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第三十話 発動確率

 次の日の朝、西の門に集合した僕たちはマウオラ大森林へと向かっていた。ちなみに、アリエスは昨日僕とクロエのワイドボア狩りを見学しながら狩ったボア肉を持ってハープナへと戻っていった。


 昨日の時点で占いで感じた出来事の情報が集まったということなのだろう。主に僕とニーズヘッグのことなんだろうけど……。帰り際にこんなことを言われた。


「もしハープナに来ることがあったら必ず顔を出しなさい。いや、あなたはきっと来るわね。ヴイーヴルにも会ってもらいたいわ」


「それは占い?」


「いいえ、ただの勘よ。でもまた近い内に会える気がするわ」


「なるほど、じゃあその時はよろしくね」


 いつの間に買っていたのかリンカスター名物のボア肉のパン包みを食べながら戻っていった。ヴイーヴルにもお土産で頼まれていたらしいのだが、目の前でワイルドボア狩りが行われていたのでアリエス的にはラッキーだったようだ。やはりドラゴン種はボア肉が好きなのだろうか。




 場所は変わってマウオラ大森林の少し手前。草原のエリアを歩いている。


「ロドヴィック、ハルト君の魔法が本物だとすると深淵の巣には何もいないということになるんだよなっと!」


 ダリウスさんは、ロドヴィックさんと会話しながらあっさりとホーンラビットを仕留めていく。流れるような動きは、まるでウサギの方から剣に向かっているのではと本気で疑うほどだ。


 ロドヴィックさんは盾と短槍を巧みに操る戦士だ。ダリウスさんとの連携も申し分無く、盾でダリウスさんの方に受け流しては体勢を崩されたウサギは為す術もなく狩られていく。


 どうやら草原では僕とクロエに出番は無さそうだ。


「そういうことになるな。ダリウス、一度そのプリチーソウルとやらを見せておいてもらおうぜ。いきなりぶっつけ本番で見るより心の準備がいらんだろう」


「それは名案ですね。MP消費も少ないのだからどんなものか見せてもらおうか。ハルト君いいかな?」


 どうしよう、いきなり成功しちゃってもよくないような気もする。


 しかしながら普通に失敗することもある魔法だ。結局のところ僕自身がこの魔法をよくわかっていないのがいけない気がしてきた。まぁいい、見たいというのだから頑張ろうじゃないか。一度成功してから失敗したふりをし続ければいい。


「それでしたら次にホーンラビットが出てきたら教えてください。魂浄化(プリフィーソウル)をやってみますね」


 みなさん、興味津々なご様子で策敵に余念がない。おい、クロエお前が何でそんなに頑張っている。お前も見たいのか。


「な、何を見ている!? や、やはり仮面をした方がよかったか?」


 最近、クロエは街を出ると仮面を外すようになってきたのだが今日はロドヴィックさんとダリウスさんもいるので妙に気になるらしい。


「仮面をしてない方がクロエは可愛いと思うよ。それよりも魂浄化(プリフィーソウル)見たかったの?」


「なっ!? 可愛いだと! ……臆面もなく、はっきりとそんな恥ずかしいことを言うなどハルトは全くもう……」


 小さい声で何を言ってるのか聞こえないが俯いて頬を赤く染めているのでおそらく照れているのだろう。16歳らしいクロエを眺めるのは稀なことなのでちょっと楽しい。癖になりそうだ。定期的にいじめてあげよう。


「ハルト! ホーンラビットだ。そっちへ誘導するぞ」


 ロドヴィックさんはホーンラビットを盾でバッシュしながら僕とクロエのいる方へ誘導してくる。


「よし、クロエはハルトのフォローを頼むぞ」


 ダリウスさんの言葉の後に、僕はホーンラビット目掛けて魔法を放った。


 魂浄化(プリフィーソウル)


 僕の杖からは光の粒子がホーンラビットを追い掛けるように囲いこんでいく。


 あっ、いきなり成功しちゃったかも。


 ホーンラビットの体を包み込むように一塊になっていくと光は徐々に小さくなっていく。


 キュー キュー キュィィィ!!


 光の中で体が折り畳められているかのような叫び声。あとはいつものようにブラックホールに吸い込まれるかのように光の中に小さくなって消えていった。


「……すげーな」

「これがプリフィーソウルか」


 どうやらダリウスさんはちゃんと魔法の名前を覚えてくれているようだ。それにしてもホーンラビットにも効果があるということは全ての魔物に使えそうな気がする。


「どうだ! ハルトは凄いであろう。ニーズヘッグもこの魔法で見事消し去ったのだ」


 クロエがまるで自分のことのように自慢している。どうやら僕の見せ場を作るために頑張ってウサギ探しをしてくれていたようだ。


「いきなり成功するとは思いませんでした。これでしばらくは発動しないと思います」


「ハルト君、プリフィーソウルが発動しない時はどのようになるんだい?」



「えっとですね。魔法を放っても先程出たような光の粒子が出ないんですよ。なので、わりかし早く失敗に気がつきます」


「なるほど、つまり本当は100%の確率で発動する魔法だったとしてもハルトの気持ち次第で発動しなかったことにできるということだな」


 ロドヴィックさんの指摘がなかなかにするどい。流石はギルドマスターである。強烈な魔法だけに僕にかまをかけているのかもしれない。


「な、なんと! ハルト本当なのか!」


 クロエは本当に騙されやすいというか正直すぎて困る。このあたりは今後僕がフォローしていくようにしよう。


「クロエまで何言ってるの。ニーズヘッグとの戦いで僕が魔法を何回発動したと思っているの。たまたま発動してくれたからよかったけど、そうじゃなかったら二人とも死んでたんだよ」



「そういえば何回もプリチーソウルと叫んでいたな。あの時はこんな魔法だと知らなかったから頭がおかしくなってしまったのかとおもったのだぞ。はっはっは」


 クロエのこの反応を見ればロドヴィックさんもダリウスさんも信じざるを得ないだろう。まぁ、発動が確率に左右されるのは本当のことだしね。


 僕の肌感覚では4割~5割くらいの確率で発動している気がするけど。つまり、2回魔法を撃てば1回は成功することになる。大きな魔物と小さな魔物でも発動する条件が変わってくるかもしれないし今後もテストしていこう。

しばらく毎日投稿頑張ります。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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