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第百八十一話 マリエール1

 どうやら知らぬ内に、大量にお土産を買っていたようで、数種類の果物に王都名物のガレットなどを台車に乗せて孤児院まで運んでいる。


 ベネットは、急なことに心ここに在らずといった雰囲気で台車を押している。多分、どうやってマリエールをデートに誘おうか考えているのだろう。


「クロエ、マリエールってモテそうな感じがするんだけど、そういう話とかなかったの?」


「マリエールには、孤児院がセットでついてきてしまうのだ。なので、そこに寛容でなければ話しにならない。良い人が見つからないのは、そのあたりも要因なのだろう」


 孤児院の面倒を見るということは、生活が朝から晚まで子供たちを中心に過ごすことになる。マリエールさんの場合、さらにビール工場で仕事までしているわけで、恋愛なんてしている時間はゼロといっていい。あれっ、半分は僕のせいでもあるのか……。


「ベネットは、そのあたりの理解はバッチリな訳だから、そうなるとマリエールの気持ち次第になるのか」


「二人とも付き合いが長いだけに、どうなるのか想像もできないのだ」


 ビール工場の方も人手が増えてきて、少しは楽になってきたとは思う。孤児院の子たちも優先してビール工場のお手伝いができるようになっているし、タイミングとしては悪くはない。そろそろ、自分のことを考えてもいいはずだ。


「あらっクロエ、戻ってたのね。それから……そちらの方は?」


「今日戻って来たのだ。みんなにお土産を買ってきたので渡そうと思ってな。それから、ユーリットさんを紹介しよう。私たちのパーティの一員になったのだ」


「ユーリットさんね。クロエの幼馴染のマリエールよ、よろしくね。もう少ししたら、みんな工場から戻ってくるわ。賢茶でも出すからゆっくりしていってよ」


「それじゃあ、みんなが戻って来るまで待ってるわ」


 年少組の面倒を交替で見ながら、他のメンバーは工場で働いているようだ。今日の年少組担当がマリエールさんだったらしい。ちょうどよかった。


「それにしても、お土産大量に買ってきてくれたのね。ベネットも悪かったわね、運ぶの手伝ってもらったみたいで」


「ううん。僕はこう見えて支店長だから、仕事の融通がききやすいんだ。それにマリエールの顔も見たかったからね」


「私の顔は昨日も見てるじゃない。ベネットったら変なことを言うのね」


 ベネット、昨日も孤児院へお手伝いに来ていたのか。商会の仕事、ちゃんとやっているんだろうね。


「みんなが来てくれたなら悪いけど、子供達を見てもらってもいいかな。その間に夕飯の買い物に行ってきたいの」


「うん、大丈夫だよ。あっ、荷物持ちにベネットを連れていくといいよ」


「ちょっと、あなた達。ベネットをいいように使いすぎよ。まぁ出来れば一緒に来てもらいたいんだけどね。ベネット時間平気?」


「う、うん。もちろんだよ」


「いつも助かるわ。じゃあ、クロエたちはみんなの面倒よろしくね。はい、賢茶よ」


「うむ、まかせておけ」


「みんなも夕食までいるでしょ?」


「いいのか?」


「当たり前じゃない。みんなも久し振りだからいろんな話を聞かせてあげて。王都とかサフィーニア公国とか興味津々なんだから」


 この世界では気軽に旅行とかできないため、行ったことがない場所や獣人達の国の話はみんな気になる話題なのだろう。小さい子達からしたら、別の世界のおとぎ話のように受けとられるのかもしれない。


 そうして、マリエールとベネットは二人で買い物へと出ていった。慣れているのか、台所にあった買い物袋はベネットが担いで出ていっている。


「意外にお似合いなのではないか」

「うん、僕もそう思ったよ。うまくいってほしいな」

「私の幻術で何かお手伝いしましょうか?」


「えっ?」「ど、どんなことができるのだ?」


「そうですねぇ。ベネットさんと言いましたか。彼を見ると、何だかカッコよく見えるようにできます」


「それはどうなのだろうな……」

「いや、何もしないよりはプラスになるんじゃない?」


「うーん、ユーリット、試しにその幻術をパパにかけてみてー」


 どうやらベリちゃんが幻術に興味を持ちはじめたようだ。しばらくは二人とも帰って来ないだろうから試してみるのもありかな。


「それじゃあ、お願いしてみようかな」


「意外とすんなり幻術を受け入れてしまうのですね」


「さっき、ギルドで体験はしたけど、僕自身が経験したわけではないからね。クロエやベリちゃんに、しっかり判断してもらうよ」


「それでは幻術をかけますよ」


 僕自身が何かをされている感覚はない。どちらかというと、周囲の人間に対して影響を与える術なのだろうか。


「もう、幻術ってかかってるの。どうクロエ?」


「うむ、そうだな。確かにいつもよりキリッとしていて、カッコよく見えないこともない」

「うん、パパはカッコいいよー」


 身内贔屓かもしれない。効果はそれほどでもないのか……。それでも、何も無いよりはいいはずだと思いたい。


「私が言うのも何ですが、すでに愛している人を見ても気持ちは変わらないので、そこまでの効果はないのかもしれません」


 そういうことらしい。良かったのか、悪かったのかちょっと微妙だけど、気持ち的には嬉しい。これでベネットの後押しが少しはできそうだ。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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