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第百五十八話 サファリ湖の妖精2

「妖精さん達のことは、もちろん秘密にするよ」


「あ、ありがとうございます。私たちに出来ることで何かお礼をさせて頂きたいのですが、ちなみに、この湖にはどのような用件でいらっしゃったのですか?」


 自然を守る妖精か……。待てよ、妖精さんにイネの生育に関して、何かお願いすることが出来ないだろうか。


「実は、あそこに自生しているイネという植物を探しに来ていたんだ。妖精さん達は自然を守るのが役目と言っていたけど、具体的にはどのようなことをするの?」


「あの植物ですね。私たちは植物や、ここに住む生物が病気にならないようお祈りしたり、成長促進のお手伝いをするのがお仕事なのです」


 おー、それはなんとバッチリなお仕事なのか! イネも病気で不作になるとか聞いたことがある。


「では、イネがちゃんと成長するようにお願いすることは可能なのかな?」


「それぐらいなら容易いことです。例えば、こんなことも出来ますよ」


 アレッタが他の妖精に指示を出すと、たくさんの妖精がイネの周りに集まり、祈りを捧げはじめた。


「きれー。パパの魔法みたいにピカピカ光ってるよ」


 ベリちゃんの言っているのは防御上昇(プロテクション)のことだろう。妖精さん達の光が徐々にイネも囲い始めていくと、驚きの光景が広がるのだった。


「成長促進にも、ほどがある……」


 もうすぐで収穫と思われたイネはあっという間に実が膨らみ、その種が落ちると再び芽を出し成長していく。気付いた時には最初の十倍近くまで増えたイネと、その豊かに実った稲穂が揺れているのだった。


「妖精さん、すごーい!」


「はい、こんな感じでこざいます」


 予想以上に凄まじい。さすがに今のは特別なものなんだろうけど、彼女達に管理をしてもらうだけで農作物は安泰だ。


「すこいですね……。あらためてアレッタさんにお願いがあります。よかったら、獣人と手を組みませんか?」


「獣人……とですか?」


「はい。そこの猫獣人のキャリバー家がこの辺りを直轄しているのですが、マンイーターから守ってもらうのです」


「そ、そうですね。それは私たちにとっても、大変ありがたいお話ではあります。ちなみに獣人の方が私たちに要望することはどのようなことになるでしょうか?」


「この湿地帯でイネを育てるのを手伝ってほしい。更に言うと、獣人達が栽培しているスパイスの育成も手助けしてもらいたいんだ」


「なるほどですね。その代わりに魔物から守ってもらえるということですね」


「もちろん、君たちのことは必ず秘密にすることを誓わせよう。キャリバー家はお金が絡むととても心強い。きっと君たちの助けになってくれるはずだよ」


「少し、仲間と話をしてきてもよろしいでしょうか?」


「うん、もちろんだよ」


 ジュリアの顔を一瞬見ると、パタパタとイネの周りで飛び回っていた仲間の所へ近寄っていき、さっそく相談を始めたようだ。人間不信の妖精さんだ。落とし所はどのあたりになるかな……。


「ハルトさん、キャリバー家のことをよくご存知ですね。お金は生きるためにとても大事です。ジュリアもベリルちゃんのことは何も言いませんよ」


「ほう、一応聞くけどそれは何でかな?」


「ハルトさん達は太客なので大事にしようと、昨日の家族会議で決定したのです」


「なるほど、昨夜はそんなことをしていたのか」


「はい、キャリバー家はハルトさんとクロエさんが嫌がるようなことはしないでしょう。黙ってついていくだけで、ドラゴン討伐から妖精さんとの繋がりまで作ってくれます」


 言葉だけ聞くと確かにすごい成果をあげているんだよね。ドラゴンも二体討伐したことになるのか。


「妖精さんのことは偶然だと思うんだけどな」


「ジュリアなら妖精さんを助けてあげてもそこで終わってしまいます。これがきっかけで仲良くなるかもしれませんが、ここまでの交渉はできません」


「そういうことね。でも、それはキャリバー家の強運ともいえるんじゃないかな」


「そうだとしても、運を引き寄せるためにはどう行動して、誰についていくかも重要だと思うのですよ」


 ジュリアの言うことも、ごもっともである。運で全てを片付けるのも違う気がする。どう行動したかで、変わってくるのはセーブ&ロードでとてもよくわかる。


「ハ、ハルトさーん、話し合いが終わりました。そのですね、ちょっとご相談があります」


 唾液まみれだったアレッタさんだったけど、水浴びをしてしっかり拭いてもらったようで、それなりに身綺麗になって戻ってきた。


「はい、ご相談ですか?」


「キャリバー家と言いましたか、そこの猫獣人の方の家に行ってもよろしいですか? そこで、人となりを見させてもらってから判断させて頂きたいのですが……」


「なるほど、ごもっともな話だね。ではこうしましょう。これから戻って妖精たちのことを話しますから、その様子を隠れて見てみるというのはどうですか?」


「そんなことして、あとで怒られませんか?」


「僕の案だから気にしないでいいよ。それに、キャリバー家が何を一番に優先するのかがわかると思うよ」


「そ、そうですか……。わかりました。では、ご同行させてください。よろしくお願いします」


 こうして、妖精のアレッタさんが一緒に向かうこととなった。

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