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第百七十一話 ニーナとシルミー

「まぁ、いい。ニーナよりは、お前の方が話がしやすい。お前達からは嫌な感じはしないから、俺も一応は信じよう」


「ありがとうございます」


「それにしても、普通は人間ってよ、もっとビビるもんなんじゃねーのか? 俺こうみえてもドラゴンなんだけどな……」


「普通の人はそうだと思いますが、僕たちも、そこそこドラゴンを見てきてますからね。いろんなドラゴンがいるし、それぞれ性格が違うというのも理解しています」


「そうか……。おっ、ニーナとシルミーが来たみてぇだな」


 洞窟の中を慣れた感じでやってくるニーナとシルミー。その後ろを続くようにシルミーママがやってきた。


「呼ばれたから来たけど、堅苦しいのは苦手。夜食を作りながら話をしないか? シルミーといっぱい狩りをしてきた。お前らも手伝え」


「そうだね。形式的な話し合いにこだわってはいないよ。せっかく狩りをしてきてくれたのだから、僕たちも手伝おう。ちょうどいいスパイスを持っているしね」


「ニーナ様は何を狩ってきたのだ?」


「このあたりは、ロック鳥が多く生息している。淡泊で癖のない肉だ。全体をまんべんなく燃やせば出来上がりだ」


「お前、絶対料理できない奴だな……」


「えっ? ロック鳥の丸焼きスゲー旨かったぞ」


 リントヴルム、お前もか……。


(だから言ったのよ。素材の味をもっと楽しむべきだって)


 リントヴルムもニーナ様もかなり味音痴のようだ。シルミーママの方がわかっている。


(羽毛を火で炙ったら、あとはそのまま食べるべきだわ)


「それはほとんど生よ。シルミーもそのまま食べて本当に美味しいのか?」


 前言撤回、誰もわかっていなかった。


「ストップ! ストップだ。料理はこちらでやらせてほしい。そのままでは僕たちが食べれなくなる。フェンリルはニーナ様とシルミーにさっきの話をしておいてもらえないかな」


(わかったわ。それから私たちの分は気にせず、そのままの素材でいいわよ)


「そのままのも置いておくけど、料理というか、少しは文化的な味を知る良い機会になると思うよ」


(文化的ねぇ。じゃあ、ちょっと勉強させてもらおうかしら)


 別にそこまで料理が得意という訳ではないけど、丸焼きや生よりはマシだろう。


 それにしても、ニーナ様ってノースポリアでどんな生活を送っていたのか気になるな。屋台買い食いでもそれなりにタレの染み込んだ料理が提供されそうなものだ。生活の場が街ではないのか?


 王家に嫁げば料理なんてしないだろうから、別に構わないんだろうけど、ニーナ様ってどうも人間的なものが少し欠けている気がするんだよね。


「クロエとベリちゃんで下処理を頼めるかな?」


「うむ、任せろ。サフィーニアのスパイスを使うのだな。スパイス料理は知らないから楽しみだな」


「上手くできるかわからないけど、丸焼きよりはマシだと思うんだ」


「それはそうだな。では調理は任せるぞ」


 手元にはフレッシュハーブがないので、乾燥したスパイスをすり潰すところからはじめなければならない。といっても屋外キャンプ場のようなこの場所で、すり鉢のような器具はない。やはりざっくりとした料理にならざるを得ない。


「石で少し潰しながら香りを出したらロック鳥に塗り込んでいこう」


 利用するスパイスはターメリック、クミン、トウガラシの三種だ。僕が作ろうとしているのはターメリックチキン。ロック鳥の内側から外側まで丹念にスパイスを塗り込むと枝に突き刺しながら火で炙り焼きにしていく。煮込み料理の方がスパイスの味わいが楽しめるかもしれないけど、ここは湧き水があまり多くないようなので仕方ない。


「パパ、それすっごい、いい匂いするねー」


 炙り焼きをしていくとロック鳥の脂とスパイスが混ざっていき良い香りが立ちはじめてくる。匂いに釣られたのか、ニーナ様とリントヴルムがこちらを気にして既に話どころではなさそうだ。


「ベリちゃんにはトウガラシ少なめのロック鳥を用意しておいたからね。辛すぎるのは苦手でしょ?」


「うん! パパありがとう」


「スパイスが儲かる理由がわかった気がするよ。ハルト、スパイス貿易は間違いなく成功するな」


 リンカスターでの利権を僕の商会で独占してしまえば凄まじい利益を生むことになりそうだ。しかもスパイスは保存が利く食品だけにロスが少ない。


「あんまりやり過ぎるのも良くないと思うから、ベルナールさんと相談してからかな」


「意外と慎重なのだな」


「商会として儲かりすぎるのもね。変な恨みや根も葉もない言い掛かりを生むことに繋がると思うんだ」


「なるほどな。干物と同じような考えか」


「それならば、領主様に恩を売って生活しやすくした方がいいと思うんだ。ビールと賢茶で十分すぎるほど儲かっているし、孤児院の運営も楽になっている。それに……」


「それに……何なのだ?」


「スパイスはその組み合わせが重要なんだ。数種類の組み合わせで様々なハーモニーを生み出す。つまり、スパイスだけでは豊かな食事を作れないんだ」


「つまり、組み合わせしたレシピの方が重要ということか」


「そういうこと。まぁ、レシピで商売するつもりも今のところ考えていないんだけどね。自分達の食の豊かさを優先したいからさ」


「パパ、ママ。ニーナとリントヴルムがよだれダラダラなの」


 あの感じだと、シルミーママの話を聞いていないな。しょうがない、まずは文明的な料理で腹ごしらえとするか。

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