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第百九十七話 後始末

「ふ、ふんっ、父上と母上がお前らの言うことを信じるはずがない」


 精一杯の強がりと共に、最早どうすることもできなくなったグリーズマン王子一行は、悲しそうな背中を見せながらリーダーさんと共に島を離れていった。


 とはいえ、すでに信じる信じないの話ではなくなってしまっている。王室的にもどちらを信じてどちらと手を組むべきかは理解しているだろう。

 リーダーさんが再び頭を下げているけど、あなたが悪いわけではないので気にしないでもらいたい。

 自業自得とはいえ、共生のドラゴンを敵に回してまで守られる人材では無いだろう。会ってからまだ間もないけど、サヨウナラ第二王子。


「もう行った?」


「うん、何だかすごい王子だったね」


「チリチリ王子はとっても優しかったのに、あの人はベリル嫌ーい」


「そうだね。ああいう人を見て、自分がそうならないように気をつけなきゃならないよ」


「うん、ベリル気をつけるね!」


 ベリちゃんはきっと大丈夫だと思うよ。とっても優しい子に育っている。


 優しいからこそ、友達のことも心配しているのがよくわかる。アスちゃんが泳いでいった方角をたまに眺めているのだから。


「ベリちゃん、今晩は私と一緒に料理を作ろうか。ハルトからスパイスの使い方も習っているから、きっと美味しい料理が完成するぞ」


「料理作るの!? あのね、ベリルもパパみたいにココナッツで料理が作りたい! ダメ?」


「じゃあ、ハルトに教わったカレーを作ってみよう。確かココナッツとの相性は良いと言ってたな、今夜はココナッツカレーだ!」


「ココナッツカレー! 今夜はごちそうだね。ベリル、椰子の実とってくるね」


「じゃあ、私は先に台所に行っている。ハルトは海老や貝が採れたら頼む。あまり期待はしてないけどな」


 最近、アスちゃんとベリちゃんが周辺の獲物をとりまくっていたので、近くにはあまりいないかもしれない。それでも、遠くまで行ってとりにいくようなことはしない。バカンス中なのだから、無ければ無いで構わないんだ。別に言い訳とかじゃないんだからね。


 夕飯の準備を各自進めていると、思いの外早くヴイーヴルが戻ってきた。


 幾分かスッキリとした表情に見えるのは気のせいではないだろう。


「まずはベルシャザール王家にて、すぐに詳細を確認をするとのことでした。話はそれからとのことですが、もしもグリーズマン王子をかばう場合は残念ですが、という話はしてきました」


「それはベルシャザール王に?」


「ええ、それから同席していたジョシュア第一王子にもお伝えしています。二人とも頭を抱えていたので、これ以上は揉めるようなことはないでしょう」


 グリーズマン第二王子のような人たちばかりでなくてよかったと思う。僕が会ったベルシャザール王やラシャド王子は話の通じる人だったからこそ、今回の件は戸惑ってしまった部分もあった。


「なんだか、いろいろとありがとう。助かったよヴイーヴル」


「いいのですよ。私もファフニールの件で、ちょっと頭にきていたので、よい憂さ晴らしになりました。ファフニールに手紙をお願いしたいのだけど、ここから発送は可能でしょうか?」


「ケオーラ商会にお願いしておきますね。ハープナには明日には戻るの?」


「そうですね。あまり留守にする訳にもいきませんし、王室からの連絡はハープナに来るはずなのです。どのような返事が届くのか楽しみに待っていようかと思います」


 なるほど、問題ごとを引き受けてくれるらしい。僕らがバカンス中ということにも配慮してくれたのだろう。


「助かったよ。何かお礼をしたいところだけど……」


「いいえ、お礼は今までに十分いただいてますから、今日のはちょっとしたお返しのようなものです」


 どうやら、麦の生産も上がっているようだし、干物の調理器具とかでハープナも潤っているとのこと。リンカスターと同様にハープナの経済も好調なようで何よりだ。


「それじゃあ、せめて夕食を食べてから戻ってよ。今日はベリちゃんもクロエの料理を手伝ってくれているんだ」


「ベリルがですか、それは楽しみですね。では夕食を頂いてから戻ることにしましょう。それまでは、手紙を書きたいので部屋をお借りしても良いですか?」


「もちろん、紙とインクは書斎にあるからそれを使ってよ」


 その後、夕飯の前にケオーラ商会のリーダーさんが報告に訪れてきたのでヴイーヴルのファフニールへの手紙はお願いをしておいた。

 ちなみに、グリーズマン王子はさすがに不味いと感じたようで、すぐに王都へと引き返したとのこと。物資等はビール樽一つぐらいしか手をつけられていないとの報告だった。


「リーダーさんも大変でしたね」


「いえ、私ども商会としては、ハルト様に何も力になれず大変申し訳なく思っております」


「相手が王族では何もできないって。これからも、無理しなくていいからね。ケオーラ商会に求めているのはそういう部分ではないんだから」


「はい、そう言って頂けると助かります」


 商会が貴族階級と揉めると面倒なことになってしまう。僕らやヴイーヴルが矢面に立つ分には自らが火の粉を払えるかなとは思っている。


 それにしても、今回のことでベルシャザール王家も危機感を覚えたことだろう。ドラゴンと共生する街に対する考え方も変わってくるかもしれない。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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