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第百八十四話 ニュータイプ

 というわけで、三日振りに我が家に戻ってきた。ここは静かでとても落ち着くのだけども、なんだか少しだけさみしい。


 別にわいわいガヤガヤしているのが、好きなわけではないんだけど、たまには孤児院でお兄さんをやるのも悪くはないかな。


「随分とさみしそうな顔をしているのだな」


「えっ、そんな顔してたかな? 小さい子がいっぱいいると大変なんだけど、何というか頼られているのがわかるから、ちょっと嬉しくもなるんだよね」


「私の自慢の弟や妹たちだからな。みんな元気に優しく育ってくれて本当に頼もしい」


 孤児院の子供たちは、自らの役割をきっちりこなすし、何より団結力が強い。例え誰かが何かに失敗したとしても、笑い飛ばしてみんなで手伝うくらいにはできている。


 わがままを言うことが、孤児院の迷惑になると思って、遠慮がちな子が多いのも事実だ。しかしながら、それをカバーするぐらいに年長組のフォローや面倒見の良さが際立つ。


「マリエールさんを中心にまとまっている良い孤児院ですね。彼女がみんなに愛されているから、嫌がるようなことをしないのですよ。あっ、小さい子は別ですよ」


 うん、まぁユーリットさんの言うように、小さい子はマリエールさんの取り合いになる。甘えたい年頃なのだから、しょうがないといえばしょうがない。それでも同年代の子達と比べたら、かなり大人なのかもしれないとは思う。


「それでは、僕たちの旅行について計画を練ろうと思う」


「おー、そういえばポーネリア諸島の島一つを貸しきる構想があったな。本当に行くつもりか?」


「もちろんだよ。これは譲れないね。これでもかと羽を伸ばす旅行にしたいんだ」


「旅行か。何か問題があった時どうするのだ?」


「一応、何も起きないとは思いたいんだけど、ヴイーヴルにもしもの場合は呼びに来てほしいと伝えておいた」


「なるほど、確かにドラゴンのスピードならすぐに連絡がとれるな」


「あと、ヴイーヴルとはパーティ登録もしておいた。これは僕たちの場所をすぐに把握出来るようにね」


「あの、ハルトさん、パーティ登録というのは?」


 僕の冒険の書について、ユーリットさんにも話をしようと思って、みんなの前でこの話をすることにした。


「なるほど、ハルトさんは異世界から来られた旅人というわけですか。様々な知識、交渉力など、どこかで勉強された貴族の方かと思っていました」


「僕が貴族とか笑っちゃうよ。ないない。それで、ユーリットさんもよかったら僕たちとパーティ登録をしてもらいたいと思っているんだけど、どうかな?」


「自分のステータスを確認できる『冒険の書』ですか。討伐した経験値は平等に分配され、もしも離れてしまっても、マップ機能ですぐに発見も出来ると」


「ステータス情報は共有されてしまいます。ですから、ユーリットさんのステータスも僕たちに見えてしまうことになります。逆に僕たちのステータスも見えますけどね」


 ユーリットさんは、少し考えるような素振りをしながらも、何てことないように頷いてくれた。


「構いませんよ。それよりも、ヴイーヴルさんがステータスを私に見られてもよいと思われたことが驚きました」


「そうだね。ヴイーヴルは、おそらくずっと先のことも考えて了承してくれたんだと思う。ユーリットさんとはこれから先、隣同士で生きていくことになるわけだからね」


「そうだな。私やハルトがいつか死んでしまっても、隣同士の関係はずっと続く。このステータス開示は、ヴイーヴルなりに考えてのことなのだろう」


「このような機会は、私たちにとってもよかったのかもしれません。今後、交流を持つに於いても信頼関係を構築しやすくなりました」


 僕たちがいなくなって、何百年か後とかにドラゴンとフェンリルの怪獣大戦争とか起こったら悲しいし、出来ることならば二人してたまにお茶でも飲みながら、たまには僕たちのことでも思い出してもらえたら嬉しい。


「ご安心ください。縄張りというのは一つ大きな問題でして、私たちの種族が増えない要因の一つでもあります。今、この世界にドラゴンの影響から外れる縄張りを手に入れるということは、それこそ死ぬつもりで戦わなければならなくなりますからね」


 やはり、怪獣大戦争になるのか。ドラゴンとかフェンリルの縄張りの意識というのは僕たちが思っている以上に強いのかもしれない。リントヴルムのようなタイプはニュータイプというか変人の類なんだろうな。シルミーやユーリットさんと仲が良かったしフェンリルに対して縄張り意識が皆無だったのだから。あれっ、そうなるとベリちゃんって同じニュータイプになるのか!? ユーリットさん的にはどうなのだろう。


「ユーリットさん、縄張りについてだけど、フェンリル的には自分の縄張りにドラゴンがいることに関して何とも思わないの?」


「それはベリルちゃんのことですね。それはやっぱり相手によりますよ。ドラゴンによっては自分の縄張りに入られることを嫌うタイプもいます。ですから、その地にいるドラゴンが気にしなければノースポリアだってリンカスターだっていられるのです」


「えーっと、ベリちゃんはそれでいいってことなのかな?」


 リンカスターを紹介しておいて今更だけどそれで大丈夫なのかベリちゃんに聞いてみた。


「ベリルね、ユーリットのこと大好きだよ」


 うん、ベリちゃんとってもいい子に育っているなぁ。どうやら、ベリちゃんもリントヴルム系のニュータイプであることが判明した。

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