第三十一話 マウオラ大森林
あれから草原で何度かホーンラビットと遭遇したのだけど僕の魔法撃ったけど発動しなかったぜぇ演技を2回ほど繰り返してマウオラ大森林へと入った。
「やっぱり、なかなか発動しないもんだね」
「もしかしてハルトが危険を感じないと発動しないのではないか。アビスグリズリーと1対1でやってもらうのは如何だろうか」
「いやいやいや、怖いから! グリズリーがヤバいのもう知ってるんだからね!」
「クロエ、それは流石に魔法が発動しなかったらハルト君が死んじゃうんじゃないかな」
「ダリウスもちろん冗談です。でもいろいろと試してみるのがいいのではと思っています。ニーズヘッグの時からはレベルもかなり上がっていますし、発動確率が上がってたらとも思ったのですがそう甘くないようですね」
「おいロドヴィック、あのクロエが冗談を言ってるぞ……」
「おぉ、これがパーティ効果というやつだな。というかハルトのおかげか……」
しばらく進んでいくと僕とクロエが最初に会った小さな滝のある川辺まで辿り着いた。どうやら最初の休憩をここでとるようだ。
「俺とダリウスで交互に見張りをするから水の補給と休息をとっておけよ。この先はあまり休める所がないからな」
この場所はゴブリンに殺されたり、ドラゴンに殺されそうになったりとかなり思い出深い場所だ。ここらで一応セーブしておこう。セーブはレベルが上がった時など定期的に行っている。
僕はまだマウオラ大森林の中層に入った辺りまでしか来たことがない。戦闘力としてはドラゴンがいない今はグリズリーが一番らしいけど、中層以降は猿の魔物が連携して攻撃を仕掛けてくるらしく注意が必要らしい。
あとはめったにないがドラゴンの亜種ワイバーンが、沼や水場に降りてくることがあるとのこと。僕が転移して上空に見かけた奴がそうなのだろう。ニーズヘッグと比べたらかなり小さいがそれでもグリズリー約3体分の大きさ。空を飛べるので機動力、攻撃力ともにグリズリーの数倍以上はあると考えた方がいいらしい。
「ワイバーンとか出たら逃げるんだよね?」
「どうであろうな。普段ならワイバーンと戦うことはない。しかし、私とハルトで翼を魔法攻撃し、落としてからはロドヴィック殿とダリウスを中心に地上戦に持ち込めばあるいは……」
「僕、心底魔法使いでよかったと思ったよ」
「俺はハルトの異世界武術を見てみたいんだがな」
「ロドヴィックさん、だからあれは運がよかっただけなんですからね!」
「そうか? 周りで見ていた者は華麗なステップから狙いすました蜂のような一撃だったと騒いでいたぜ」
「まぁ、威力が蜂並みだったのは認めますけど……そういえばダミアン達はあれからどうなったんですか?」
「気になるか?」
「それはまぁ一応」
「お金が少し足りなかったみたいでな。仲間とともに30日間の鉱山労働をすることになったそうだ」
鉱山労働がどんなものかわからないけどイメージはよくない。マスクとか無いだろうし、肺を痛めるだろう。長期の労働は命を縮めそうだ。落盤事故とかも無くはないだろうしね。
「ロドヴィック、そろそろ行こうか。ハルト、水は汲み終わってるか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、そろそろ行く……ふ、伏せろぉぉぉ!」
ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
やはり水場は裏切らない。ゴブリンか!
「人数が多いなダリウス!」
「シャーマンもいるぞ! クロエとハルトはロドヴィックの後ろに! アーチャーとシャーマンを先に狙ってくれ!」
「了解したっ!」
「はいっ!」
僕はすぐに杖を構えるとシャーマン目掛けて魔法を発動した。
深眠!
この魔法は全体魔法だ。魔法はシャーマンを中心に広がっていくとアーチャーも含め殆どのゴブリンがその場で倒れた……。
あれっ? ほぼ全員寝たな……。
「ハ、ハルト君! 今の魔法は? な、何をしたんだ!?」
ダリウスさんが眠らなかったゴブリンをあっさりと仕留めると驚いたようにこちらを振り向いた。
「ま、魔法で眠らせました。今のうちに止めを」
「わ、わかった!」
ロドヴィックさんも驚いたようにこちらを見ていたが状況を理解したのかゴブリンを倒しに行った。
「ハルト君、君が使える魔法を全て教えてもらいたいのだが、とりあえずさっきの魔法がどんな魔法なのか教えてくれるかい?」
「ダリウス、びっくりしたか! これがハルトの旅のお伴魔法の1つ、ディープスリーパーだ!」
クロエが自分のことのように説明し始めたのたが、旅のお伴魔法って言うのはやめてほしい。なんか恥ずかしいだろ。
「この魔法は敵グループを対象に眠り状態にすることができますが、効果はランダムで効かない場合もあります。クロエの言った旅のお伴魔法ってのは魔物だけでなく人を眠らせることも出来るので野宿の時にすぐ眠れるからです」
「つまり、簡単に人を殺せることができる魔法ということだ。しかも魔法の証拠も残らない」
ロドヴィックさんの目がまたしても鋭い。やめて、人を犯罪者のように見ないで。
「確かに犯罪に便利な魔法のようだね、ハルト君」
「や、やりませんよ!?」
「わ、私もハルトの保護者だからな! ちゃんと悪いことに使用しないようにだな……」
「冗談だよ。それにしても異世界からの旅人ならではの魔法シリーズというのがまだまだありそうだな」
しばらく毎日投稿頑張ります。
続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。




