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第百七十七話 領主様の判断

 久し振りのリンカスターは、リンカスタービール推しが強烈に進んでいるようで、街の至る所でリンカスタービールの文字が躍っている。


 僕も少しはこの世界の文字に慣れてきたようで、飲食店や屋台でリンカスタービールの文字が書かれているのがわかってちょっと嬉しい。


 門番の方から、ベルナールさんがお待ちであることを聞いている。僕たちが到着したことを知らせに行ってくれているので、すぐにお会いすることができそうだ。


「とても活気のある街ですね。ベルシャザールと比べると規模は小さいようですが、ノースポリアとは比べるまでもありませんね」


「リンカスターは、ハルトとクロエのお陰で急激に発展を遂げようとしていますからね。ハープナも一緒についていこうと必死なのですよ」


「少し前までは、ハープナの方が豊かな街だったのに、ちょっと悔しいわ」


「ニーズヘッグの脅威がなくなり、新しい特産物で人手が足りていない。王都からは、かなりの人手が流入していると聞いてるわ。ハルトにはハープナの特産品も何か考えてもらわないとならないわね」


「発展途上の街というのは活気があっていいものですね」


「あとで、ベリルが街を案内するね! 美味しいお店とかいっぱいあるんだよー」


「まぁ、それは楽しみですね。では、あとでお願いしようかしら」


 中心の広場を抜けると、間もなく領主様の館が見えてくる。さて、ベルナールさんの判断はどうなのだろうか。


「お待ちしておりました。領主様がお待ちしておりますので、応接室までご案内いたします」


 入口には既に執事の方が待機しており、僕たちをすぐに案内してくれた。扉をノックすると、すぐに「どうぞ」との返事があった。


「ただいま戻りました」


「うん、おかえりなさい。大変な旅だったと思うけど、君たちには驚かされてばかりだよ。王様からの手紙は受け取っているよ。ドラゴンの次はフェンリルですか」


「続けざまに、いろいろとご面倒お掛けします」


「それから、クロエさんの移動制限解除の件ね。こちらに関してはフェンリルのユーリットさんが一緒に同行することとあるね。私の方からは、ベリルちゃんの正体がバレなければという前提条件をつけさせてもらうぐらいかな」


「はい、ですね。ユーリットさんについては、信じられないということではないのですが、戦闘力の観点から言うとドラゴンと同等と言われておりますので……」


「それで、君たちはどう考えているのかな?」


 ベルナールさんはアリエスとヴイーヴルを見てそう話しかけた。近隣を縄張りにしているヴイーヴルの意見を聞きたいということなのだろう。


「ユーリットさんから邪悪な気配を感じません。私は良き隣人として親好を結べればと思っておりますよ」


「なるほど、良き隣人としてですか」


「ええ。ヒト型になれるのですから、街に住んでもらうのもありかと思います」


「街にですか……。民への隠し事がまた増えてしまう。しかし、深淵にフェンリルがいると知られたら、せっかく集まって来ている民が激減してしまうかもしれないし……」


 街の活性化が進むなかで水を差すようなことは発表したくないものだろう。邪悪な魔物ならまだしも、そうではないとお墨付きをもらってるわけで、つまり答えは見えていた。


「うーん。既にドラゴンが街にいるのですから、フェンリルが一体増えたところで、変わらないというものでしょう……。はぁ、頭が痛い」


「よいのですか?」


「君たちもそれを望んでいるのでしょう。構いませんよ」


「それでは、ベルナールさんに良い話をしましょう。実は、サフィーニア公国と貿易を行うことになります」


「スパイスですか!?」


「スパイスはもちろん、コメと呼ばれる作物もです。こちらは、麦と同様に主食になりうるものです。その窓口をベルナールさんでとりまとめください」


「いいのですか? スパイスですよ! 王都から少量しか入ってこないスパイスが、直接手に入るのですか!?」


「あ、あとコメもですよ」


「コメというのは聞いたことがありませんが、ハルト君がすすめるということは期待していいのですね」


「はい、もちろんです。ケオーラ商会が運搬を行いますので、入荷した積み荷に関してはお任せします。また、サフィーニア公国へは干物とリンカスタービールを運ばせます」


「ハルト、ちょっと待ちなさい。ハープナも何か間にかませなさい。コメはハープナで作れないの?」


「作れないことはないと思うけど、時間も人手も、あとお金もかかると思うよ」


「それでも構わないわ。作り方を教えなさい。こういうのは取り組むスピードが大事なのよ」


 稲の作り方とか知らないよ。こういう場合は、ジュリアに頼むしかないかな。稲の成長から収穫までを観察してもらって伝えてもらおうか。


「僕もちゃんとした作り方を知らないんだよ。サフィーニアにいるジュリアにお願いして栽培方法を教えてもらおうか」


「ちょっとハルト、それをサフィーニアに伝えてしまったら嫌がられないかしら」


「うーん。サフィーニアには品質で勝てないと思うから、高級品と廉価品で差別化ができないかなとか考えている」


「あらっ、ハープナで良質な作物が出来ないことが前提になっているのが許せないわね」


「い、いや、向こうは作物作りのプロがいるからさ……」


 妖精さんがいるとは口が裂けても言えない。

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