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第百七十五話 帰還1

 その後の交渉については、王家とニーナ様との間で行われることになった。僕たちはあくまでも契約の信頼性を確認するまで。それぞれの考えもあるので、うまく調整されていくことを祈るばかりだ。


 僕たちからしてみれば、揉めないでもらいたいなというぐらいで、あとは本当好きにやってもらいたい。頑張れ王様、頑張れニーナ様とシルミー、そして、リントヴルムには静かな日常を勝ち取ってもらいたい。



「これが海というものなのですね。陸が見えないというのがちょっと怖いですが、とても新鮮な気分です。やはり、これが旅の醍醐味というものなのでしょうか」


 僕たちは、解放感に浸っているフェンリルのユーリットさんと一緒に、カイラルへ戻る船上にいる。


「海上は少し冷えますよ。季節もこれから寒くなってきますしね」


「私は元々、北の方にいたので寒さは得意なのです。これぐらいは涼しい感じですよ」


 鼻をヒクヒクと海の匂いを感じながら、なんだかとても旅を満喫しているようだ。


 これからのことについては、リンカスターに戻ってベルナールさんと相談することになる。もちろん、近隣を縄張りにしているヴイーヴルも同席する予定で手紙を送っている。仲良くしてもらえるといいのだけど。


「カイラルで、ヴイーヴルと合流するかもしれません」


「宝石のドラゴンですね。ハープナで共生の道を進んでいるのでしたね」


 ユーリットさんはこの穏やかな性格なので、ヴイーヴルとも揉めるようなことはないと思う。少なくとも、リントヴルム、そしてベリちゃんとも仲良くしているしね。


「ユーリット、あっちにネコさんいるから一緒に行こ」


「ベリちゃんは本当にネコが好きなのね。じゃあ船員さんから、おやつをもらってから行きましょうか」


「うん! ママ、ちょっとユーリットと行ってくるね」


「もう寒いから、上着を着てからじゃないとね」


「うん、わかった。ユーリット、ベリル上着とってくるから、おやつ貰っておいてね」


「はい。わかりましたよー」


 子育てを終えたユーリットに、また子育ての手伝いをさせているようで、なんだか申し訳ない。しかし、ドラゴンと一緒にネコにおやつをあげる狼とか、情報が多すぎて混乱するよね。


「ごめんなさいね、ユーリット。ベリちゃんがすっかり懐いてしまいましたね」


「いいのよ。私もベリちゃんのこと大好きですから。それにね、シルミーと離れたさみしさが紛れるから、とても助かっているのよ」


「そうですよね……」


 一年足らずで、我が子と別れなければならないというのも厳しい世界だ。


「あの子にはニーナとリントヴルムもいるので安心しているわ。私も早く新しい生活になれないとね」


「ひょっとしたら、ヒトの姿でいることにも慣れないといけませんからね」


 ベルナールさんからお許しが出れば、リンカスターで暮らすことも視野にいれているのだ。


「ユーリットさんが、なんだか楽しそうで安心しました」


「こう言っては不謹慎なのですが、新しい環境というのはわくわくするものですよ。ハルトさんとクロエさんには申し訳ないのですけど」


「まぁ、そこは気にしないでください。ユーリットさんが一緒だとベリちゃんも喜んでますし、何より移動が楽じゃないですか!」


 馬車での移動も慣れてはきたけど、フェンリルでの移動はスピード、乗り心地ともに最高だった。カイラルからリンカスターぐらいまでなら、数十分で到着してしまうだろう。ヴイーヴルのドラゴン飛行も速いけど、移動にジェットコースターは求めていないのだ。安全な新幹線で十分なのだから。


「そう言ってもらえると嬉しいわ」



 カイラルの港に到着すると、ヴイーヴルとアリエス、ローランドさんがお迎えに来てくれていた。久し振りの再会に、なんとなく地元に戻って来た感がしてくる。


「クロエ、久し振りね。元気そうで何よりだわ。ハルトも相変わらずボケッとした表情ね。そちらが、手紙に書いてあった狼さんかしら?」


 相変わらずのボケっとした表情で悪かったな。アリエスもいつも通りなようだ。


「あっ、紹介するね。こちらが、そのユーリットさんです」


「はじめまして、ユーリットと申します。皆様にはこれからお世話になります」


「ええ、こちらこそよろしくお願いしますね」


「あー、ヴイーヴルお姉ちゃんだぁー」


「あら、ベリル。また少し大きくなったかしらね」


 人の姿をしているが、微妙に成長をしているようだ。いつも一緒にいるから気づかないこともある。そういえば、服のサイズが少しきつくなってきているかもしれない。


「街に戻ったら新しい服を買わないとならないかな」

「そうだな。でも子供服はなかなか売っていないのだ」


 どうやら、アストラルでは子供服は古着か親の服を裁断したり調整して着せることがほとんどらしい。


「ハルト君、ローランドはそんなこともあろうかと、秋冬物のベリル様の可愛らしい服を幾つか用意して参りました」


「ローランドったら、戻ってきてからすぐに服飾職人を呼び出して、デザインを始めたのよ」


 若干一名、一緒にいてもその変化を見逃さなかった変態がいたようだ。助かっているので、面と向かって気持ち悪いとも言えないのだが、今後も注意深く見守っていきたい。


「ローランドさんありがとうございます。ベリちゃんもお礼を言わないとね」


「うん、ローランドありがとー」


「な、なんと。ベリル様から感謝されるとはローランド感激にございます」

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