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第四十二話 ハープナの街

 昼休憩を挟み馬車はまもなくハープナに到着する。あれから魔物は現れることなく、スムーズな旅路だった。


 やはり、街道沿いの魔物は優先的に討伐管理されているのかもしれない。



「アリエス、ハープナに入る時はお金必要なの?」


「普通は滞在中の費用を払う必要があるけど、あなた達は私の客人として扱うから気にしなくていいわ」


「これが権力か」


「何? ハルトはお金払いたいのかしら? ちなみに私もリンカスターに入るのは無料よ。ベルナール様から許可を頂いているから門番は顔パスなの」


「なるほど、これが賢者の力か」


「私がリンカスターに遊びに来ているのは基本的には秘密なのよ」


「この人、遊びに来てるって言っちゃったよ」


「賢者兼巫女の私には息抜きも必要なの。ハープナでは神殿から出ることはほとんどないし、変に神格化されてる節があるのよね」


「いろいろと制約がつきまとうんだね……」


 割かし自由を満喫していそうなアリエスでさえ、こうなのだから他の賢者も似たり寄ったりなのかもしれない。そんななか、クロエは賢者初の自由を得られるかもしれないのだ。今まで苦労してきた分、なんとか報われてもらいたいと思う。


「アリエス様、まもなく着きますので窓をお閉めください」


「わかったわ。ハルト、そっちのカーテンを閉めて」


「う、うん。何で?」


「ここから神殿までは人目が多いからよ。信者が私の姿を見れるのは基本的に豊穣祭の時だけという決まりなの」


「まさか、人前に出る時は仮面をしたりするのかな?」


「よく知ってるわね。なんでわかったのかしら」


 賢者と仮面はセットとかじゃないだろうね。最近クロエは街の外では仮面を外しているけどさ。


「実は仮面をするように言ったのはヴイーヴルなの。私もクロエと同じく若くして賢者になった口だから息抜きも必要だと領主様を通じてリンカスターと掛け合ってくれたのよね」


「なるほど、だから逆にリンカスターでは素顔でいられるのか。あれっ、でもギルドの人とかアリエスを賢者だと知っている人がいたようだけどそれは大丈夫なの?」


「ハルトの世界がどうかわからないけどアストラルでは旅をするのは基本的に大商人か冒険者ぐらいなの。信者というか街の人が魔物がいる街の外を旅するのは稀よ」


「つまり?」


「隣街といっても、これだけ距離が離れていれば信者がリンカスターに来る可能性は限りなく低いし、問題ないわ。最悪バレても言いくるめる自信もあるわ」


「へぇー、そうですか」


 どう言いくるめるのかはわからないけど、なんとなく聞かない方がいい気がした。



 門の横には馬車専用のレーンがあり、門番は馬車の外観と御者を確認するだけでスルーで通過させる。これを使えるのは領主様と巫女様ぐらいとのこと。


「早速だけど、まずはヴイーヴルに会ってもらうわよ」


 馬車は街の中をゆっくりとしたスピードで奥へと進んでいく。中心にある一際大きな門を抜けるとそのまま神殿に入っていった。


「アリエス様、到着致しました」


「ご苦労様、ローランド。今日はもう休んでいいわよ」


「その、アリエス様。もしよろしければこのまま同席することは可能でしょうか?」


「なぜ?」


「興味がある。ではダメですよね」


「私は構わないけど、クロエとハルトはどうかしら?」


「構わないぞ」

「はい、僕も問題ないです」


「そう。では、ついてきなさい」


 馬車を降りると多くの神官がお出迎えしてくれている。水やら濡れた布などを用意してくれている。ちょうどいい。ベリちゃんも大分獣臭を醸しはじめているので拭いてあげよう。


「ベリちゃん出ておいで」


「びぃぃ? びぃ……」


 ローブから顔を出すものの想像以上の人の多さに泣きそうな顔をして引っ込んでしまった。流石にこの人数は無理があったようだ。


「馬車の中でベリちゃんを拭いてくるね」


 濡らした布を手に再び馬車に入ると何故かクロエとアリエスも入ってくる。


「ちょっ、何で二人も入ってくるの?」


「ハルトだけベリちゃんといちゃつくとかズルいわ」


「そうだハルト。身の回りの世話はお母さん代わりの私の役目でもあるのだ」


「そ、そう。ベリちゃん体拭くから出ておいで」


 たっぷり1分ぐらいの心の葛藤の末、ようやく再び顔を出してきた。


 周りを見渡して馬車の中であることを確認するとようやく安心したようだ。


 安心したからなのかクロエとアリエスに拭かれるがままにされている。そして拭かれているうちに気持ち良くなってしまったのだろう。目を細めて手も足もだらんと伸びている。


 おい、野生はどこにいったベリルよ。


「なんだか二人にはかなり慣れてきたようだね。僕も一安心だよ」


「ご飯もたっぷりあげたし、何よりこの狭い空間を半日一緒に過ごしたのが大きいな」


「クロエと私の匂いも、ちゃんと覚えたんじゃない?」


 すっかり獣臭がなくなり、気持ち良さで満面の笑みになっているベリちゃんが僕のローブの中に戻ってきた。


「最終的にハルトに持っていかれてしまうのはなんともやるせないわね」


「これでも最初に比べれば格段の進歩といえる。信頼を勝ち取るというのは時間と根気が必要なのだろう」

しばらく毎日投稿頑張ります。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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