第四十五話 成長戦略
「どういうこと? また竜の間に行くの?」
「今の話が本当であれば、ベリちゃんの成長が間違った方向に進んでも、またやり直せるということよね?」
「まぁ、セーブした場所からならやり直せるけど」
「つまり、ベリちゃんが間違った方向に成長しないように調整出来るということじゃない」
「まぁ、そうだね。ある程度方向を変えることは出来るかな」
「ヴイーヴルにこの話をしましょう。何か良いアドバイスがもらえるかもしれないわ。ハルト、他に私に話していないことはある? 全部言うのよ!」
「あーっ! そう言えばハルト、竜の巣で私に隠しごとがあると言っていたな。忘れるところだったぞ。さぁ、吐くのだ」
「秘密の多い男ね。隠しごとが多いなんて男らしくないわよ。早く私にも教えなさい」
賢者二人がぐいぐいくる。
そう言えばまだ話してなかったな。ベリちゃんのことで頭いっぱいだったんだからしょうがないとは思うんだけど……。
「たいした話でもないんだけど、転移する前は僕27歳だったんだ。何故かアストラルに来たら16歳に若返ってたんだよね」
「そ、そうだったのか!?」
「若返ったのはよかったじゃない。ラッキーね」
「あとは、『冒険の書』の他の機能についてかな」
「へぇ、それは気になるわね。セーブとロードが出来る以外にどんな機能があるのかしら?」
「あんまり期待されても困るんだけど、微妙な機能だよ。魔物図鑑と魔法情報、あとは自分のステータスが見ることができて、次のレベルアップまでに必要な経験値がわかるんだ」
「ハルト、その魔物図鑑というのは私達賢者の知識と同じものなのか?」
「自分が倒した魔物の基礎情報までしかわからないんだ。弱点とか倒し方とかも載っていないから賢者の知識の劣化版っぽいね」
「そうか。それで魔法情報というのはどんなものなのだ?」
「いつもクロエに説明しているような内容が書かれているだけだよ」
「あーあの、旅のお伴的なやつか……そ、そうか、本当に微妙なようだな」
「でも今までのことを考えると、それだけの機能とは思えないわね。何かハルトも知らないような裏機能とかがあるかもしれないわ」
「そうなのかっ!」
「いやいや、今のところ裏機能とかは無いと思うよ」
「つまらないわね。これからはレベルアップした時は詳しくチェックしなさいよ」
「わかったって」
「じゃあ、竜の間へ行くわよ。ついてきなさい」
部屋を出ようとするアリエスを押し返すようにして扉が開かれ、白髪の妙齢な女性が部屋に入ってきた。神官とは服装が違う。この人は?
「アリエス、わざわざ来なくても大丈夫ですよ」
「ヴイーヴル! その姿、よかったの?」
アリエスがヴイーヴルと呼んでいるということは、つまりそういうことなのだろう。
「私のこの姿は、神殿内だけの秘密なのですが、ハルトの秘密を聞いてしまったからには私も隠しごとはやめましょう」
「隠しごとですか?」
「私の耳はとてもよく聞こえるのです。ごめんなさいね。最初は聞くつもりはなかったのですが、興味深い内容だっただけに思わず聞き耳を立ててしまいました」
「まさか人の姿に変身出来るとは驚きました」
「ふふふっ、このことは秘密にしてくださいね。……それで隠しごとの件ですが、先ほどアリエスとローランドを残した時に私が二人に話した内容をお伝えしましょう。どうか怒らずに聞いてください」
ヴイーヴルの話には納得できる部分もありながら、なんともやるせない気持ちも半々にあった。
僕とクロエはセーブとロードがあるから軽く考えていた部分もあるのだろう。それを知らない人からしたら最悪の事態を考えて行動するのは至極当たり前のことだ。
問題は、僕とクロエに話さなかった理由ぐらいかな。
「ヴイーヴル殿、私やハルトに黙って裏でそんなことを考えていたとはな。これではあなたのことを信用出来ぬぞ」
「すみません。二人を見ていたらベリルを想う気持ちは伝わってきたのですが、どうも緊張感を感じられなかったのです。今はセーブとロードという機能があるからという理由がわかったので全てをお話ししました」
「クロエ、ヴイーヴルの言ってることは間違ってないと思うよ。それはドラゴンと向き合っていたクロエならわかるはずでしょ」
「そ、それはそうだが……」
「それから一応言っておきますが、セーブとロードが使えるとわかっても、結果としてベリルの成長が悪い方向に進んでしまった場合や、その成長を変えられなかった場合に私は結論を変えるつもりはありません」
「もちろんです。そうならないようにするつもりですし、二人だけでなくアリエスとローランドさんのお力もお借りしますね」
「はい。もとよりそのつもりです。それから、ベリルが成体に成長するまでの間ですが、カイラルの街を拠点にするとよいでしょう。カイラルは海のある港街です」
「私がしたクロエの占い通りね。希望と願いの旅ね」
「ベリルにとっても海は相性が良さそうに思えます。きっといい影響をもたらせてくれるでしょう」
「ちなみにヴイーヴルは一緒に行くことは出来ないの?」
「残念ながら私はこの場所を長く離れられないのです」
「ヴイーヴルはこの神殿から周辺地域の浄化をしているの。だからそう簡単には動けないのよ」
「ニーズヘッグが消滅したことで多少余裕が出てはいるのですが、逆に活発になってしまったエリアもあるため油断できない状況が続いています。落ち着くまでもうしばらく時間がかかるでしょう」
ヴイーヴルの浄化の力でハープナを中心として、リンカスター、カイラルという港街周辺の悪い気を祓っているのだそうだ。
浄化されていても尚、あれだけ凶暴だったニーズヘッグ恐るべしである。
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