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第百五十五話 サファリ湖のイネ1

 サファリ湖までは歩きで進むことになるらしい。森とはいってもかなりキツイ斜面もあるので、僕にはかなり大変な道のりだ。


「ハルトさん、早く早く」


「パパ大丈夫?」


 ベリちゃんにはまだしも、ジュリアにまでついていけないというは屈辱だ。何だかんだベースの身体能力や山道に対する慣れみたいのが違うのだろうけど。


「へ、平気……」


 全然平気ではない。僕はドラゴンは魔法で倒せても山道では遅れをとる情けない冒険者なのだ。まだ半分もあるとか帰りを考えるだけで、とても憂うつになってくる。でもお米欲しい。


 息を切らせながら、難所を登りきると厳しい下りが待ち構えている。もう少し体を鍛えないとダメかも。いや、レベルアップか。最近、全然レベル上がらなくなってきてるんだよね。


「パパ、おんぶしよっか?」


 気持ち的にはお願いしたいけども、それはやっちゃダメなやつなんだ。幼女におんぶされる僕とか、情けないとかいう話ではなく、人として大事なものを失う気がするんだ。


「……ジュリア、あとどのくらいなの?」


「あとはここを降りるだけですよ。ほら、下に湖が見えているでしょ。あれがサファリ湖ですよ」


 確かにはるか下の方に湖らしきものは見えている。見えてはいるが、どうやって降りるんだよ。


「ジュリア、これはどうやって降りるの?」


「いや、トントントーンって感じで一気に行けば早いですよ」


「パパ、おんぶする?」


「……まぁいい。奇跡的にここを降りれたとして、帰りはどうやって登るの?」


「そこは、降りてきた道をザッザッ、タターンって感じで一気に駆け抜ける感じですかね」


「ベリルおんぶできるよー」


 おんぶできるのは知ってる。されるのを躊躇しているだけだから。それにしてもジュリアの言い方が脳筋っぽくて腹が立つな……。


「こんなにハードな道とか聞いてないぞ! ええい、気にしたら負けだ! ベリちゃん、おんぶ、プリーズ」


「わーい! おんぶでトントン降りるの?」


「そうだね。トントン行っちゃって」


「ハルトさんも所詮は人の子でしたね。山道はコツが必要なんですよ。では、行きますか」


 悔しいが何も言い返せない。もちろん帰り道もお願いするつもりだ。


「ゴー!」


「えっ!? ベリちゃん?」


 ベリちゃんのトントンはスピード重視の特攻だった。いや、攻めすぎだよ! それはダイブと言うんだってばー!!


 ジャンプ一番飛び降りると、そのまま手を広げながら滑空。


「ベリちゃん、それ降りてないよ、飛んでるよ!」


「大丈夫。ほらっ、ジュリアもトントンしてるでしょ」


「えっ!? トントン?」


 よくわからずにトントンをお願いしたのだが、ジュリアを見ると、膝で勢いを吸収しながら器用に降りていっている。モーグルか!? 雪もないのに狂ったように突進していっている。


「あ、あのー、ベリちゃんはトントンしてないけど大丈夫なのかな?」


「ベリルはねー、トントンじゃなくってね、シュタタンで行こうと思ってるの」


 シュタタンが何を意味しているかはわからないけど、もはや任せるしかない。嫌な予感しかしないが、もう後戻りはできないのだ。


「シューター、ターン!!」


 何が起こったかというと、地面にぶつかる前に、大きな木の幹を斜めに蹴り、クッションにしながら力を逃がすようにして、見事な一回転を決めつつ降り立った。


 ちなみにクッションにされた大木は粉砕されている。僕も死にそうになりながら、何とかしがみついていられた。


「あ、あんまり無茶しちゃダメだよ」


「でも、トントンより早かったでしょ?」


「う、うん、それはそうだけど」


 少し遅れて、ジュリアも降りてきたのだが、ベリちゃんを信じられないものでも見るように指を指していた。


「な、何ですか今のは!? ベリルちゃんって何者なんですか?」


「えーっと秘匿事項なので答えられません。ほらっ、そんなことより何処に自生しているの? 早くイネを探そうよ」


「は、はあ……。とりあえずお金の方が大事ですからね。ええ、イネを探しましょう。確か、向こうの方にあったと思うんですよね」


 とりあえず、ジュリアがアホで再び助かった。あとで軽く口止めしておけば大丈夫だろう。万が一話されても、幼女がこんな馬鹿げた動きをするはずがないからね。誰もネコのお姉さんのことを信じないだろう。


「見つかるといいんだけどね」


「そういえば、マンイーターが全然出てこなかったですね。小さいのはそこそこ出てくるんですが、どうやら私におそれをなして逃げているようですね」


 多分ジュリアにではなく、ホワイトドラゴンにビビっているのだと思われる。この地域にはすでにドラゴンはいないのでもう『身隠しの粉』はつけていないのだ。


 普段の討伐の時は、ベリちゃんもそれなりに気配を消している訳なのだけど、今日はドラゴン全開で解放してもらっている。面倒ごとは避けたいので、相手から逃げてもらおうという訳だ。


 お米の為ならば、しょうがあるまい。米が見つかればカレーライスが完成する。それに、焼き魚にはやはりご飯。


 そう考えると、大豆製品にも手を出したくなってくる。味噌、醤油。なんて魅力的な調味料なのだろうか。

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