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第五十五話 マーマン戦2

 海面から顔を出してこちらを伺っていたマーマンは、見たことのない靄のようなものに、一瞬警戒するものの包まれた瞬間に眠らされていった。


 僕が魔法を放った瞬間を見ていなければ、これが魔法だとは気づかないのかもしれない。


「ベリちゃん、あそこで寝ているマーマンを倒してきてくれる?」


「キュィ」


 僕が眠らせることに成功したマーマンは5体。火の玉をしっかり顔面にヒットさせて討伐していくベリちゃん。最早、かなりのレベルまで言葉を理解していると言ってもいい。僕よりも先に文字の読み書きとか覚えそうな勢いである。


「ベリちゃん、左耳は討伐証明で確保するからなるべく焦がさないようにしてくれる?」


「キューィ」


 先程よりも少し大きめな火の玉で、頭ごと吹っ飛ばすベリちゃん。今までは少し手加減をしていたらしい。


「流石はベリル様です」


「い、いや、討伐証明……」


 完全な意志疎通には、もう少し時間が必要なようだ。それにしても、ベリちゃん結構頑張って討伐しているようだけど、次のレベルにはまだ上がっていないように思える。


 やはり、種族によって違いはあるのかもしれない。僕がレベル3になったのは割りとすぐだった気がする。何といってもベリちゃんはドラゴンなのだから特別なのだろう。



「やっぱり、面白魔法ねっ! やるじゃない、ハルト」


「ハルト、魔力は大丈夫なのか? 舟も動かしているのだ、無理はするなよ」 


「あの魔法はMP消費3だから問題ないよ」


「た、たった3なのぉ!?」


「どうだ、ハルトの魔法は凄いだろう」


「えぇ、もっと戦略的にハルトの魔法を使ってもいいのかもしれないわね……」



「今のハルト君とベリル様の攻撃で、マーマンは完全に引きましたね。今のうちに残りの素材を集めましょう」


 結果的に全部で40体以上は討伐しているかもしれない。しかしながらマーマンの数はまだまだ多そうだ。しばらくは定期的な討伐が必要だろう。毎回、こんな感じで出てこられたら確かに漁師さん達も漁どころではない。


「この感じだと、もう今日は出てこないんじゃないかしら?」


「また明日改めて来るとして、今日はいったん戻って草原の方に行ってみてはどうだ」


「そうね、そうしましょう」


「ベリちゃんお疲れ様。疲れてない?」


「キュィ」


 若干の疲れはあるようで、久しぶりにローブの中に入って来た。また僕のお腹に貼り付くようだ。


「戻りましたら、お昼ご飯にしましょう。アリエス様、ベリル様の様子を見てからその後の予定を決めるのは如何でしょう」


「それもそうね。最近、活発にしてたから寝なくても大丈夫なのかと思ってたけど、ヴイーヴルも睡眠は大事だと言ってたものね」


「ご飯の匂いで起きてきそうな気はするよね」


「たまには果物を買ってあげよう。高いが経費で請求できるのだからな」


「クロエ、正気なの? 私達にはケオーラ商会がいるのを忘れてないかしら」


 アリエス、お前こそ正気なのか? と問いたいところだが、この賢者は骨までしゃぶりたい症候群のため至って普通なのだ。


「流石にそこまでは悪いだろう」


「何を言ってるのクロエ。ハルトの提案する輸出を一手に引き受けたら、ケオーラ商会には莫大なお金が入り続けるのよ」


「エールビールなんか儲からないって言っていたのはアリエスではないか」


「儲かる儲からないではないわ。私達はケオーラ商会に儲かる可能性のある話を提案出来る立場にいるのよ」


 この人、ついに私達って言っちゃったよ。


 まぁ、麦の仕入れに関してはアリエスにお願いすることになるから、あながち間違ってはいないんだけどさ。


「アリエス、同じ理屈ならリンカスターにも恩を売れるんじゃない? ここは平等に利用しようではないか」


「確かにそれもそうね。つい便利だからお願いしたくなっちゃうわ。これが商会のやり方なのね」


「一理あるけど、アリエスは商会を利用し過ぎだからね。商会とアリエスの組み合わせはハープナが賄賂浸けになりそうで怖いよ」


「あら、大丈夫よ。私には政治的な権限もないし、表向きはどうあれ、ヴイーヴルと行動を共にするただの巫女だもの。私にお金を渡しても大したことは出来ないわ」


「そうだぞ、ハルト。アリエスが本気を出したら信者を使ってハープナを占領することも可能なはずだ。それをしていないということは単純に政治に興味がないのだろう」


「クロエ、人聞きの悪いことを言わないでもらえるかしら。私はみんなから愛される宝石の巫女なのよ」


「アリエスは普段顔を見せないから、余計に神格化されている気がするからな。信者にその姿が見つかったら大変なのではないか」


「一人や二人に見つかったところで問題ないわ。そのギャップを自分だけが知っている巫女様として自身で消化するはずよ。それに、周りに話をしても誰も信じないでしょうからね」


「まぁ、それはそうかもしれないが、気をつけるのだぞ」


 情報量の少ないアストラルでは、なかなか本当のことや大事なことが伝わるのが遅い。もしくは伝わらないことが多い。アリエスが油断しまくっているのも頷ける。

続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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