第十九話 ラビットハンター
その後、駆けつけた衛兵にダミアン達パーティーは捕らえられた。
ダミアン以外の3人は3日の禁固刑と罰金。ダミアンは7日と罰金とのことらしい。ギルド内での喧嘩、しかも下位タグ者に対して行ったことはそれなりに重い罰金刑になるそうで万が一払えない場合は鉱山行きというシビアな裁定がくだされる。いくらか知らないけどお金、足りるといいねダミアン。
「それにしても驚いたな。まるでハルトはダミアンの次の攻撃がわかっているような動きをしていなかったか。それが異世界の武術なのか?」
「いやいや、あんなお粗末な武術ないって。ただ運が良かっただけだよ」
そんな話をしていたらギルドマスターのロドヴィックが近づいてきた。
「ハルトと言ったかな。リンカスターのギルドマスターをしているロドヴィックだ。やつらに代わって謝罪させてほしい。本当に申し訳なかった」
「い、いえ、大丈夫です。これからよろしくお願いします」
「あぁ、それとクロエのこともよろしく頼むな」
「もちろんです。友達ですから」
「そうか友達か……。何か頼りたいことがある時は相談してくれ。これでもそれなりの地位にあるし、単純な腕力もあるんでな」
「おぉ、それは頼もしいですね」
「ロドヴィック殿、すぐに領主様から話が入ると思いますが深淵のドラゴン、ニーズヘッグを倒すことが出来ました。怪我か病気をしているようでかなり弱っていたようでなんとか倒せました。ダリウスが戻り次第、深淵にあるドラゴンの巣穴を確認するために向かうことになります」
「ほ、本当か! よかったなクロエ」
「はい」
「巣穴を確認にということは、第二世代を警戒しているということか?」
「子供もしくは卵がある可能性もでしょうけど、ニーズヘッグが死んでいない可能性も含めての調査になるかと思います」
「どういうことだ?」
「実はニーズヘッグを倒した際に、本体が残らずにその場から消え去ったのです」
「なるほどそういうことか」
「ならば俺も深淵への探索に同行しよう」
「ありがとうございます。助かります」
クロエが一瞬こちらを見たが、すぐに返事をしたあたり問題ないということなのだろう。
「あっ、賢者様、買取金額の算定が終わりましたのでお渡し致します」
「あぁ、エミリーありがとう。その、いろいろと迷惑を掛けたな」
「いーえ。ハルトさんも無事でよかったですね」
「はははっ、もう無茶はしません」
「それでは私たちはこれで失礼致します」
何かいろいろあったけど、ようやくこれでレベル上げに向かえる。この世界の常識とか戦い方とか覚えることはまだまだいっぱいありそうだな。
門番のところで木札を返却すると一級市民になったことを驚かれつつも快く歓迎してくれた。今日から僕もリンカスターの一員だ。街に危険が訪れないようしっかりホーンラビットを討伐しようと思う。
「ハルトは魔物の気配に疎いので、ある程度レベルが上がるまでは私がサインを送る。ハルトは私のサインを見て火球で仕留めるのだぞ」
「うん、わかった」
悲しいことに現状では僕にホーンラビットの位置も気配もさっぱりわからない。ここはクロエに助けてもらいながら安全にレベルアップしていこうと思う。
するとクロエから早速サインが出る。あれは止まれとしゃがめのサインだな。前方を注意深く眺めても僕には何の気配も感じられないのだがしばらくすると草むらの中から1匹のホーンラビットが出てきた。クロエからはすぐさまゴーサインが出される。
火球!
左手から撃ち出した火球は見事に首の辺りを抉り小爆発を起こした。
「うむ、お見事!」
初心者魔法使いにしては意外に命中率が高いそうだ。僕的にもワイルドボアのスピードにも対応できていたからこのあたりは問題無さそうだ。
クロエは風を確認しながら次の狩り場所を探っている。狩りの基本は風下からだそうだ。当たり前なことだけど頭からすっかり抜け落ちている。普段の生活で風向きを気にしたことなんてないものね。さて、今のうちに魔物図鑑でもチェックしておこう。
ホーンラビット
HP:7
MP:0
経験値:5
弱いな……。
そして経験値も少ない。同じ火球で倒せるゴブリンやワイルドボアと比べると効率の悪さが何ともいえない。あっ、ワイルドボアは当たり所が悪いと2発必要な場合もあるか。
確か次のレベルアップまでの経験値は500だったからホーンラビット換算なら100匹の討伐が必要になる。クロエがいるから安全とはいえ流石にこれでは先が長すぎる。このままだとギルドでラビットキラーとか呼ばれていじめられそうだ。
「ハルト、何しているのだ。早く来い、見つけたぞ」
「あー、ごめんごめん。ちょっと待ってて」
クロエが見つけたホーンラビットは3匹だった。ひとかたまりになっている時に1発で仕留めたいところだね。
「ハルト、1匹は逃がして巣穴を押さえるぞ」
わ、悪い女がいる!
「な、なんだその目は! い、言っておくが魔物に情けなど一切無用なのだからな。放っておいたら数が増えて人は勿論、作物の被害なども甚大で大変なのだぞ!」
僕が顔に出やすいタイプなのは自覚している。クロエの言う通り魔物に甘い顔をしていては後で取り返しのつかないことを生じる可能性かある。
「わ、わかってるって」
今日の僕はラビットハンター。巣穴ごとバンしてあげよう。
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