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第二話 冒険の書

 途方にくれた時、左手にある『冒険の書』の存在を思い出した。とりあえず、もう一度本を開いて見るも相変わらずの真っ白……。何か必要なのかもしれない。


「こういう時はどうするんだっけ。えーっと、ファイアボール! 違う。転移! 地球、転移! トイレ」


 転移! トイレってなんだよ。自分で言ってつい笑ってしまった。心のどこかで帰りたいと思っていたのだろうがトイレから転移したとかなんか恥ずかしい。


「やっぱり簡単には戻れないんだろうな……」


 それにしてもこの『冒険の書』何の反応もないな。ちょっと不親切過ぎやしないだろうか。


 普通はもっとこうチュートリアルみたいなのとかあるんじゃないの。しかもいきなり森の中とかハードモードだよね! 街とは言わないけど村が見える場所とかに設定出来なかったのかね。


 ん? そういえばゲームだと『冒険の書』って確か記録したりセーブする時にデータ保存するやつじゃなかったっけ。この場所でも出来るのか!?


「いや、今はとにかく何でもやってみよう。セーブ!」


 すると『冒険の書』は光輝いてページが勝手に捲られていく。


 バサバサバサッ この場所でセーブしますか?


 『冒険の書』が開いて文字が書かれている。とりあえず一歩前に進めそうな気がしてきた。


「はい」


 セーブしました。


 すぐに『冒険の書』を見るとこう書かれていた。


 マウオラ大森林

 ハルト(16)レベル1


「おぉぉぉ。記録されたよ……」


 セーブは1ページ目に表示されていた。マウオラ大森林っていうのがこの場所のことなのだろう。ハルトは僕の名前だからわかるんだけど(16)ってのがわからない。普通に考えたら年齢っぽいんだけど、僕の年齢は27歳のはずだ。まさか若返っているのか!? 身長はその頃からあまり変わっていないのでなんとも言えないが、なんだか身体も軽いし肌もみずみずしいというか若返った感じはしなくもない。早く鏡で顔を見てみたい。


 そして、一番興味がひかれたのは次に表示されているレベルだ。どうやらこの場所はレベルが存在する世界のようだ。ひょっとしたら魔法だって使えるようになるのかもしれない。


 で、でも、落ち着け。今はとにかく人がいる安全な場所に辿り着きたい。いろいろ検証するのはそれからでも遅くはない。だって、未だに遠くではよくわからない叫び声が響いているんだもの。


「さてさて、どっちに向かえばいいのかね……。あの叫び声が聞こえる方には行きたくないよね。うーん。やっぱり反対側に向かうか」


 改めて辺りを見渡してみる。人の手が入った森ではなさそう。草も木も生えっぱなし。気温はそんなに高くなく湿度も低そうだ。つまり、スーツ姿で歩いていても寒すぎず暑すぎずというのは有り難かった。


「人がいそうな気配とか全くないし、まずは水を確保したほうがいいんだろうけど……」


 耳を澄ませても水の流れる音なんて聞こえやしない。耳に入ってくるのは例の獣の叫び声ばかり。


「気のせいか、あの叫び声が少しずつ近づいてきてるような気がするんだよな。あー、嫌な感じだな……」


 草や蔦を掻き分けながら少しずつ進んでいくも先が見えないというのはどうにもやる気が出ない。杖代わりに見つけた木の枝で邪魔な草や絡まった蔦を取りながら進んではいるが100メートルぐらい進むのに10分程掛かっていそうだ。


「そもそも、この『冒険の書』が邪魔なんだよな。消えちゃえ!」


 シュッ


 左手にあった『冒険の書』はまるで手に吸い込まれるように消えていった。


「うぉ、消えるのかよ! ちょ、出す時はどうするの。出ろっ!」


 ポンッ!


 左手にはさっきまでと同じように『冒険の書』が現れていた。


「い、意外と便利じゃないか」


 片手で進めていた作業が両手を使えるようになって一気に進みが早くなる。それでも慣れない作業を続けているせいか腰も痛くなってきたし、すでに腕もパンパンになってしまった。


「ちょっと調子に乗りすぎて飛ばしすぎたか。少し休憩にしよう。それにしても水が欲しくなってきたね。これだけ動くと流石に喉が渇いてくるよ」


 せめて喉を潤せるような果物でも実っていればまだ助かるんだけど、見渡す限りそんな物は見当たらない。実際見つけたとしてもそれが本当に食べられるものなのか、はたまた毒が含まれているのかなんてわからないし、そんな果物を口にするのは正直怖い。


 パッチテストとかやれば食べられる物かどうか判断出来るんだっけ。余裕が無くなってくると見た目だけで判断して食べてしまいそうだ。本当気をつけたい。


「気をつけたいけども、もう既に大分余裕が無くなってきてるんだよね。あー、水が欲しいっ!」


 何気なく『冒険の書』を出してみる。声に出さなくても頭で思うだけで出現することがわかった。また一つ便利な使い方を知ることができた。


「水出してくれないかなぁ。お願い!」


 まるで反応がない。まぁ、期待はしてなかったよ。


「あっ、そうだ。レベル上がってないかな」


 『冒険の書』を確認するも、書かれている内容はセーブデータで今のデータではない。当たり前のように同じ内容が書かれていた。


「もう一度セーブしてみるか。セーブ!」


 セーブ1に上書きしますか?

 それともセーブ2に保存しますか?


「えーっと、セーブ2に保存」


 セーブしました。


 ページのスペース的には、あともう一つくらい保存出来そうだ。ちなみにレベルに関しては、至極当たり前だけど上がっている訳はなかった。チッ。


 マウオラ大森林1

 ハルト(16)レベル1


 マウオラ大森林2

 ハルト(16)レベル1


 レベルを上げるにはやっぱりモンスターとか倒さないとダメなんだろうな。はぁ、気が重いわー。

しばらく毎日更新で頑張ります。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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