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第百六十二話 賢者対賢者

「ベリちゃん、そこの狼さんと遊んでてくれるかな。パパとママは、あのお子様にお仕置きをしなきゃならないんだ」


「うん、頑張ってね!」


さて、どう料理してくれようか。僕もクロエもかなり怒りが溜まっている。しかしながら、まともに戦うとなると相手がレベル40付近の賢者であることを考えると厳しい。


「クロエ、やっぱり眠らせようか」


「いや、セーブしてくれ。ここは相手の攻撃を読み切って、一方的にねじ伏せてやりたくはないか」


 なるほど、レベル差のある相手に負ける屈辱を与えようということか。


 了解したよ、セーブだ。


 そして、ここからはニーナ様の動きを読み続けるために何度もロードしていく。彼女がどのように攻撃してくるのか、どのように動くのかを全部頭に入れていく。


「よし、それじゃあ僕の指示通りに動いてね。魔法がくる瞬間に防御魔法を掛けるから、クロエは左手で魔法を消しているように演技をして。それから……」


「うむ、了解した」


「コソコソ話はもうお終いか? シルミーの仇は必ずとる!」


 いや、シルミー寝てるだけなんだけどね。


「あなたは自分の方が強いと思っているんだろう。レベルも上なのだからそう思うのはしょうがない。だから、こんな行動をとれるのだろう。ドラゴンを倒したこともないくせに」


「あー、ドラゴンを二体倒したのだったな。お前たちが倒せるのなら私だって倒せる。リントヴルムも倒そうと思えばいつでも倒せた。ただ、あいつの逃げ足がちょっと早かっただけ」


「そう……。あなたの言葉は軽い。本当にレベル40あるのか? レベルではわからない強さというものを教えてあげよう。私が一人で相手する。先制攻撃は譲るぞ」


「き、貴様! レベル30台が舐めた口を開くなっ! 天狗風(サドゥンガスト)


 激しい突風がクロエを吹き飛ばそうとする。しかし、クロエが左手を前に出すとニーナ様の魔法が吸い込まれるようにして消滅していく。ニーナ様からはピカピカもみえていないだろう。


 実際にはギリギリのタイミングで僕が防御上昇(プロテクション)を掛けているだけで、ダメージはないのだけど、クロエの足は吹き飛ばされないように必死に踏ん張っている。


「やはり、そんなものか。お前、ドラゴンより相当弱いな。リントヴルムにも遊ばれていたのだろう」


 クロエの悪役(ヒール)っぷりが絶好調だ。こうして、挑発していくことでその行動はより読みやすくなっていく。次は怒りに任せて魔法を乱れ撃ちしてくる。


「な、なんだと! ふざけるな! 暴風(テンペスト)暴風(テンペスト)暴風(テンペスト)暴風(テンペスト)暴風(テンペスト)暴風(テンペスト)暴風(テンペスト)


「お前の魔法は効かないな。『風の賢者』とは、ここまで弱かったのか」


 これだけ魔法を撃たれてしまうと僕も連続で防御魔法を撃たなければならず、クロエはピッカピカに光り輝いちゃっている。しかしながら、微笑みながらゆっくり近づいてくるクロエの姿と相まってニーナ様には異様な恐ろしさを感じさせていることだろう。


「な、なんで避けない。何で私の魔法が効かない! お、お前、本当に人か!?」


 左手を前にしてゆっくりと進んでくるクロエに対して、ニーナ様も一歩一歩後ずさりしていく。


「さて、次はこちらから攻撃するか。頑張って避けてみるんだな。レベル四十」


「ま、待って……」


 その距離僅か、一メートル。とても避けられるような距離ではない。


煉獄乱舞(パーガトリーダンス)!」


 クロエが現在使える一番強い火の魔法がニーナ様の真横を掠めるようにして通過していく。焼けるような熱さが通り過ぎ、風圧でニーナ様の頬は切れ、血が噴き出ている。


 啞然とした表情で尻もちをつくように座り込んだニーナ様の戦意は完全に消滅していた。


「負けを認めるか? それとも、本当に死んでみるか?」


「ま、負けました……。うわぁぁぁーん!!!」


「あっ、ちょっ!」


 ニーナ様はそのまま後ろを向くと走って逃げ去ってしまった。負けることを想定していなかったのだろうけど、いや、それはそれで失礼な話なんだけどね。レベル差を考えたら普通負けるわけないもんね。


 それにしても、これあとで王様とかに怒られてしまう案件なのか不安になる。正当防衛って言葉通じるのかな……。




「パパ、おっきい狼さん目が覚めそうだよ」


「あっ、シルミー置いてけぼりじゃないか」


「しょうがあるまい。シルミーも一緒にベルシャザールまで連れていこう」


「わーい、ベリルおっきい狼さんに乗っていく!」


 目が覚めたシルミーは、何が起こったのかわかっていないようで、鼻をクンクンとさせてニーナ様を探しているようだった。


「シルミー、僕の言葉が通じるかわからないけど、ニーナ様は僕たちに負けて逃げてしまったところなんだ」


 シルミーは僕の顔をじっくり見ていて、何となく話を聞いている雰囲気を感じさせる。


「ニーナ様もベルシャザールには向かうと思うから、シルミーがよかったら一緒に王都へ行くかい?」


「バウッ!」


「うわっ、くすぐったいよー」


 シルミーは返事をすると、首もとにぶら下がっていたベリちゃんを優しく舐めはじめた。どうやら了承してくれたのだろう。生まれたばかり? なのに、とても賢い狼のようだ。


「それではベルシャザールまで急ごう。もう面倒ごとは勘弁してもらいたい」


 それにしても、『身隠しの粉』をつけていないベリちゃんにフレンドリーな態度を示すシルミーってやはり普通ではない。これはこれで気になる。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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