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第百七十四話 王家の決断

「ほう。つまり、ラシャドにノースポリアへ行けと言っているのか」


 ベルシャザール王がちょっと怒っている。


 まぁ、王様に指示できる人間なんて限られているし、政治的なことに踏み込まれるのは嫌がられるだろう。


「ベルシャザール王、そうしろと言っている訳ではございません。ニーナ様の希望を叶えつつ、ラシャド王子との結婚をスムーズに進めるためにはということでありまして」


「同じであろう。何が違う」


「ニーナ様は、私たちにもう諦めるのはやめたいと言っておりました。失礼ですが、王様は賢者のことをどう思われておりますか?」


「生まれもった運命。強大な力を有するが故に、ドラゴンから街を守る者。だからこそ、大いなる敬意と尊敬を集めているのであろう」


「確かにそういった賢者もおられるでしょう。しかし、若い頃の賢者は、レベルを上げる過程で様々な恨みを買い、様々なものを諦めて生きています」


 うーん、クロエのことを思いながら、何故かニーナ様のフォローをしてしまっている自分がいる。


 ちなみに、ニーナ様は話し合いは任せると言って庭でシルミーと待機している。自分のことなんだから、もう少し頑張ってほしい。


「そういった話も聞いたことはあるが、極一部での話であろう」


「それは表立って出ていないだけでしょう。真正面から賢者に喧嘩を売る者はおりませんからね」


 リンカスターでも冒険者の一部は、あからさまな態度だったけど、住民となると隠れて行っている者も見受けられた。


「あなた、私はニーナちゃんの気持ちを優先してあげてもいいと思うの。ノースポリアにだって本当は住みたくないはずよ」


「そ、そうなのか?」


「ニーナちゃん、この半年近く街で生活をしていないのよ。きっと、ノースポリアにだって自分の居場所がないのだわ」


「むむっ、しかしこれは私の一存で決められるものでもない。領主を変えるとなると、それなりに根回しも必要になるのだ」


「別にすぐにどうこうという話ではないわ。来年の結婚までに調整すればいいのですから」


「わかった。この件については、その方向で話を進めよう。して、リントヴルムとフェンリルについてはどうだったのだ?」


「どちらも信用に足りると判断しました。また、リントヴルムは代替わりをしており、人間を襲ったことすらありません」


 一応、流れでリントヴルムも静かな暮らしを求めていることを追加で伝えた。


「なるほど代替わりか。フェンリルはどうなのだ?」


「フェンリルに関しては、少し相談がございます。実は、成体になると同じ縄張りにはいられないらしく、母親の方が新しい地を探しております」


 更に、三者間契約を母親からシルミーに変更しなければならないことを説明した。


「フェンリルを受け入れる領地であるか……」


「そのフェンリルですが、王様にご紹介してもよろしいでしょうか?」


「ここに来ておるのか!?」


「実はフェンリルは成体になると、ヒトの姿になれるそうなのです」


 扉が開かれると、二十代半ばぐらいの美しい女性が入ってきた。僕も驚いたんだけど、シルミーママとてもモテそうだ。


「はじめまして、シルミーの母で名前は、ユーリット・アリアトロ・ウォルフと申します。ユーリットでも、ユリアでもお好きなようにお呼びください。もちろんシルミーママでもいいですよ」


 そしてシルミーママ、名前あったのか。


「そなたがフェンリルなのか……」


「元の姿に戻ってみせましょうか?」


「いや、信じよう。嘘をつく理由がない。それにしても、土地の紹介か……」


「ハルトにドラゴンのいない土地を紹介してほしいとお願いをさせてもらいました。この姿でもずっといられますから街でも構いませんよ」


「王様、僕はドラゴンの居なくなったリンカスターの深淵とサフィーニア公国はどうかと思っていたのですが……」


「なるほどな。でも、フェンリルにも賢者をつけないと不味くないか? 伝説の生物という点でいうとその扱いはドラゴンと一緒であろう」


 確かに王様のおっしゃる通りかもしれない。そういう意味からすると、戦闘能力のないサフィーニア公国の賢者に任せるわけにはいかないかも。


「次から次へと頭の痛くなる話ばかりだな。ユーリット殿のことはリンカスターのベルナールと相談しよう。さすがに最初からサフィーニアに頼るわけにもいくまい」


「リンカスターですか。それなら、みなさんとご一緒できそうですね」


「ユーリット殿、私の判断としては深淵に住むのではなく、クロエ殿と行動を共にしてもらいたいと思っている」


「それは何故でしょう?」


「我々にとっては、ドラゴンもフェンリルも手に負えない脅威という点では同じなのです」


「つまり、僕たちと一緒に行動することで安全を担保するということですか」


「うむ、クロエ殿の移動制限は確かに解除する。しかし、その移動にはユリア殿も同行してもらいたい」


「そうなると、他のドラゴンのいる土地には行けないということになりますね。ユーリットさんは地竜バラウールから攻撃を受けてます」


「フェンリルもドラゴンの縄張りには入れないということか……。クロエ殿、すまないがそれでも構わないか?」


「他に方法がなさそうですしね。私たちも、凶暴なドラゴンのいる地へ行くつもりはありません。それで結構でございます」


「なんだか、申し訳ないわ。他に良い案がありましたら、いつでもお話しくださいね」

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