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第百九十九話 怪獣大戦争2

 アスちゃんの背中は十分すぎるほど広く、波飛沫が立たないように、気を掛けながら進んでくれているので割りと快適だ。それでも、かなりのスピードが出ているので、さすがは海獣アスピドケロン、たいしたものだ。


 この先、本当にアスちゃんがパーティメンバーになったとすると、陸、海では最速の移動手段を得たことになる。ヴイーヴルの空の旅がいちばん速そうだけど、体力や吹き飛ばされる恐怖との戦いでもあるため、余程のことがない限り利用したくない。


「では、私は海に入る前のジルニトラの前に、フェンリルの姿になって立ち塞がればいいのですね」


「私も届く範囲に入ってきたジルニトラに先制攻撃を加えるのだな」


「二人には僕が防御魔法をかけておくから、ピカピカ光って目立つと思うんだ」


「大きなフェンリルが光っていたら街の方からもクレームが届きそうですね」


「少しぐらいなら大丈夫だと思いたいが、それもジルニトラの進路によるか」


「まぁ、バレたとしても野生のフェンリルかもしれないし、ユーリットさんであるという確かな情報にはならないでしょ。大丈夫、大丈夫」


「野生のフェンリルが、そうそう街の近くに現れたら堪ったものではないがな」


「そうですねぇ。光ったフェンリルは見たことがないですから、それは新種かもしれませんね」


「ベリルは何すればいいの?」


「ベリちゃんは、ユーリットさんの首もとに隠れていてもらえるかな? 油断させて魔法で一気に片付けよう」


「わかった!」


「お、おい、終わりなの!? もう、終わりなの? こんなの作戦というには程遠いわよ。それに、防御魔法なんかより私が盾になるわ! 人間の魔法なんかでジルニトラの攻撃を防げると思っているの!」


 アスちゃんも一緒に戦ってくれるつもりらしい。陸ではノロマな亀との話だったけど、死ぬつもりなのだろうか……。


「とりあえず、アスちゃんは海にいた方がいいんじゃないかな。逆にジルニトラに狙われて面倒なことになりそうな気がするよ」


「わ、わたしが足手まといか!?」


 そういう訳ではないんだけど、こちらが陸で戦う以上は適材適所っていうのかな。アスちゃんの実力はよくわからないけど、陸では無理をしない方がいいだろう。


「戦いの場が海に移行するようなら助けてもらいたいんだけど、陸ではそんなに役に立たないんでしょ?」


「アスピドケロンに向かって役に立たないとか、とても人間の言葉とは思えないわよ!」


「アスちゃんは、ママに僕たちの説明でもしておいてよ。こっちも難しそうだったら撤退して、ママに任せるかもしれないし。とりあえず、海から僕らの戦いでも見ていてよ」


「そ、そこまで言うのなら見ていよう。フェンリルと、小さいとはいえホワイトドラゴンがいるパーティだしな」


 相変わらず僕とクロエの評価が低いのはどうしようもないな。それに、戦いを見た後も変わらないかもしれない。僕が凄いのではなく、使う魔法がチートなだけだしね。


 それからも話し合いと呼べないような雑談、もとい簡単な打ち合わせを繰り返していると、シンバル地方独特の乾燥した暑さが肌に感じられるようになってきた。


「まるで砂漠でもありそうな雰囲気だね」


「よく知っているなハルト。シンバルといえばやはり砂漠だな。街は海沿いのオアシスにつくられているのだ」


「すると、ジルニトラの棲みかって」


「もちろん、砂漠最大のオアシスを占領されている」


 なるほど、それはそれで倒した後の活用が政治的な話になりそうで困ったな。と、これはとらぬタヌキの皮算用か。


「間も無く到着するわ。ジルニトラが飛んでくる方角に降ろすわよ」


「ありがとう、アスちゃん。ママによろしくね」


 アスちゃんが近くにきたのを勿論のことママは感じており、背中に乗せている僕らを訝しげに見ていることだろう。早く説明に行ってあげた方がいい。


「そ、その、無理はしないでよ。相手は黒竜ジルニトラなの。お願いはしたけど、ベリルのことはもちろん、みんなのことも割りと好きなんだから」


 なかなか嬉しいことを言ってくれるじゃないかアスちゃん。ママの許可がちゃんととれたならメンバーに加えてあげようじゃないか。ママが許可出すかどうかはわからないけどもね。


 それにしても疑問は最大のオアシスを持っていながら海へ出てくるジルニトラの行動だ。この世界のドラゴンさんってあんまりアクティブに動くイメージがないんだよね。どちらかと言うと縄張りを重視して、その中で活動しているイメージ。


「ジルニトラと会話でもできればいいんだけど、まー、無理だろうからね」


「話ができるなら共生の道も開かれるだろうが、ジルニトラに関してはその考えは捨てた方がいいぞ。凶暴さはニーズヘッグと同等以上だと聞いたことがある」


「な、なるほどね。そういえば、シンバルの賢者様にご挨拶とかしなくてよかったかな?」


「いや、今更だろう。それに私たちはバカンス中だからシンバルには来てないことになっているんだろう。じゃないと、また面倒なことに巻き込まれる」


「それもそうだね……」


 クロエの言う通りだ。腹をくくって、サクッとジルニトラを倒してバカンスに戻るんだ。

新作、『僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑』をはじめました。

呼び出した召喚獣が、何故かタイ料理屋の店主だったし、この召喚獣いろいろとおかしい。是非お楽しみ頂けますと幸いです。


下記リンクから読みにいけます。ブクマ、評価頂けると嬉しいです!

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
新作投稿開始しました。こちらもよろしくお願いします。
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