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第四十九話 カイラルのネコ

 僕達は今、潮風の香る港街カイラルにいる。街といっても小さな漁師町をイメージしてもらった方がいいかもしれない。


 マウオラ大森林とは逆方向、リンカスターとハープナの間に位置する海に面した場所になるのだが、距離はかなり離れており、おおよそ100キロ。リンカスターからは川沿いに下っていくとカイラルにたどり着く。


 港にはいくつかの漁船とは別に大型の定期船が停泊しており、2隻がそれぞれ王都とカイラルの間を10日程かけて行き交っているそうだ。荷物を積み込む慌ただしい船員の姿を横目にしながら僕とクロエとベリちゃんは横になって、うたた寝をしていた。


 ちなみにベリちゃんのことは、その内見つかってしまうだろうとのことから、珍しいホワイトウルフの子供ということにして紹介したところ、早くもみんなのアイドルになりつつある。ブルーのリボンを首に着けて僕達の後を頑張って追い掛けてくる姿はエンジェルだ。そして、疲れたり眠くなるとお腹に貼り付くのは変わらない。



「ハルト……起きてるか?」


「……う、うん」


「あのネコ、またベリちゃんに魚を持ってきてるぞ」


「余程気に入られているみたいだね。ボア肉なら食べたかもしれないけどね。流石にネコにワイルドボア狩りは難しいかな」


 ニャアニャアと鳴きながらベリちゃんにアピールをしているのは港で暮らしている野良猫で、この辺りのボスだという。


 何故こんなことになっているかというと、それはカイラルに到着した日まで遡ることになる。




 あと数キロでカイラルに到着するというタイミングで車輪の外れた馬車が道に立ち往生していた。その屋根の上で昼寝したまま連れてこられてしまったのが、ボスネコのロカとの出会いだった。


 きっと馬車の屋根はポカポカで暖かかったのだろう。気づいた時には知らない場所にいたのだから、きっと泣きそうな顔で助けを求めていたに違いない。



「すみません。車輪が外れてしまいまして、そこのお方、どうかお手伝い頂けませんでしょうか」


「それは大変でしたね。直りそうですか?」


 ローランドさんが手慣れた感じで車輪を確認していくと車輪以外は問題なかったようで、スペアの車輪の取り付けで動くようだった。


「怪しいハルト誘拐犯かと思ったけど、普通の商人のようね」


 護衛と思われる冒険者達も困っていたようで、ローランドの指示に従って車輪の交換を手伝っていた。



「びぃぃ! びぃぃ!」


「ベリちゃん、どうしたの?」


 人が多いにも関わらずローブから出てきたベリちゃんは何かを訴えているように思える。


「ご飯はさっき食べたしな……。ん? ハルト、ベリちゃんが向こうの馬車を見ている。ちょっと行ってみよう」


 車輪交換の邪魔にならないように馬車に近付くとおもむろにベリちゃんがジャンプ一番、屋根に登り、ネコを口に咥えて戻ってきたのだった。


「ベリちゃん意外に力持ちなのだな。自分より大きなネコを捕まえるとは偉いぞ。ネコじゃレベルが上がらないかもしれないがガブっといくか?」


 しばらくの間揺れる屋根の上で踏ん張っていたからなのか力を失ったネコは、怯えながら諦めの表情をしていたに違いない。


 ベリちゃんは喋りかけるクロエにネコを預けると、自分は僕のローブの中に戻っていった。どうやらネコは食べ物という認識ではないらしい。


「このネコは屋根に乗ったままここまで連れてこられてきたのだな。では、カイラルに着いたら離してあげよう」


「何でベリちゃんは、そのネコが助けを求めていることがわかったのかな?」


「竜の嗅覚は鋭いみたいだし、何か感じたんじゃない? それに同じ白い色してるから友達だとでも思ったんじゃないかしら」


 アリエスは自分に興味のないことに関しては割りと適当な節がある。犬派? いやアリエスはドラゴン派か。


「友達ね……。今のところ仲良くするつもりは全く無さそうだけど、せっかくだしカイラルまで連れていってあげようね」


 ベリちゃんは既にまた深い眠りに入ってしまっている。


 一方助けられたネコは絶賛パニック中だ。


 起きたら知らない場所だし、自分より小さい生き物に食べられそうになったり、知らない人間に捕まってしまったのだ。



 シャアー!


「ハルト、せっかく助かったのにまた逃げ出してしまいそうだ。物凄く威嚇をされているのだが、例の魔法を頼めるか」


「そうだね。深眠(ディープスリーパー)






 話はまた港で微睡(まどろ)むリンカスター組に戻るが、カイラルに戻ってからはネコ達が定期的にベリちゃんの元を訪れては魚を中心とした食料を持参して挨拶に訪れる。



「お前が魚を持ってくるから、他のネコも真似して貢物を持ってくるようになっちゃったじゃないか」


 魚には興味がないようでベリちゃんは見向きもしないのだが、ネコ達はどうだと言わんばかりに生魚を持ってくる。


 そしてベリちゃんが食べないのを確認するとムシャムシャと食べ始める。頭からボリボリいくのはちょっと引く。あと、とても魚臭い。食事は離れてしてくれないかな……。


 街ではロカがボスの座を譲ったとか、種族を越えたラブストーリーだとかの話で持ちきりのようでカイラルはとても平和だ。


 とりあえず、今のところは……。


 アリエスとローランドさんは、街に入ったところでハープナから追い掛けてきた怪しい人を発見したらしい。


 カイラルにアジトがあるなら怪しいところは全部押さえておくとのことで、絶賛別行動中なのだ。まぁ、しばらく滞在する訳だしね。せっかくだし、怪しいところは全部潰してもらおう。


 というか、隙のある行動をして街をぶらぶらしてなさい! との指令だったので、日用品やら食料の買い出しをしたりして、やることがなくなったためボーッと海を眺めていたのである。


 本当に怪しい人いるんだろうね?

そろそろ毎日投稿厳しいかも。


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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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