第百九十二話 パーティ登録?1
「一応、話しておこうと思うんだけど、僕たちのパーティにはドラゴンもいるし、フェンリルもいるからね」
「フェンリルはユーリットだろう。自己紹介の時に聞いた。それにしてもドラゴンまでいたのか。不思議な雰囲気を感じていたがそれは驚いたな」
「ちなみに、今はここにはいないけどパーティにいるドラゴンは計二体なんだ」
「ド、ドラゴンが二体だと!? 世界に八体しかいないドラゴンの内、二体がメンバーだと言うのか!」
確かに八体中二体と言われると凄いパーティだな……。それにしても、まさか自分がドラゴンに水泳を教えていたとは思うまい。あと、正確に言うのならニーズヘッグとアンフィスバエナが消えて、ホワイトドラゴンが生まれてるから今は計七体だけどね。
「ま、まさかとは思うが、その二体に黒竜ジルニトラはいないでしょうね……」
「いない、いない。凶暴なドラゴンとは仲間になれないって。ちなみに、ここにいる一体はベリちゃんね」
「う、嘘だー!! こ、こんな小さい子が、ベリルがドラゴンだったの!?」
「ベリルね、ホワイトドラゴンなんだよー」
そう言って、久し振りに真っ白なホワイトドラゴンの姿に戻ってみせたベリちゃんだが、相変わらず可愛らしい羽毛たっぷりのふわふわっぷりである。体はそこまで大きくなってなく、体長は一メートル程度だ。
「ドラゴンは敵だと思っていたけど、可愛いドラゴンもいるのね……」
すかさずベリちゃんを抱っこして、そのふわふわを堪能している。なかなか行動が早いなアスちゃん。ちなみに、可愛いドラゴンはベリちゃんだけだろう。全部のドラゴンを見たわけではないけどもね。
「それから、もう一体のドラゴンに確認しないとパーティ登録はできないからね」
「何でなのよ!」
「いや、だからステータスがわかっちゃうって話したでしょ。アスちゃんがよくても他の人がどうかわからないでしょ」
「むぅ、そういうものか。まぁ、しょうがない。その者の許可を待とうではないか」
意外にゴリ押ししてこないところは、ママの育て方がよかったのだろうか。揉め事は起こしても子育ては上手なママのようだ。
「それじゃあ、パーティ登録はまた今度ということで」
「それでどれくらい待てばいいのよ」
「僕たちが街に戻って、それから確認するとなると……あと二ヶ月ぐらいは先かな」
「長いわ!」
長いと言われても、ヴイーヴルに来てもらうわけにもいかないし、そもそも連絡がとれないのだから……、いや、手紙を送ればいいか。返信を貰えば無事に解決しそうだ。とはいえ、急にアスピドケロンの子供とパーティ組むことになるけどいい? とか聞かれてもヴイーヴルも困るよね。まぁ、気になるならこっちに来るか……。
「しょうがないな。手紙を出すから、十日ぐらい待ってよ。それぐらいならいいでしょ? というか、他に手段がないんだけどね」
「十日か、それぐらいなら我慢しよう。ベリルがドルフィンジャンプを覚える頃には結論が出そうだな」
ベリちゃんにどこまで覚えさせるつもりなんだろう。というか、それはもはや水泳ではない。
次の日の朝、食料搬入のタイミングでケオーラ商会のリーダーさんにヴイーヴル宛の手紙をハープナまで届けてもらうようお願いした。どうやら、一週間もあれば往復可能なようなのでドルフィンジャンプよりも早く返事が届く可能性がありそうだ。
「今日はいつもと違う食料がはいっているのね」
「おっ、アスちゃん、わかるんだね。これはねスパイスというんだよ」
「かなり強烈な匂いがしたわ。それ、毒じゃないわよね?」
スパイスも摂取し過ぎると毒になるのだろうか。まぁ、何事も適度に合わせるのがいいとは思う。薬も多用すると毒になるからね。
「毒じゃないってば。料理に加えることで味に奥深さや香りをつけることができるんだ。今日の昼食は楽しみにしていてよ」
「そうなのね。私はボア肉があれば何もいらないわよ。素材の味が一番なんだから」
どこかのフェンリルさんみたいの発言だな。ユーリットさんもヒト型になってからは、僕たちと同じ料理を楽しんでおり、特に不満は無さそうに思える。味覚って、変身することで変わるものなのかね。あとでユーリットさんに聞いてみよう。
「ベリちゃんとアスちゃんは椰子の実を採ってきてくれるかな?」
「うん!」
「何よ、昼食はジュースだけとか嫌よ」
「ジュースはそのまま二人で飲んじゃっていいよ。欲しいのはココナッツの方だからね」
「この白いの食べるの!? ちょっと止めた方がいいと思うわよ。これあんまり美味しくないもの。私のテンションも大分下がるわね」
「まぁ、完成してからのお楽しみということで!」
僕が作ろうとしているのは、ココナッツミルク鍋だ。せっかくココナッツがあるのだから利用したい。カレーでもよかったんだけど、違う料理にもチャレンジしてみたいのだ。
使う材料は、ココナッツ、ボア肉、麦、コリアンダー、クミン、カルダモン、葉物野菜で煮込んでいく。ココナッツの甘みとスパイスの刺激がハーモニーを作り出す。予想通り、ボア肉との相性もよく溶け出した脂がいい出汁になっている。
「ハルトは、料理が上手なのだな。とても美味しい匂いがする」
「僕というより、スパイスのおかげかな。料理にはやっぱり適度な調味料が必要なんだよ」
「な、なんだかとっても美味しそうな匂いがするわね。マイルドな香りのなかに刺激的な食欲をそそる匂い、人間の作る料理ってすごいのね」
ふっ、スパイス料理をじっくりと味わうがいい。僕が味見をした限りは、なかなかの出来だった。しばらくは、スパイスの研究をしていてもいいかもしれない。食の充実は生活レベルを向上させるのだよ。
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