第三十六話 ワイバーン3
こうなってしまっては隠すわけにもいかないだろう。僕は『冒険の書』のことをセーブとロードのことを中心に話をすることにした。
最初は半信半疑に聞いていたみんなもワイバーン戦での作戦やその後どうなったかを話していく頃にはかなりの信憑性を感じたのか信じるようになっていた。
「つまり、その私達には見えない『冒険の書』ってのが目の前にあって、記録したり、また記録した場所に戻ってやり直せるということなのかい? ハルト君」
「そういうことです」
「何でその事を俺達に言わなかった!」
ロドヴィックさんの目が相変わらず鋭い。
「もともと言うつもりはありませんでした。考えようによっては深眠よりもはるかに悪用出来る代物ですからね」
「それもそうだが……」
「ピンチになった場合はロードして違う方向に導き直すことも考えていましたが、このワイバーンの場合は見て見ぬふりは出来なそうでしたので……」
「それにしても……」
「このメンバーでワイバーンを倒せなかったというのかよ……」
「しかも、私とロドヴィックが殺られていると……」
「ハルト、私は? 私はどうなったのだ」
「無事だったよ。でも前衛がいなくなった時点でどうなるかわかるでしょ。僕もクロエもあっさり殺られるだろうね」
「通常のワイバーンとは明らかに違うということかな、ハルト君」
「はい、ダリウスさん。個体の大きさだけでなく、想定してる以上に防御力が硬かったようですね。攻撃がなかなか通っていませんでした」
「ハルト君、もう一度戦闘状況を詳しく教えてくれないか?」
その後、僕の話を基にして作戦を練り直すと再び大型のワイバーンとの戦闘に向かうこととなった。
「その作戦で大丈夫ですかね?」
「まぁ、ダメならまたロードしてくれ」
「簡単に言いますけど、二人が目の前で殺られるとか僕の精神力は結構ガタガタなんですからね……」
「悪りぃ、悪りぃ。自分が死んだとか言われてもピンとこねぇからよ」
「ロドヴィック、一応言っておくが無茶しても巻き戻れるとか考えるのはやめておこう。どんなイレギュラーがあるかもわからない。もしもハルト君がその『冒険の書』を使えなくなってしまったら……とか可能性としてゼロではないはずだ」
「あぁ、そうだな」
「ハルト、もう隠し事はないのだろうな! まだあるというならこの戦いが終わったらきっちり話してもらうからなっ!」
「わ、わかった。話すよ」
「や、やはり、まだあったのかっ!」
し、しまった……。
あとクロエに伝えていないのは、前の世界での年齢のことと、『冒険の書』の魔物図鑑、魔法情報にステータス関係のことか。まぁ、ここまで話したのならもう全部伝えてもいいんじゃないかな。別に怒られるようなこともないだろう。
「では、作戦通り頼むよ」
「気を抜くんじゃねぇぞ」
「了解です」
「はい」
こうして、二回目の作戦がスタートした。
煉獄乱舞!
ギュアァァァァァァァァ!!!!!!
「ほらっ! こっちだワイバーン」
ロドヴィックさんが盾を構えながらワイバーンを挑発する。一瞬僕の方を睨んでいたワイバーンがくるりと振り返る。
い、いや、僕、今回攻撃してないんだからねっ!
怒り狂ったワイバーンはロドヴィックさんに突進していく。
深眠
カクンっと膝から崩れ落ちていくワイバーン。
よし、今回も効果は抜群だ!
「ナイスだ! ハルト君! ここまではとりあえず予定通りのようだね」
「そうですね。ここで前回は首を攻撃して目覚めさせてしまいます。なので、一番効果のあった魔法攻撃に移行します」
「俺とダリウスで上顎を上げればいいんだな」
「はいっ。じゃあ、クロエ頼むよ」
「あぁ、準備はいいな。いくぞっ」
煉獄乱舞!
ブォビィァァァァァァァ!!!!
ブォォン! ブォォン! ブォン!
叫び声にならないような音を発し、尻尾をこれでもかとぶん回しながら暴れまわっているワイバーン。
すかさず、ロドヴィックさんが盾と短槍をぶつけ音を立てながらワイバーンの気を引いていく。
「目開いてねぇけど、こいつ見えてるんだよな。随分と賢い亜竜なこった」
「ロドヴィック、気を抜くなよ! 無理に攻撃しなくていい」
右後方から距離をとって石を投げながら挑発するダリウスさん。
火球
そして、左後方からはクロエが魔法で嫌がらせをする。
ワイバーンが後ろを向いた瞬間に今度は僕が魔法を撃つ。もちろん、ロドヴィックさんが退いているのを確認している。
深眠!
深眠!
深眠!
あ、危ない。三回目でようやく決まった。
かなりクロエの近くまでワイバーンが来てしまっていた。
「はい、集合っ!」
「深眠は三回目が失敗したらクロエは逃げた方がいいね」
「わかった」
「あとはこの繰り返しか」
「無理せずバランスよく攻撃するぞ!」
「よしっ! 二回目いくぞ」
煉獄乱舞!
ブォビィァァァァァァァ!!!!
ワイバーンが倒れたのはクロエ三回目の魔法が炸裂した時だった。
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