第六十四話 プロテクション
「ローランドさん、実は今のでレベルアップしました。あと魔法も2つ覚えたようです」
「おぉー! 早速、新魔法を2つもですか。それは素晴らしいですね。戻ってみなさんにも魔法を紹介しては如何でしょうか。ちなみにですが、覚えたのはどのような魔法ですか?」
「えっとですね、防御上昇という魔法と氷刃という魔法です。聞いたことありますか?」
「ふむふむ、氷刃はメジャーな魔法ですね。氷の刃で敵を切り裂く魔法です。それからプロテクションという魔法ですがこれは初耳です。どのようなミラクル魔法なのか気になるところですね!」
どうやら僕の魔法はミラクルで面白い種類に分類されるようだ。
防御上昇とか役割としては、かなり良さげに思える。使い勝手が良い魔法ならとても頼もしい。さて、魔法図鑑を開いてみよう。
防御上昇 使用MP3
味方一人を薄い魔力の膜で覆うことで守備力を一定時間上昇させることができる。効果が無くなるのは魔力の膜が消えていくので見た目にも分かりやすい。おおよそ5分程度だが、攻撃を受けることでもその時間は短縮されていく。
氷刃 使用MP4
敵単体に対して氷でできた刃を飛ばし攻撃する魔法。殺傷能力も高く、流血による体力低下も狙える。火魔法と組み合わせることで水を作り出すことが出来るため、旅のお伴として重宝される魔法でもある。
どうやら何とかして、旅のお伴というワードを定着させたい強烈な意思を感じさせるコメントだ。
どちらもMP消費がそこまで高い魔法ではないようなので、防御上昇も氷刃も使いどころが多そうに思える。
「そうですね。とりあえず、戻ってクロエやアリエスにも新しい魔法を紹介しましょうか」
馬車の場所まで戻ると既に馬の世話が終わっていたクロエが僕達の姿に気づいた。
「手ぶらということは、辺りに魔物はいなかったのか?」
「フォレストウルフがいたんだけど僕が焼き尽くしてしまったから素材はないよ」
「なるほど、相変わらず素材に優しくない火属性が憎いな」
「ふふふっ、でもねクロエ、僕は新しい魔法を覚えたんだよ。もう火属性ばかりに頼らなくてもいいんだ」
「おぉ……ということは、レベルが上がったのだな。おめでとうハルト」
「うん、ありがとうクロエ」
片手を上げるクロエに軽くハイタッチをした。
「とりあえず、2つの新しい魔法を覚えたからみんなに見てもらおうと思ってね」
「2つか、それは楽しみだな。きっとアリエスも興味津々だろう」
アリエスは以前から新しい魔法を覚えたらすぐ教えなさいと言っていたので、知らない魔法についてはきっと楽しみにしてくれるはずだ。
「1つは氷刃という魔法なんだ。クロエも知ってる魔法でしょ?」
「そうだな。よく知っている魔法だ。これで少しは素材をダメにしなくてもよくなるのだな……」
何とも感慨深いクロエらしい感想だ。火属性でも、素材をダメにしない魔法とかあったらいいのだけど、現状では爆発系ばかりでないらしい。
賢者の場合、既に上級職のようなものだからレベルが30を超えたとしても賢者のままなのだという。土属性のアリエスは土や石に特化するし、火属性のクロエは火炎や爆発に特化して成長していくのだそうだ。
「アリエス、レベルが上がって新しい魔法を覚えたんだ。みんなにも紹介しようと思ってね」
「あら、それは楽しみね。それなら、お昼をいただきながら観賞させてもらおうかしら。丁度ご飯の用意も整っているわよ」
みんなの前で魔法を披露していったのだが、みんな気になるのは防御上昇のようで、氷刃には興味が薄い。
僕的には氷の刃がビュンビュン飛んでいくのが格好よくて、見栄え的にも好きなんだけども、この世界アストラルではよく見る魔法らしい。反応としては別の意味でクロエが喜んでいたぐらいだ。うん、素材大事。
「それで、次は面白魔法ね。ローランド、あなた魔法をかけてもらいなさい」
「かしこまりました。ではハルト君、思い切りやってほしい」
「わかりました。防御上昇!」
魔法の光が杖の先からローランドさんに向かうと身体の外側を囲うようにして目映い光で包み込まれる。これは、なんと何というか……
「随分と派手ね。ローランドが光っているわ」
「あぁ、これは恥ずかしいな……」
女性陣には評判が良くなさそうだが、ローランドさんは満更でも無さそうだ。
「そうですか? 私はピカピカしていて、とても格好よく思いますよ。なんだか強くなった気がします」
石礫!
「ちょっ!? アリエス様! って、痛くない! す、凄いよハルト君」
魔法を受けて少し光り方が弱まっている。この光が消えたら効果が無くなるということなのだろう。
大地の恵み
アリエスの放った回復魔法はローランドさんの体を弾くように飛散していった。
「ハルト、回復魔法も弾いてるじゃない」
「いや、そんなこと僕に言われてもだね」
「い、いや、これはこれで洞窟内の探索や夜間の戦闘では、光って役に立つのではないか?」
クロエ、それはフォローなのか?
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