいる方に僕達を案内してくれるかな?」


「キューィ」


 可愛い返事だ。見つからなくても許してあげよう。いや、なんなら褒めてしまうかもしれない。


 ベリちゃんは、服をクロエに預けると空を飛んだ。舟は港を出発して沖に出たところだ。どうやらベリちゃんは自ら飛んで案内をしてくれるようだ。鼻をスンスンさせているので何かしらの匂いを感じて誘導してくれているようではある。


「ベリちゃんが敵を見つけてくれるなら冒険者稼業としてはかなり恵まれるんじゃない?」


「そうですね。ベリル様の貸出し業なんて商売も成り立ちそうですね」


「クロエとハルトがそんなことするとは思えないけど、言葉を理解するようになったら狙った魔物だけを討伐出来そうよね」


「そういえば、アリエス様。ハープナで神官に細かく指示を出しておりましたが、あれは何を指示されていたのですか?」


「あらっ、よく見てたわね。もちろん麦の買い占めと畑の確保よ」


 いつの間にそのような指示をしていたのだろうか。全く油断も隙もない賢者だ。まぁ、仲間でいる間は本当に助かるんだけどさ。実際、麦はいくらでも欲しくなるはずだからね。


「流石でございます。しかし、買い占めはやりすぎではないでしょうか?」


「いくら私でも市場に影響を与える程の買い占めはしないわよ」


「アリエス様なら、鬼の買い占めをされるものと思っておりましたが、ローランド安心致しました」


「ふふっ、馬鹿ね。私も来年以降の農家への支援と、貧困層に向けた大規模麦畑の生産体制を築いてハープナの経済を発展させるつもりよ。リンカスターの経済成長にハープナもついていくわ。神官には農地の確保に走らせているのよ」


「つまり?」


「大事なのは最終的な利益なの。目先のゴールドを追うのではなく2年後、3年後を見て行動なさい」


「ケオーラ商会を使えばもっと楽に麦を手に入れられそうですが……」


「少しは考えなさい。麦の確保に於いては商会は敵よ。敵に情報を与えてどうするのよ」


 本当にこの賢者は政治に興味がないのだろうか。アリエス個人ではなく、神殿にお金が入る仕組みのようなのでひとまず安堵しているが、この世界の人間としては思い切りがよすぎる。身銭を切っている訳ではないから出来るのかもしれないけど……。


「キュィ! キュィッ」


 しばらくパタパタとのんびり飛んでいたベリちゃんだったが、どうやら目標を発見したようで、一人先に進んでいく。舟の速度遅いんだから置いてかないでよね。


 さて、当たりかハズレか。ベリちゃんが飛んでいく先に見えたのは、海岸沿いにそびえ立つ断崖絶壁に大きく空いた洞窟のようだった。


 小型の舟のサイズでは問題なく、そのまま中へ入っていけそうだ。こういう洞窟って、何かが潜んでいそうな雰囲気プンプンだよね。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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[一言] 着地した所に藻とか付いていて汚れてテンションだだ下がりしたりして(笑)
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