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第百五十二話 落としどころ

 アーリヤ姫は、一度イヨール様の方を見てからこう切り出した。


「私やイヨール様がこの場にいるのですから、それが全てでございましょう。もちろん秘密にしたいこともあるのでしょうけど。しかしながら……」


「そのことが、我らを裏切るような類いではないということか。そもそも、アンフィスバエナは実際に討伐されているのだからな」


「はい。ですので私たちは感謝こそすれ、疑いの目を向けることは失礼かと」


「あいわかった。クロエ殿、ハルト殿、ローランド殿、あらためて礼を言わせて頂こう。サフィーニアを助けてくれて感謝する。この恩は決して忘れぬ」


「いえ、お役に立てて光栄でございます」


「そういうことなので、秘密のルートを外部に漏らしたジュリアの罰についても特別に許す方向で検討をするか」


「ぶふぉっ!!」


 扉が開けられると、俯いてシュンとした悲しい表情で涙目のジュリアが入ってきた。どうやら秘密のルート使ったのバレバレだったらしい。


「うー、みなさん申し訳ございません」


 一緒に入ってきたベリちゃんが土下座しているジュリアの頭を撫でている。きっと飼い主的な立ち位置で慰めているのだろう。


「ジュリア、それは誰に謝っているのだ。見つかってしまったことか? それとも国の秘密を外部に漏らしたことをか?」


「あ、あの、サフィーニア王、ジュリアのことにつきましては私たちにも原因があります……」


「うむ。アンフィスバエナ討伐に必要なことであったというのであろう。確か、ハルト殿も周辺の人払いをお願いしておったしのう」


 サフィーニア王が頭を撫でているベリちゃんをしばらく見ていたが、フーッと息を吐くと自分の中で何かを消化したのだろう。軽く笑みを浮かべると一言こう言った。


「まぁ、許す」


「へぁ? ゆ、許すですか?」


 罰を受けるものと諦めていたジュリアは驚いたような表情で首を曲げながら顔を上げた。


「元はと言えば、最初にお前の気持ちを利用したのは我々だからな。これで、おあいこということにしようか。しかし、王宮の秘密のルートを外部に漏らすのはやり過ぎだ」


「そうですね。父上、ここはクロエさん達に黙っていてもらうためにも我々に一つ彼らの秘密を教えてもらうというのはいかがでしょうか」


「おー、そうだな。それこそ、おあいこといえるかもしれん。もちろん、秘密のルートについては他言無用で頼むぞ」


 ジュリアをだしに何かしらの情報はとろうとしていたのかもしれない。


 確かに、討伐したからいいでしょ? ってな訳にはいかないよね。王として、それなりの説明責任は負いそうなものだ。


「うーん、秘密ですか……」


 何を伝えるべきか。魔法だと、防御上昇(プロテクション)深眠(ディープスリーパー)はイヨール様に見られている。魂浄化(プリフィーソウル)はバレてないので言うつもりはない。


 ベリちゃんのことは一番秘密にしたいことなので論外となる。セーブとロードも気軽に話せることではない。とはいえ、嘘は見破られそうなんだよね。


 アーリヤ姫とイヨール様がジト目でこちらを窺っている。となると、教えてもいい僕の魔法を言うしかないか。


「そうですね。では、今から新しい魔法をお見せいたします。この魔法のことは、秘密にお願いしますね」


「新しい魔法であるか……」


「ベリちゃん、こっちにおいで」


「うん!」


 ベリちゃんがジュリアから離れたのを見計らって僕は魔法を放った。


 深眠(ディープスリーパー)


「ふぇっ! ハ、ハルトさ……」


 スピー、スー、スピー……


「こ、この魔法は?」


「眠らせる魔法です」


「リュカスとイヨールを眠らせたというのは、この魔法なのだな」


「はい。では続いて次の魔法です」


 防御上昇(プロテクション)


 土下座をしたまま眠ってしまったジュリアの体がピカピカとピカりだす。


「こ、この光る魔法はなんなのだ? 見たことがない魔法を次々と……」


「この魔法は防御力をアップさせるものです。光の膜が薄くなって消えてしまうと効果が無くなります」


 火球(ファイアボール)


「なっ!」


 魔法はジュリアに当たると少しだけ光が弱くなったが、ジュリアの体には一切ダメージを負った様子はない。


「眠らせる魔法に防御魔法……。ハルト殿、これは凄まじいな」


「父上、これは初見の者であれば相手にならず、あっさり殺されますね。お兄様が眠らされたとなると、これは想像以上に脅威です。盗みも人攫いもやり放題です」


 アーリヤ姫がわざとらしく嫌なことを言う。それにしても、改めて人から聞くと犯罪臭のキツイ魔法だな……。


「まさにそうだな。彼らの人柄からそういったことはないと信じておるが……」


 サフィーニア王までいやらしそうな顔をみせる。


「父上、ご安心を。クロエ殿は多大な褒賞金を得ていますし、ハルト殿はリンカスターで大商人でもあられるそうです。少なくともお金に困っている様子はないので心配はご無用かと」


「ほう、つまり褒賞は金じゃない方がよいということだな。しかしながらアンフィスバエナの頭部については、できれば国に残しておきたい」


「洞窟内に落ちていた鱗と、片眼だけでも討伐の権利として頂いても構わないでしょうか」


「鱗は構わぬ。片眼を欲する理由を聞いてもよいか?」


「その眼は火属性を操る(えん)という名のドラゴンの頭部。『火の賢者』であるクロエには価値のあるものになるでしょう」


「そうか、わかった。そう言えば片割れの方は消えてしまったのか?」


「はい、討伐の際に消滅してしまいました」

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