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第百七十九話 ユーリットの秘密1

「あらあら、どうしたらよいのでしょうね」


 若干困ったような表情で僕たちの方を見てくるのだけど、ロドヴィックさんに本当のことを告げるわけにもいかない。


 今更ながら、無難にシルバータグ相当だと伝えておけばよかったとも思うんだけど、ユーリットさんも上手く演技はしてくれると思う。


「よし、じゃあ俺と一対一で戦ってもらう。魔法使いと言ったな。近接戦闘は苦手か?」


「それなりにはやれますから、ドーンときてくださって大丈夫ですよ」


「前衛職のゴールドタグである俺に、遠慮なくこいというのか。自信たっぷりじゃねぇーかよ」


 ロドヴィックさんのこめかみがピクピクと動いている。そんな顔で僕を見ないでもらいたい。相当、頭に血が上ってしまっているようだ。


「ちなみに、あなたを倒せば終わりになりますか? 私たち、このあと孤児院へ行かなければならないのです」


「随分と舐められているのか、常識がないのかわからねぇが……まぁ、いい。あっさり、俺を倒せるよつなら何の問題もない。すぐにゴールドタグを用意しよう」


 普通に考えて、近接戦闘ありで前衛職と魔法使いが戦うとなると、圧倒的に前衛職が有利である。通常、魔法使いは前衛職が敵を止めている間に魔法を撃つからだ。


「それじゃあ、はじめましょうか。先手は譲りますよ」


「このやろう、いい度胸じゃねぇか。速攻で終わらせてやろう」


 ロドヴィックさんが、本気のスピードでユーリットさんの間合いに一気に踏み込む。本気だ、最速で剣を叩きつけようとしている。


 しかしながら、ロドヴィックさんの振るう剣をスウェーでかわすと、あっさり掌底打ちで握っている剣を遠くまで飛ばしてしまった。


「なっ! 嘘だろっ」


 唖然とするロドヴィックさんに対して、力比べをする構えで両手を突き出すユーリットさん。もう戦い方がモンクにしか見えない。


「ちっ、やってやろうじゃねぇか」


 ユーリットさんの挑発に乗って手を組むようにして力比べをはじめる二人。ロドヴィックさんも本気で力をこめている。


「ゴールドタグの力は大体把握できましたわ。それでは、そろそろ終わらせましょうか」


 ユーリットさん、ゴールドタグの魔法使いはそんな力ありませんからね。もう、今さら何を言ってもムダだろう。言い訳を考えておかないと……。


「ふっ、まだ俺は本気を出してない」


 強がりもいいところだろう。腕がプルプルしているよロドヴィックさん。


「えいっ!」


 ユーリットさんが、一瞬で懐に入ると腰を捻り上げるようにして、綺麗な一本背負いを決めてみせた。


 ロドヴィックさんからしてみれば、何が起こったのかもわからずに、地面に倒されていたことだろう。


「何とか勝ててよかったわ。これですぐに孤児院へ向かえますね」


「ユーリット、カッコいい!」

「まぁ、ありがとうベリちゃん」


 横を見るとクロエが頭を抱えていた。もちろん、僕も同じ気持ちである。


「ちょっと待てー! 魔法使いに、そんなパワーがあって堪るか。ハルト、クロエ、そいつは一体何者だ?」


 倒れた状態から上半身だけ体を起こしたロドヴィックさんは、納得がいかないと言わんばかりに大きな声を上げた。


「全くロドヴィックさん、魔法使いだからって相手を舐めすぎましたね。隙ありってやつですか」

「少し体がなまっていたのだろう。たまには討伐に出た方がいいと思うぞ」


「いや、いや、いや。見てただろう。がっつり力比べで俺負けたんだけど! おかしいだろう。あいつ、本当に魔法使いなんだよな?」


「えっ、魔法使いでしたっけ? ゴールドタグ相当ですから、モンクだったかもしれませんね」

「そ、そうだな。さすがはユーリットさんだな」

「うん、ユーリットすごかったー」


「おい、おい、まさか、本当に上級職だというのか? いや、でも力は間違いなく本物だ……。お前ら、ちゃんと説明しやがれ!」


「そうは言われてもですね、僕たちもユーリットさんの力はよくわかってなかったんです。強いというのは知ってはいたんですけど、どのぐらいの強さかはわかってなくて」


「強さはわかったのだからいいではないか」


 ユーリットさんのレベルが、ちょっと気になる。そういえば、ベリちゃんのレベルが3で、ヴイーヴルがレベル9であることを考えると、どのように表示されるのか不安になる。もう少し考えてから登録すればよかったかな……。


 あの強さで、レベル一桁とかで表示されたら意味がわからなすぎる。というか、ロドヴィックさんなら人間ではないと、気づかれてしまうかもしれない。先にレベルを聞いておくべきだったな……。


「それで、ユーリットさんはレベルいくつなんだよ?」


「私のレベルですか? ちなみにですけど、上級職のレベルっていくつからなのでしょう?」


「レベル四十からだ。まさか、本当に上級職だとでもいうつもりか?」


「そうですねぇ。じゃあ、レベル四十で」


「じゃあ、じゃねぇよ。いや、でもマジか? とりあえず、この水晶に手をかざしてみてくれ」


「こうですか?」


「レ、レベル四十のモンク。本当に上級職じゃねぇかよ!」


 ユーリットさん、よくわからないけどレベル四十のモンクだったようだ。本当はフェンリルのお母さんなんだけどね。

 何か裏技があるのだろうけど、あとで教えてもらうことにしよう。

続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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