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第三十七話 竜の巣

 完全に沈黙したワイバーンからものすごい量の光の塊がクロエに向かって飛び込んでいった。


「どうやらレベルが上がったようだ」


「おぉ、やったねクロエ!」


「よかったじゃねぇか」

「クロエおめでとう」


「なんだか申し訳ないな。みんなで倒したというのに私だけが経験値を得るというのは……」


「そうだな、使えそうな素材は我々三人で山分けするから気にしなくていいぞ」


「そうだ、今さら気にするな。礼を言うならハルトに言うんだな。そもそもハルトがいなければ俺達は全滅していたんだぜ」


「ハルトは他にも隠し事があるようだからあとで聞くとしてまずは……なんとか倒せてよかった。みんなありがとう。しかしながら私達の目的は……」


「おう、竜の巣の確認だな。その前に、ハルトはセーブだっけか? ちゃんと記録しておけよ。クロエの魔力がかなり少ない状態だからな。ここでニーズヘッグと連戦とかになったらたまったもんじゃねぇ」


「了解です」


「ロドヴィック、残念ながらニーズヘッグがいたら逃げるか全滅するかの二択だろう」


「違いねぇ」


 ニーズヘッグいないよね? 間違いなく消したもんなぁ。これで巣にいたら驚愕だよ。ただ、クロエの自由のためにもしっかり確認しておかないとね。


「よし、じゃあいくか」


 ロドヴィックさんの掛け声で再び進み始める。竜の巣はこの先にある洞窟の中にあるという。ちなみに、ここまで来たことがあるのはロドヴィックさんとダリウスさんだけ。クロエも来るのは初めてだという。


「この奥が竜の巣なのか……なんだかとても静かなのだな」


「やはり、ニーズヘッグはいねぇのかもな。寝てるにしてもイビキぐらいは聞こえそうだ」


「ロドヴィック、もし巣に何もいなかったらここをどうするんだ?」


「ワイバーンの棲みかにされても厄介だからな。やはり壊すしかないだろう。もうあんな大型のワイバーンとやり合うなんて二度とごめんだぜ」


「それもそうだな。クロエ、ハルト君、着いたよ。あれが竜の巣だ」


 目の前には洞窟の中にも拘わらず、様々な角度から斜めに空いている縦穴から注がれる光で多くの植物が生い茂っている。光が交差して見える景色はちょっと幻想的な雰囲気さえ感じさせる。


「ここが竜の巣ですか」



 一番奥にある大きな岩場の上には円形状に木の枝で覆われた竜の巣が見えた。


「ダリウス、見てきてくれるか?」


「わかった」



 ダリウスさんがあっという間に岩場を登っていき巣穴の縁に手を掛けた。さっと足を乗せて竜の巣を覗いたと思ったらしばらく呆然としているように見えた。


「どうしたダリウス。ニーズヘッグはいねぇんだろ?」


「ニーズヘッグはいないのだが……」


「ダリウス、どうしたのだ」


「ニーズヘッグのものと思われる卵がある」


「はぁ?」「た、卵だと……」


「と、とりあえず卵を確保してから下に降りる」


 みなさん、まさかの展開に頭を悩ませている。いや、普通に考えたら割ってしまえばいいんだろうけど、ドラゴンの卵となるとその価値はプライスレス。判断するには領主様の意見も伺いたいところだろう。


「ど、どうするのだ?」


 クロエが若干挙動不審気味だ。


「やっぱり持って帰るしかないのでは」


 ダリウスさんは現実的なタイプなようだ。


「黙って割っちゃう?」

「ハルトは静かにしてるのだっ!」


 シャレが通じないようだ。まぁ、結構本気だったんだけど時と場所を選んだ方がいいのだろう。


「そもそもこの数日間、卵は温められてないんだろ。もう死んでるんじゃねぇのかそれ」


 更に現実的な意見のロドヴィックさん。


 つまり、総合すると卵は持って帰る方向に決まりそうだ。まぁ、このクエストの目的を考えたら証拠品的なものになるのだろうし、面倒な判断は領主様にぶん投げればいいのだ。



 ふと、目に深い隈がとれない苦労顔の領主様を思い出したのだが、まだそんなに親しい訳でもないのでいいのかなと思ってしまった。どちらにしろ僕が判断することではないので気にもならない。




 こんなことを考えていたからバチが当たったのかもしれない。



 いや、人生とは面白いことが起きるものだ。これも一期一会というものなのだろうか。




 ダリウスさんが持っていた卵に何の前触れもなくヒビが入ったかと思ったらそのままあっさりと割れ、たまたま向かいに座っていた僕とそれは目があった。


「えぇぇぇぇっ!!!」

「う、嘘だろっ」


 クロエとダリウスさんはあんぐりと口を開けたまま驚いている。


 ロドヴィックさんは既に10メートルくらい離れた場所にいた。これが危機察知能力というやつなのだろうか。



「びぃぃ びぃぃ びぃぃ」


 そしてそれは、僕が胡座をかいて座っていたところにパタパタとやってきて乗っかると上目遣いで可愛らしく鳴きはじめた。


 何この可愛い生き物。


「クロエ、おっぱいを」

「で、出るかぁぁ!!!」


 シャレが通じないようだ。まぁ、何かご飯をあげた方がいいのかもしれないけど、竜を飼ったことがないだけに何をあげたらいいのかわからない。


 どうしたものか……。

しばらく毎日投稿頑張ります。

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