第六十一話 竜の成長
竜の間には、ヒトの姿をしたヴイーヴルが椅子に腰掛けていた。ふんわりとした雰囲気とベリちゃんを見る優しそうな微笑みを見ると、かなりホッとしている自分がいる。
「今日はヒトの姿なのですね」
「えぇ、こちらの姿の方が話しやすいと思いまして。どうやらベリルも順調に成長しているようですね。少し期日より早いようですが、レベルが上がったのですね」
一回り大きくなったベリちゃんを見ながらも雰囲気や纏う魔力などいろいろと確認しながら判断しているようだ。
「レベルアップに伴い体が成長したのと、あと気になることがあったので参りました」
「気になることですか。それは一体どのような?」
僕は、シーデーモンとの戦闘でベリちゃんが放った、魂浄化と同様のブレスを出したことについてヴイーヴルに説明をした。
「そうなの、ベリル?」
「キューィ」
「そう、とても良くされているのですね」
どう見てもキュィしか聞こえなかったんだけど、何かしらの会話が交わされていたらしい。ベリちゃんと会話が出来るヴイーヴルが相変わらず羨ましく思う。
「ヴイーヴル、今のは何と言っているんですか?」
「ご飯が美味しい。というイメージが伝わってきているのですが……どうやら一般的なご飯とは違うような。えーっと」
「キュィ、キューィ」
「あー、なるほどですね。ホワイトドラゴンの特徴が出ているということですね」
「ホワイトドラゴンの特徴、ですか?」
どうやら、ホワイトドラゴンの幼生体は食事以外にも、ほんの僅かではあるが魔力を吸収しながら成長しているとのこと。
特に身近にいる人の魔力に影響を受けやすいようで、睡眠中などの際に近くにいる人、この場合だと僕やクロエから魔力の影響を受けて成長しているとのこと。つまり、順調にホワイトドラゴンとして成長をしている証拠でもあるそうだ。
「ヴイーヴル、ベリちゃんがハルトと同じ魔法を使ったというのは、つまりその影響なのかしら」
「そのように考えられますね。クロエの質の高い魔力、そしてハルトの持つ不思議な魔法の両面をしっかり受け継いでいるのではないでしょうか」
どうやら僕の魔法は、ヴイーヴルにも不思議魔法と思われていることがわかった。僕としても、もうちょっと普通の魔法を覚えていきたい。あれっ、そういえば、何だか最近全然レベルが上がっていないような気がする。周りが強すぎて僕に仕事が回ってきていないのも要因だろう。いかん、これはいかん。しかしながら、現在の優先順位はベリちゃんの成長を見守ることだ。僕のレベルアップはその次ぐらいに考えておこう。
「とりあえず、ヴイーヴルから見て、今のベリちゃんの成長は問題ないってことかな?」
「はい。問題ないでしょう。ハルトに任せますが、ここで一旦セーブしてもよいのではないでしょうか」
ベリちゃんは、久し振りに会う同族のヴイーヴルの膝の上に乗って寛いでいる。仲が良さそうで何より。
「そうですね。順調なのであれば、ここでセーブしておきます」
セーブ1
マウオラ大森林 竜の巣
ハルト(16)レベル12
セーブ2
ハープナ 神殿1
ハルト(16)レベル12
セーブ3
ハープナ 神殿2
ハルト(16)レベル12
セーブ2は初めてハープナに行った時のもので、セーブ3は今したものだ。改めて見て思うのは、ベリちゃんと出会ってから僕のレベルは変わってないのだということか……。やはり、もう少し自分の成長も考えなきゃならん。
それにしても、最初の頃は極度の人見知りだったベリちゃんだけど、最近ではネコを助けたり、逃げようとしていたシーデーモンを新魔法で倒したりと、とても活発なように思える。体が大きくなったことで自ら歩き回る機会も増えている。意思の疎通に関しても、まるでその者の心を読んでいるような動きをしているような気がしないでもない。
「そうですね、心を読んでいるというよりも、聞こえてくるといった方が正しいでしょうか。きっと感情的なもの程、伝わりやすいのではないかと思いますよ」
ちょ、僕の心の声!? ヴイーヴル、お前もか。
「あと、繰り返すようですが、成長はしましたがベリルはまだ幼生体です。精神の振り幅はとても大きく、ちょっとしたことで悪い方へ変貌を遂げてしまうでしょう。引き続き、悪意からは遠ざけるようにして成長させてください」
「か、かしこまりました」
「それに、もう少ししたらベリルとも会話が出来るようになるはずですよ。焦らずに今まで通りに育ててください」
「おぉ、ベリちゃんとお話が出来るようになるのか。それはとても楽しみだな、ハルト」
「うん、そうだね。喋るのかな? それとも心の声的な感じなのかな。ちょっと気になるね!」
「うむ。とっても楽しみなのだ」
「さて、安心したところでベリちゃんの採寸をしちゃいましょう。終わった頃には、食事の用意も整っているはずよ。ヴイーヴルも同席する?」
「そうですね。せっかくヒトの姿をしておりますし、ご一緒させてください」
ま、待てよ、ヴイーヴルがヒトの姿に成れるのであればベリちゃんもいつかは……? そ、そういえば気にしていなかったんだけどベリちゃんは男の子なのか? それとも女の子なのか?
「あ、あのー、ヴイーヴル。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
実は、今日は私の誕生日だったりします。
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繰り返しますが、今日は私の誕生日だったりします。
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