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第六十五話 氷刃

 カイラルに着いた僕達はギルドにいるマルローさんにご挨拶をして、クエストの確認をさせてもらった。予想通りシーデーモンクエストが出されてはいたが、受注状況は芳しくないようでそのまま残されている。そして、同じエリアでの討伐になるマーマンクエストも同様だ。


「みなさんの帰りをお待ちしておりました。ある程度シーデーモンの脅威が除かれないことにはマーマンクエストの受注にも影響が出ておりまして……」


 あれからシーデーモンは現れていないようだけど、また大量に来られても困るので調査はしておきたいところだ。漁師のブルーノさん達はもちろん、ロカ達も港で気軽に昼寝も出来ないだろう。


「明日からはじっくりクエストに集中しますのでご安心ください。シーデーモンの棲みかも探ってみます」


「ありがとうございます。私に出来ることがありましたら何でも言ってください」


 一瞬、アリエスの目がキラーンと光ったが、引き摺るようにギルドを後にした。何事も適度に持ちつ持たれつが大切なのである。しばらくはカイラルに滞在するのだから、マルローさんに頼ることはいくらでも出てくるだろう。


「ちょっとクエストの金額を上げようとしただけなのに!」


「カイラルギルドは人が雇えないくらい厳しい運営をしているんだから違うことで頼ろうよ」


「む、確かにハルトの言うことにも一理あるわね」


 ギルドを出た後は、借家の鍵を預けていたケオーラ商会に顔を出した。ここにはお金を持っていて且つ、人の良いベネットがいるのだ。


「ベネット、家の中はちゃんと掃除してくれたのかしら? 埃があったらハルトが喉を痛めていろいろと気が変わりかねないわよ」


 どんな小姑なのだアリエスよ。僕は別に、ハウスダストアレルギーでもなければ、鼻炎持ちでもない。


「もちろん、バッチリです! 食材と水の運びこみも完了しております。何か足りないものがありましたらすぐにお持ちしましょう」


「ベネット、すまないな」


「何を言ってるのクロエ。僕はハルトさんのことは勿論だけど、クロエの力になれていることも嬉しいんだ。だ、だから、謝らないで頼りにしてほしいな」


「そうか。それなら言い方を変えよう。ありがとうベネット」


「うん。どういたしましてだよ」


 今日は移動で疲れもあったので各自、自由行動で夕食までに戻ってくることとなった。


「今日は私とローランドでご飯を作るから気にせず討伐に行ってきなさいよ。顔が早く行きたそうにしてるわよ」


「ありがとうアリエス。新しい魔法を試してみたいからね。ベリちゃんも一緒に行く?」


「キュィ、キュィ!」


「では、3人で行こう。ハルト、草原の方でいいか?」


「うん、そうしようか。慣らし程度でいいからね」


 街を出て草原に向かうと、夕方になっていることもあり、草原が紅く色づいて見える。この世界は日が暮れたら何も見えなくなるので危険が増す。どうやらあまり長く時間を掛けられないようだ。


 とはいえ、魔法の試し撃ちの意味合いが強いので魔物は見つけられればラッキーぐらいの気持ちでいる。


「ハルト、前方右斜めに気配だ」


 どうやら、運良くホーンラビットと遭遇したようだ。じっくりやらせてもらおう。


 深眠(ディープスリーパー)


 草むらから顔を出したホーンラビットを瞬時に眠らせると、倒れたホーンラビットに向けて次の魔法を放つ。


 氷刃(ブレードアイス)


 動かない獲物に対しては、かなりの確率で狙った場所に当たるようになってきている。僕が放った氷の刃は左右から1本ずつ回転しながらホーンラビットの首を交差するようにして刈りとった。


「お見事!」


「キュィ?」


「ん? どうしたのベリちゃん。新しい魔法が珍しかったのかな」


「自分の出番がないのかと言ってるのではないか?」


 確かに若干、頬っぺたを膨らませているように見えなくもない。少し表情がわかりやすくなってきたかな。


「ごめんよ。次はベリちゃんの番ね。ついでにこの魔法もかけてあげよう」


 防御上昇(プロテクション)×2


「おぉー、これがプロテクションなのだな」


 クロエとベリちゃんの身体を囲うようにして光り輝いている。少し暗くなった草原を照らすように……。これは何というか目立つな。これでは攻撃してくれと言っているようなものだ。防御が上昇しているとはいえ、先制攻撃を受けるリスクがかなり高そうである……。


「この魔法はちょっと恥ずかしいな」

「キューィ」


 多分だけど、ベリちゃんは楽しそうに見える。自分の身体が光っているのが楽しいのかもしれない。やはり、表情がわかりやすくなってきたようである。


「しかし、まぁ、あれだ。洞窟探索ではかなり役に立つのではないか」


「目立つし、敵に見つかりやすいけどね」


「どうせ松明(たいまつ)で目立つのだ。手が塞がらない分いいだろう」


「キューィ」


「ベリちゃんにだけ魔法をかければいいのか?」


「キュィ!」


 どうやら、自らが松明(たいまつ)の代わりとなってくれるらしい。そんなに身体が光るのが楽しいのだろうか。


 夕暮れの中、服をクロエに預けて翼を広げると、ベリちゃんは少し高く飛翔した。光っていることもあってかなり目立っている。くるりと1回転すると鼻をスンスンとさせる。そして、おもむろに口を大きく開くと大きめの火の玉を吐き出した。


「えっ!? ベリちゃん?」


 爆発とともに何かしらを討伐したことで多くの光がベリちゃんに向けて飛んできている。これは……。


「ホーンラビットの巣をやったようだな……」


 なかなかにワイルド且つ頭脳的なドラゴンに育ちそうな予感がする。もうちょっとしたら、素材回収についてじっくり話し合いをするとして、今は全力で褒めてあげよう。

続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
新作投稿開始しました。こちらもよろしくお願いします。
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[一言] 潰すと褒められるので、問答無用でウサギ穴を潰すベリちゃん(笑)
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