第百九十一話 パーティメンバー希望
少し寂しそうにしているアスちゃんだけど、ママに対する信頼はとても高いようで、頼んだわけではなかったけど、その凄さを僕に説明してくれる。
「そもそもアスピドケロンは防御能力がとても高いのよ。物理攻撃はもちろん、魔法攻撃もかなりの部分を吸収するのよ。あっ、吸収っていっても弱めるだけで、当たったらそれなりに痛いんだけどね」
「ほうほう、それで攻撃の方はどんな感じなのかな?」
「聞いて驚くなよ。アスピドケロンの最大の攻撃は、やはり防御にあるの。体全体を雷で纏い、触れた者を感電させるのよ。周辺の生物も被害を受けるから迂闊に近寄れないんだけどね」
アスちゃんママが、君を遠ざけた理由の一つがそれなんじゃないだろうか。
「アスピドケロンは自分の体に雷耐性はあるんだよね?」
「少しだけあるわ。だから、サンダーチャージをした時は、自分もちょっと痺れるのよね」
自分の防御能力が高いからって、アホみたいな戦法をとるようだ。どのくらいダメージを受けるのかにもよるけどさ。
「相当防御力が高いんだろうね。甲羅のようなのも正に防御って感じだもんね。アスピドケロンに苦手な攻撃とかないんだろうなぁ……」
「そう思うだろう。だがな、実はアスピドケロンにも弱点はあるのよ。海では圧倒的なパワーとそれなりのスピードがあるけど、残念ながら陸の上ではノロマな亀よ」
「いや、いや、アスピドケロンって陸に上がらないでしょ」
「たまに甲羅干しをしなければならないのよ。あれやると体調もよくなるのよね。実はね、アスピドケロンには誰にも教えていない秘密の島があって、そこでのんびり日光浴をすることがあるの。そのタイミングで襲われたらひとたまりもないわね」
「陸ではノロマな亀だから、襲われ放題だということ?」
「ええ、唯一の弱点ね。まぁ、絶対にバレない秘密の島だから誰にも見つかることはないのだけど」
どうやら陸で襲われるフラグが立ってしまったようだな。いくら秘密の場所といっても、ドラゴンのように空から海を眺めてたらバレバレなんじゃないだろうか。
「ドラゴンみたいに空から眺めたら、バレバレってことはないの?」
「そ、空からね……。た、多分大丈夫だと思う。入口は海の中の洞窟を抜けて、島のど真ん中に出れるようになっているの。大陸からも結構離れてるし、多分見つかることはないと思うわ」
ならいいんだけどね。今はバカンス中なのだ。不吉なことを考えるよりも、リラックスして気分転換をした方がいいだろう。
「そろそろ、お昼にしようか。ボア肉の串焼きバーベキューと、ベリちゃんとアスちゃんが採ってきた貝類をいただこうよ」
「この島は貝類が豊富に採れるし、美味しいジュースもある。私の秘密の島にしてしまってもいいかなとも思っている」
「この辺りの島々は所有者がいるからダメだと思うよ。そもそも、人がいっぱいいるでしょ」
「そこは、アスピドケロンの姿になって周辺を泳いでいれば、怖がってみんないなくなるのではないかなと思っている」
思っているじゃないよ。人に迷惑は掛けないようにしようね。
「そんなことしたら、人間に攻撃されちゃうよ。ポーネリア諸島は貴族が所有している島も多いから、かなり本格的に攻撃されると思う」
「人間ごときが、私を攻撃したところで痛くも痒くもないわ」
「伝説の生物が暴れてるとかだと、僕たちに討伐指令が下りるかもしれない。せっかくベリちゃんの友達になったのに、友達に攻撃されたら嫌でしょ」
「ちょっと待て。何でベリルまで攻撃してくることになっているの!?」
「僕たちはパーティだからね。クロエとユーリットとベリちゃんと僕は同じチームなんだよ」
「わ、私だけ仲間外れじゃないか! その、パーティとやらに私も入れろ」
何でアスちゃんまでパーティメンバーにしなければならないんだ。まぁ、よくわからずに発言してるんだろうけど。
「そんな簡単に言わないでよ。ママに怒られるよ。ママがいいよっていったら考えてもいいけど、人間とパーティを組むなんて反対されると思うな」
「何でママの許可が必要なんだ! 私だって一人前のレディなのよ。もう一人立ちしてるんだからね!」
「そうは言ってもね。僕たちのパーティは特殊なんだ。パーティを組む場合は、お互いのステータスを見せ合うことになる。それでもいいの?」
「あぁ、問題ない。自分のステータスなんて知らないから適当に話を合わせておくぞ」
「アスちゃん、パパの言ってることは本当なんだよ。アスちゃんのステータスがメンバーに知られちゃうけどいいの?」
「うん? つまり測定器みたいなものがあるのか?」
「まぁ、そんなところかな」
「アスちゃんがパーティメンバーになったらね、近くに来たときにわかるの。そうしたらユーリットに頼んで迎えに行ってあげられるかも!」
「どういうことだ? 私の居場所がわかると言ってるように聞こえるのだけど」
「その、なんというか、実際にわかるんだよね」
「人間というのは、面白いものを作れるのね。つまり、私のステータスとベリルのステータスを見比べることもできるのか?」
「そうだね。可能だけど、本当にパーティに加わろうとしてるの? 自分のステータスを見られたら弱点とかも僕たちに知られちゃうかもしれないんだよ」
「人間の分際でステータスで私に勝てるとでも思っているのか?」
そういえば、ベリちゃんがドラゴンってまだ知らないんだっけ? いや、さすがに人ではないことぐらいは分かってるよね?
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