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第百五十三話 褒賞の相談

「残念ではあるが消えてしまった物はしょうがあるまい。眼と鱗については、もちろん了承しよう」


「本当ですか!? ありがとうございます」


「本来であれば討伐品は討伐した者に権利がある。こちらこそ、気を使わせてしまい申し訳ない」


「いえ、さすがにドラゴンともなると、ちょっと気が引けてしまいますよ」


 さっきの獣人さん達を思うと、僕たちが全部持っていくという気にはとてもならなかった。彼らも思うところがあるだろうし、サフィーニアに置いておくべきものだろう。片眼はもらっちゃうけども。


「すまぬな。先ほどの話から察するに、お金は間に合っているのだったな。討伐品以外の褒賞について、何かサフィーニアで力になれることはあるだろうか?」


「えーっとですね、実はお願いしたいことがあります」


「うむ。話してみなさい」


「リンカスターの物産品とサフィーニアの農産物で貿易をしたいと思っているのです」


「貿易か。それは、こちらにとってもありがたい話だ。物産品というのは、例の干物のことかな?」


「干物もですが、エールビールもお願いしたいと思ってます」


「うーん、エールビールか……」


「父上、リンカスタービールといえばベルシャザールで革命を起こしたと言われているエールビールでこざいます」


 エールビールと聞いて若干訝しげな表情を浮かべたサフィーニア王であったが、アーリヤ姫の発言で興味を持ってくれたようだ。


「ほう、革命か。それは気になるな」


「今は手持ちがありませんので、すぐにサンプルの樽を送らせます。冷やして飲むと美味しいので、職人も一緒に連れて参りましょう」


「ハルト殿は商売の話をする時はとても凛々しい表情になりますな。普段はどちらかというと頼りないようにも思えるのだが、とても不思議な方だ。獣人族であればアーリヤとの婚姻も考えたいぐらいだな」


「そ、それは、なんというか……」


 もちろん、あり得ないからこその営業トーク的なものだろう。かなり驚いたけども。


「父上、冗談にしても過ぎますわ。それにハルトさんにはクロエさんという素敵な方がいらっしゃるのですからね」


「なるほど、そうであったか。結婚はまだなのであろうか?」


「ま、まだ、二人とも年齢とか、いや、年齢は関係ないのかもしれないけど……」


「そのあたりは、もう少しゆっくりでもよいと思ってます。何といいますか、今の関係が心地よいのです。これから一緒に過ごす先に結婚があるのならその階段をのぼります」


 やはり、こういうところはクロエが男らしい。僕の方が実際の年齢が上なのに、ちょっと恥ずかしい。


「なるほど。よい関係を重ねているのがわかる。なに、もしも結婚を決意したのであれば、その時は我らも招待してほしいのだ」


「それは素晴らしいですね。なかなか国を留守にすることも出来ませんでしたが、いいきっかけになりますわ。ねぇ、お兄様」


「そうですね。私はついでにベルシャザールの武闘大会にも出場してみたい」


「お兄様、二人の結婚とまったく関係ありませんわ」


「おー、そうだったな。これは失礼。大量のサフィーニアの農作物をお祝いに持参しましょう」


「少し話がそれてしまったな。それでは、貿易を行うスパイスを見繕ってもらえるかな」


「はい、ジュリアの家が多くのスパイスを栽培していると聞きました。他にも気になる農産物があるので、そこで見学させてもらってもよろしいでしょうか」


「あー、確かにそれが良いな。キャリバー家は多くの種類のスパイスを作っている。気に入るものが見つかるであろう」


 そういえば、ジュリアを寝かしたままだったな。ベリちゃんに起こしてもらおう。


「ベリちゃん、そろそろジュリアを起こしてもらってもいいかな?」


「うん、わかったよー。ジュリア、早く起きないとおやつ抜きだよ」


 まだピカピカ光っているジュリアを揺すりながら起こそうとするものの、魔法を掛けたばかりなので、まだ少しかかりそう。


「むにゃむにゃ、おさかなーひとりじめー、ふふふっ」


 どうやらとても幸せそうな夢をみているようだ。勝手に魔法を掛けておいて申し訳ないが、盗んだ干物で随分と楽しそうな世界にいるじゃないか。


「ベリちゃん、ゴー!」


 問答無用でくすぐりの刑が執行される。慣れたもので、うつ伏せで寝ているジュリアにまたがるようにして脇の下、足裏を交互に攻めるベリちゃん見事だ。


「ふぉっ! く、くすぐったいってば!? えっ、ベ、ベリちゃん? 今いいとこだったのに……あ、あれっ? 私、何で寝てたの!?」


「ジュリア、おはよう。今、王様と褒賞の話をしていたんだけど、リンカスターとサフィーニアとの貿易を進めることになったんだ。お祝いが一段落したら家に案内してよ」


「は、はい。それはもちろん。父も喜ぶと思います。しかし、アーリヤ様、そのような栄誉をうちの農場でよかったのでしょうか?」


「キャリバー家はサフィーニアでも有数のスパイス産出地よ。種類も多く、ハルトさんの期待にも応えられるのではないか。それに、」


「今回の一件で、ジュリアにはいろいろと迷惑を掛けた。そなたの真っ直ぐな忠誠心に対するお礼でもある」


「アーリヤ様、王様……。わ、私、もう干物は隠しません!」


「あ、ああ、そうだな……」

「そうね、隠しごとはもうこりごりだわ」


 いろいろと台無しな発言ではあったが、その後にみたキャリバー家のスパイス農園は見事なものだった。

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