第四十六話 再びリンカスターへ
ハープナの領主様にご挨拶をして、僕達は再びリンカスターへと向かっている。お昼休憩を終え、あと数時間で到着するというところまで来ている。
領主様には親書をお渡しして、アリエスからヴイーヴルの意向を伝えてもらった。内容としては、ベリルが成体になるまでカイラルの街を拠点としてアリエスとローランドと共に冒険者活動をすることを話している。
もちろん、リンカスター同様に僕の魔法や『冒険の書』については伏せさせてもらった。
この後、領主様に報告してリンカスターで準備をしてからカイラルに向かう予定だ。マリエールにもちゃんと伝えておかないとならないしね。
カイラルで冒険者活動かぁ。まぁ、ハープナでアリエスが冒険者やるというのも微妙だと思うし、リンカスターで賢者二人に上級職のパーティというのも風当たりが強そうだ。結果的にそこまで顔が知られていないカイラルの街を拠点にするというのはありなのだと思った。
「ローランド、まだ追跡されてるかしら?」
「さすがに馬車のスピードを隠れながら追い掛けるのは無理でしたね。もう大丈夫でしょう」
「魔物なら討伐してしまえばいいから楽なんだけど、人だとそういう訳にもいかないから困るわ」
「アリエス、我々を追う意味としてはハルトかベリちゃんになるのか」
「まぁ、今回の場合はハルトになるのかしらね。馬車の外装も普段私が乗っているものとは違うしね」
「えっ、僕を追ってどうするの? ベリちゃんならともかく」
「ハルト、ベリちゃんの存在はまだ殆んど知られていないだろう。それよりも異世界からの旅人であるハルトの方が名を知られている。単純に人身売買目的か、若しくは恩を売って異世界の知恵を入手しようとしている者の仕業かもしれんぞ」
「僕、お金になるんだね。う、売らないでよっ」
「売られたくなかったら早く面白い魔法覚えなさい」
どうやら僕の魔法は面白魔法にカテゴリーされているようだ。魂浄化撃ってやろうか。
「ベリル様を撫でさせて頂けるなら私はいつでもハルト君の味方ですよ」
ローランドさんはドラゴンであれば幼生体から成体まで幅広くいける人のようだ。ベリちゃんと二人きりにするにはまだ注意が必要である。
「ローランドさんは御者をしているからベリちゃんと仲良くなれないですもんね。そうだ、今度僕にも馬車の操り方を教えてください」
「もちろんだとも。ベリル様とのふれあい、モグモフタイムのためなら尚更だね」
決して悪い人ではないと思うので仲良くしてほしいが、そこはベリちゃん次第なので何ともいえない。
それにしても人身売買とか勘弁してもらいたい。多少はレベルが上がって力をつけているとは思うけど、こまめにセーブしておいた方がいいかもしれない。
『冒険の書』では今こんな感じにセーブされている。
セーブ1
マウオラ大森林 竜の巣
ハルト(16)レベル12
セーブ2
ハープナ 神殿
ハルト(16)レベル12
セーブ3
リンカスター 草原
ハルト(16)レベル12
セーブ1はベリちゃんが生まれた後で、セーブ2はヴイーヴルに会った後。そして、セーブ3は今このタイミングで行なった。
ベリちゃんが無事成体に成長するまではセーブ1はそのままにしておくつもりだ。もしものことは考えたくないが、何度やり直してもどうしてもダメだった場合は、クロエのベリちゃんに対する気持ちが深く入りきる前に処理することも考えなければなるまい。そうならないように全力を尽くすつもりだ。
「しばらく留守になるね。マリエールさんとか孤児院の子達は寂しがるかな」
「小さな子達はそうかもしれぬな。せめてお腹いっぱい食べられるように、少し多めにお金を渡しておこう」
「それがいいね。褒賞金の前借りが出来ればいいのだけど」
僕の手には、ハープナの領主様からの親書がある。アリエス曰く、多少なり金銭の要求があるはずとのこと。まぁ、アリエスやローランドさんを3か月近く拘束してしまうのだ。ハープナ的には少なからず影響はあるだろう。アリエスはともかく、主にローランドさんによる討伐やその素材の量が減るのだからね。
「褒賞金自体が減らないといいわね。ローランドは高いわよ」
「悔しいけど、安全面を考えると心強すぎる。この3か月はとても大事だからね。いくら請求されているかわからないけどしょうがないよ」
「まぁ、ヴイーヴルの意向でもあるから、そんな無茶なことは言ってこないはずよ。何だかんだハープナとリンカスターは仲がいいから」
「そうだといいんだけど」
馬車はリンカスターの門を通過して馬車を停めた。馬を休ませている間に領主様に説明に伺う予定だ。
「みなさん、私はここで馬の面倒を見ていますので、謁見が終わられましたら声を掛けてください」
「ローランド殿、馬の世話まで申し訳ないな。後で美味しい食事と温かいスープを孤児院で用意しよう」
「お気づかい痛みいります。よろしければ、ベリル殿の面倒も見ておきましょうか?」
僕のローブから顔を出していたベリちゃんはローランドの言葉をわかってなのか知らないが、すっと顔を引っ込めてお腹に貼り付くと何の迷いもなく睡眠態勢に入った。
「す、すまぬな。早く仲良くなるといいな」
「……えぇ」
しばらく毎日投稿頑張ります。
続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。




