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第五十三話 カイラルのクエスト

 次の日は朝から海岸の方へと向かっている。一応、朝にカイラルのギルドを訪れたところ、気になるクエストを発見したのだ。


「船がいっぱいあったから海には魔物がいないのかと思ってたけど、そうでもないんだね」


「港の近くには近寄って来ないようだが、沖にでると、大型の魔物が出るそうだぞ。あとは、海のゴブリンと呼ばれるマーマンだな」


「海のゴブリンね……。ゴブリンにあまりいいイメージが無いんだよね」


「マーマンは陸に上がってくることはないのだが、小型の舟などは海面から何体も現れ、海に引きずりこもうと襲ってくるそうだ。単体では弱い魔物だが、海という場所とグループで襲ってくるところが厄介なのだろう」


「それにしても被害が増えているのにクエストを行う冒険者が少ないとはね」


「マーマンは海の中にいるから遠距離攻撃が必要になるのよ。魔法か弓か攻撃手段が限られてしまうの。同じ倒すなら草原でホーンラビットやフォレストウルフを倒していた方が難易度が低いのよね」


「ハルト君、ついでにいうとカイラルでは人気のクエストがあってね。シルバータグの大体がそちらに流れてしまうんですよ。そして、残ったブロンズタグは安全な陸を選ぶのですよ」


「ローランドさん、人気のクエストってあれのことですね」


 目の前には大型の定期船が出発の準備を進めている。昨日は荷物の積込をしていたようだが、どうやら今日出発のようだ。そして、王都へ向かう人々とは別に、多くの冒険者が乗り込んでいる。 


「定期船の護衛クエストだな」


「大型の魔物が出なくても王都まで無事に到着すればクエストはクリアになるのよ。もしも魔物が現れても大人数で当たれるから危険も少ないわ」


「船酔いが平気なシルバータグには人気のクエストなんですよ」


「なるほど。そういうことですか」


 実は、ボスネコのロカ達にご飯をあげていた漁師の奥様方が、愚痴を溢していたのだ。


 最近、マーマンクエストに参加する冒険者が減っていて漁師の仕掛け網を破られたり、襲ってくる件数も増えているそうだ。個体数がかなり増えていて困っているらしい。


 ギルドでもクエスト達成金を多少アップさせるなどの取り組みはしているようだけど、あまり効果は出ていない。


「更に言うと、討伐アイテムが取得しづらいのも要因らしいわよ」


「あー、海の中じゃ討伐しても魔物が沈んじゃったり、遠くに流れてしまうのか。倒したのにお金貰えないんじゃ、余計にやる人が少なくなるね」


「それはそうであろうな。まぁ、我々はなるべく人の少ない場所で討伐したいし、特段お金にも困っていない。ギルドにも街のみんなにも喜んでもらえるなら、やらない手はないであろう」


「お、お待たせいたしましたっ! アリエス様ご要望の小型舟、こちらにご用意いたしました。魔動力タイプですので賢者様方にはピッタリかと」


「なかなかいい働きね、ベネット。昨日用意してくれたソファーやベッドもなかなかよかったわ。私からもハルトにはそれとなくケオーラ商会のことを推しておくわね」


 ここに悪い賢者がいる。クロエは真似しちゃダメだからね。


「あ、ありがとうございます。ボア肉も大量に仕入れておきますね」


「ベネット、私達は助かっているのだが、その、あまり無理をするなよ」


「大丈夫だよクロエ。これでもケオーラ商会は大きい商会なんだ。まだまだ余裕だよ」


「へぇ、それはいいことを聞いたわ。ハルトが大事にしている馬の面倒と馬車の整備もお願いしようかしら」


「か、かしこまりました!」


 アリエスに余裕を窺わせる発言を聞かせるあたり、逆にお金漬けにして断りづらくさせている可能性も……いや、そんな訳ないか。


 ベネットさんを見る限り、優しそうな根っからのいい人だ。商人として人が良すぎるのも、どうかと思うのだが、僕は嫌いじゃない。ベネットさんのような、真っ直ぐな商人がいてもいいんじゃないかな。



「ハルト、舟に乗り込むぞ。ベリちゃんもおいで」


 クロエに向かってジャンプして飛び込むベリちゃんを見ると何とも感慨深い。すっかり仲良しだ。


 一方で微笑ましそうに、いや、少し寂しそうな顔をしているローランドにも、いつか仲良くなれる時がくることを祈っている。


 まぁ、会話は出来ないけど意志疎通が出来るようにはなってきているので、時間の問題だと思う。


「ハルト、早く動かしなさいよ」


「えっ、僕が動かすの?」


「今日のハルトの役目は舟の操縦と、私達やベリちゃんが倒したマーマンの討伐証明を網で集めることよ。ローランドも手伝うからよろしく頼むわね」


「よくわからないけど、ローランドさんも手伝ってくれるなら安心かな。討伐証明ってどこなの?」


「マーマンの場合、左耳よ。爪も買い取りはしてくれるから可能な限り集めてよ」


「了解。とりあえずは舟の操縦からだね」


 舟の操縦席には、ハンドルと魔力を流すための板のようなものが設置されており、左手でハンドルを握り右手は板の上に置くようだ。


 魔力を流していくとゆっくりと舟が動き始めた。波の影響にもよるが、だいたい半日動かすのにMP50くらい消費するらしい。これ、意外と便利かも。


 港では手を降っているベネットさんが見える。この舟、スピードは全然出ないようで歩いてるのと変わらないぐらいの早さで少しずつ離れていく。


 では、マーマンクエストに取りかかろうか。

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