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第百八十七話 海獣アスピドケロン1

 ベリちゃんの隣で、朝からボア肉にがっついている女の子。お友達なのかな……。


「ところでベリちゃんは、この子のこと知ってるの?」


「知らないよー。でもねー、朝起きて砂浜に行ったら一緒に遊んでくれたの」


 どうやらここに連れてきた犯人は、ベリちゃんで合っていたようだ。しかし、この島は結構厳重に警備されているはずなので、船で上陸するとかも難しいはず。まさか、原住民的な……わけないか。


 かなり食欲が旺盛なようで、ボア肉のおかわりは五度目を超えてからはもう数えていない。皿から肉が無くなると、愁いを帯びた目で訴えてくるのだが、まるでペットの犬みたいだ。


「この子は言葉が話せないのかな?」

「ベリちゃんは、この子とどんなことして遊んでたのだ?」


「うんとね、浜辺で甘くて美味しいジュースを飲んでたの。ベリルにもちょうだいって言ったら、半分わけてくれたの」


 遊んでいたというより、ジュースをもらっていたようだ。浜辺近くには椰子の実のような南国植物が生息していたので、おそらくココナッツジュースのようなものだろう。あとで、冷やしてみんなで飲んでみよう。


「ベリちゃん、知らない人から食べ物をもらっちゃダメなのだぞ。もらってしまったものはしょうがないが、ちゃんとお礼は言ったの?」


「うん、ママごめんなさい。でもね、とーっても美味しかったの。だからベリルね、パパとママの作る朝ごはんにご招待することにしたの」


 だとしたら、最初に教えてもらいたかったよベリちゃん。用意した朝ごはんを並べていたら普通に食べている女の子がいたからびっくりしたじゃないか。


「それでベリちゃんは、その子とお話できるのかな?」


「この子はね、お口でお話できないんだけど、頭の中で喋ってくれるの」


 頭の中でってことは、ユーリットさんのような念話的なことなのかな。念話が出来るタイプって、常識を超えてヤバいタイプがほとんどな気がするんだよね。もしやとは思うけど、人でない可能性が高い。


「ベリちゃん、その子の種族を聞いてもらえるかな?」


「うん、わかった」


 二人の会話を聞くことはできないのだけど、内容は手に取るようにわかった。

 女の子の方は、おかわりがこないって言っていて、ベリちゃんは種族を教えてって言っている。何となくだけど、種族を教えたらこの肉をくれるのか? 的な会話で終わって、こちらを見ているということで間違いないだろう。


「クロエ、ボア肉のおかわりってまだあったかな?」


「全くしょうがないな。このペースだと食材を追加注文しなければならぬな」


 一昨日、ケオーラ商会から食材が届いたばかりなので、このペースだと三日目の分が足りなくなりそうだ。まぁ、それぐらい散歩がてら小舟で隣の島に行って伝えるだけでいいのだから、何の問題もない。


「この子の種族はね、アスピドケロンっていうんだって。あとね、この肉がどこでとれるのか教えてだって」


「アスピドケロンだと!?」

「アスピドケロンって何だっけ?」

「海に生息する海獣、アスピドケロンだ。ハルトも王都へ向かう定期船から見ただろう」

「あー、あのとんでもないサイズの伝説的な生物だっけか……」


 アスピドケロン、確か亀のような蛇のような姿をした海に生息する大型種。その大きさは定期船のサイズと同じくらいだと言っていたような気がする。


 最近は伝説的な生物とよく会うよね。そもそもこのパーティには賢者、そしてドラゴンにフェンリルもいるわけだし……。まったく、普通なのは僕だけじゃないか。


「たまにね、ジュースを飲みに島に来るんだって。いつもだったら、人に見つからないようにすぐに帰るんだけど、面白そうな気配を感じたから興味が湧いたんだって」


 面白そうって、ベリちゃんかユーリットさんのどちらかだろうな。


「念話ならユーリットさんもお話ができるんじゃないですか?」


「ええ。一応、すでにご挨拶はさせていただきましたよ。まさか、アスピドケロンさんにお会いできるとは思いませんでした」


「そ、そうだったんですね。僕たちとは会話は難しいのかな?」


「緊張しているみたいですね。人とは接触してはいけないと言われて育ったみたいなのです」


 とても、緊張しているような食べっぷりには見えないのだが、話できるなら喋ってもらいたい……。


「次のおかわりで最後だから、それが食べ終わったらすぐに帰るんだよ」


「……っ! ……っ、くっ!」


 あきらかに動揺している。思わず喋りだしそうになるくらいに。もう少し苛めてあげたら、喋りだすかもしれないな。


「えっとですね、私はまだ帰るとは言ってない。帰る時は私が決めると。あと、この肉のことをまだ聞いてない! 隠すつもりか!? とおっしゃってます」


「まぁ、ベリちゃんと仲良くしてくれるなら、そのボア肉をあげてもいいよ。ジュースをくれたらしいしね。それから、その肉は森に住む魔物の肉だから、残念ながら君の行動範囲にはいないと思うんだよね」


 ガーンといった表情で、手足を床につけて落ち込んでしまった。海にいるんだから、魚食べなよ。というか、普段は何を食べてるんだろうね。そもそもボア肉食べて大丈夫なのかな?

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