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第百七十二話 それぞれの役割

「なんだこのロック鳥は! めっちゃ旨い。旨すぎる! おかわりよ」

「丸焼きもう食べれねぇよ! どうしてくれるんだよ。俺もうこの粉がないと、生きていけねぇ体にされちまったよ!」


 ドラゴンって、やっぱり美食家が多いのかもしれない。食に対しては結構しっかり取り組むタイプが多い気がしないでもない。ニーズヘッグもワイルドボアの脂大好きだったしね。


(どうもそのスパイスという粉の香りが強烈過ぎて私たちにはキツイわ)


 どうやらフェンリル一家にとっては香りがキツすぎるようだ。鼻が良すぎるのも善し悪しなのかもしれないね。シルミーも素材の味を楽しむタイプのようだ。ターメリックの量が多すぎたのかもしれない。


「残念だな……。次はもう少し、香りを抑えたスパイスの組み合わせでチャレンジさせてよ」


(そうですね。楽しみにしておりますね)


「ベリちゃん、美味しい?」


「うん、ママのやつは少し辛いけど、こっちのは辛くないからいっぱい食べれるの」


 少しだけクロエから大人用ターメリックチキンをいただいたようだが、やはりトウガラシ抜きの方が好みのようだ。分けて作っておいてよかった。


「おいっ、ニーナ。ロック鳥が足りねぇーぞ! はやく獲って来いよ」

「リントヴルムの癖に食べすぎ。もう少し遠慮したらどうだ」

「な、なんだと!?」

「ちょっと待て。シルミーのロック鳥にスパイスを塗れば問題がすべて解決する」


 骨ごとボリボリと素材の味を楽しんでいたシルミーは、身の危険を感じたのかロック鳥をくわえたまま、ママの後ろに隠れていった。


「くっ、逃げられた……」


(まったく、はしたない。私の分を一羽渡しますからそれで最後にするのですよ)


「シルミーママは優しいから好き。おいっ、ハルト。早く焼き上げるのだ」


「はいはい。喜んでもらえて何よりです」


 


(それで、さっきの話たけど二人の意見を聞きたいわ)


「シルミーと離れるのは嫌だ。シルミーと一緒にいればベルシャザールからノースポリアまであっという間。問題ない」


「シルミーはどう思ってるのかな?」


(ちょっと待ってね。今聞いてみるわ。……うん、ニーナのことは好き。でも自分が人間の世界で生きていくことはきっと難しい)


「大丈夫だシルミー。何でそんなことを言うんだ」


(違うの。ニーナ、あなたのことを思ってのことでもあるの。この娘は、自分が側にいることでニーナに迷惑が掛かることが嫌なの)


「迷惑なんて掛からない! 私と一緒に来いシルミー」


 しかし、シルミーは横を向いて顔を背けてしまった。シルミーだって仲良くなったニーナと一緒にいたいのだろう。


 でも、契約の内容的にリントヴルム、ニーナどちらの味方になってはいけないということを理解したのだろう。そして、自分がニーナの近くにいるためには、契約を自分に変更する必要があることも。


「シルミー!!」


「……なぁ、国王に聞いてみろよ。ニーナが言うように、王都からここまで三十分ぐらいなんだろ?」


「リントヴルムが契約を守らなかった場合、三十分もあればノースポリアは壊滅するでしょう。聞いてもいいですが、さすがに無理がありますよ」


「だって、あれ可哀想だろう」


 ニーナがシルミーを睨みながら目を赤くしている。


「そう言われてもね……。僕もシルミーがノースポリアに居なければ、街を守るという担保を得られないと思うんだ」


「つまり、ここにも住めないということか……」


「ノースポリアの街近くにいるべきでしょうね。といっても、フェンリルが街の近くに住むことを了承してもらわなければならないという新たな問題まで出てくるわけでして……」


「シルミー! こっちを向いて」


「この契約って失敗だったんじゃねぇのか……」


(ハルト、何か良い方法はないのでしょうか?)


 正直言って、何かを優先すると何かを失わなければならない。今回の場合だと、王室からすればニーナ様が嫁ぐことが最優先になるだろう。そうなると、賢者の役割を解除しなければならない。


 つまり、共生の道もNGとなる。賢者の役割を解除するということは、リントヴルムを討伐するか、この三者間契約を活かすしか方法がない。


 それに、リントヴルムを討伐するのは難しい。僕の魂浄化(プリフィーソウル)が効かない優しいドラゴンなのだから。つまり……必然と答えは一つになるわけで。


「この三者間契約を活かすことでしか、ニーナ様がラシャド王子と結婚する道がない。そして、契約者をシルミーに変更しなければニーナ様の近くにはいられないんだ」


「何で契約が優先になるんだよ?」


「ドラゴンがいる地には、賢者がいなければならない。共生する場合でも賢者はその地を動けない。結婚してベルシャザールなんていけるわけがない」


「そ、そうか。じゃあ、それしか方法がねぇーんだな」


「リントヴルムを討伐すれば、賢者が居なくても大丈夫にはなるけどね」


「いや、いや、いや、お前バカだろ」


「冗談だよ。それで、判断はニーナ様とシルミーにしてもらわないとならないんだ」

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