第三十三話 森の異変2
速いっ! ロドヴィックさんその盾、本当は軽いんじゃないの? 一番重装備のロドヴィックさんに全然追いつけない。
「ハルト、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ……ま、まだ何とか……大丈夫」
しばらく進むといつの間にかあれだけ騒いでいたフォレストエイプの姿は疎らになっていた。
この奥には何かがいる。ゲームならボス戦が始まる前の雰囲気だよこれ。
なんとなくだがセーブしておこう。こういうのは直感が大事。
ギュオォォォォォ!!!!!!
うおぉぉ! なんかヤバい叫び声が響いてきた。声だけでお腹まで振動が伝わってくる。
「ロドヴィック止まろう! 私がこの先の様子を見てくる。みんなは少し休んでいてくれ」
「わかった。ダリウス無理はするなよ」
「あぁ、わかっている」
そう言うとダリウスさんはさっきまでよりも更に速いスピードで進んでいった……。
「はぁ、はぁ……ひょっとしてみんなも、もっと速く走れるんですか?」
「そりゃ、俺らは一応タグがゴールドなんでな。流石にハルトに負ける訳にはいかねぇよ」
「それもそうですね。ロドヴィックさんのレベルって聞いてもいいでしょうか?」
「俺はレベル38で、ダリウスがレベル36だ。職業が違うから一概には言えねぇが、ステータスで3~4倍は差があるだろう」
「この先、ハルトは俺の後ろに隠れるように動けよ。どうやらただの巣穴確認クエストではなくなってしまったみてぇだからな。しかし、ハルトの魔法は戦いの流れを一変させるものだ。俺らが手に負えない魔物が相手でもチャンスが生まれる可能性がある」
そう言ってニヤリと笑うロドヴィックさんは中々にかっこいい。
「とりあえず、強敵っぽいのは深眠で眠らせればいいですね」
「そうだな。そして、もしも相手がニーズヘッグだとしたら迷わずもうひとつの……」
「魂浄化ですね」
「なんだかハルトが戦力として数えられているのは自分のことのように嬉しく思うぞ。ほらっ、今のうちに水を飲んでおくのだ」
確かに喉がカラッカラになっていた。レベルが上がってかなり体力もついてきたと思っていたけどリンカスターギルドのトップレベルは遥か高みにあるようだ。
「改めてみなさんの凄さがわかりました。ちなみにジャミル先輩のレベルはどんなものなんでしょうか?」
「あいつが気になるか? ジャミルはレベル30だ。最近ゴールドタグになったばかりだよ」
なるほどね。当面の長期目標としてはゴールドタグを目指すことにしよう。
「ゴールドの人って結構いるんですね」
「いや、それで全部だよ。本来はもう少し多かったんだが俺の力不足でな」
「違うぞハルト。先代の賢者が亡くなった際に多くの者がリンカスターを去ってしまったのだよ」
「それはまた何ともわかりやすい。そういう意味ではジャミル先輩もいいところがあるじゃないですか」
「まぁ、タイミングとかもあるんだろうが。どちらかというとジャミルの場合は肩書きとかに拘るというかだな。つまり、俺を除けばリンカスターギルドのナンバー3となる訳だ」
「つまり自分に迫る危機とかよりもギルド内における自らの地位や権力を大事に感じるタイプと」
「あとは足に古傷を抱えているから街から移動するパーティに置いてかれたという噂もあったな……」
「それはまた、後半の方だと面白いですね」
「とはいえ、リンカスターギルドの主力であることは間違いないからな。あいつがいて助かっている部分も少なくはないんだぜ」
「へぇー。少しはあるんですね」
「ハルト、だから私も言っただろう。魔法使いの育成にはそれなりに実績があるのだぞ」
「魔法使いの立場を更に向上させるためとか考えていそうで素直に喜べませんね」
「ハルトはなかなか鋭いな。確かにパーティにおける魔法使いの分配を高める提案がジャミルからあがっていたな」
「ロドヴィックさん、そんなこと可能なんですか?」
「いや、あくまでもパーティ間で決めることであって、ギルドが介入することはない」
「ジャミルもそのことはわかっているはずなのだがな」
「クロエ、それは面倒見ている魔法使い達の長として、またはナンバー3の自分はギルドに様々な提案が出来るんだっていうのを周りに見せてるんだよ」
「そんなことに何の意味があるのだ?」
「ギルド内での自分の影響力を高めるってところか」
「そんなところでしょうね」
「影響力を高めると何かいいことがあるのか?」
「それはまぁ、ジャミル自身が気持ちいいんだよ」
「そ、そうか……」
「おそらく私やクロエに対抗している部分もあるのであろう」
「ダリウスさん!? 大丈夫でしたか?」
「うーん、それがあんまり大丈夫でもない。困ったことに巣穴の近くにワイバーンがいた」
「ダリウス、ニーズヘッグは?」
「巣の中までは見えなかったが少なくともあの距離にワイバーンがいて出てこないところを見るといないのだろうな」
「もしかしたらワイバーンはニーズヘッグのいない巣穴を奪おうとしているのではないか」
「かもしれんな。今はフォレストエイプを食事中なのだが思いの外に大型のワイバーンだった。通常の2倍近いサイズはあったな」
「た、倒せるんですか?」
「どうするロドヴィック?」
「巣穴を狙っているってことは繁殖をする可能性がある。まぁ普通に討伐した方がいいだろう。せっかくいいメンバーが揃っているんだ」
「よし、作戦はどうする?」
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