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第百五十話 アンフィスバエナ戦5

「リ、リュカス王子!?」


 目の前に現れたのは、なんと眠っていたはずのリュカス王子だった。


 ロードするのを忘れていて、もはや死に戻りを決意していたところ、僕の目にはほとんど見えないぐらいのスピードで、リュカス王子の剣がアンフィスバエナの牙を辛うじてずらすことに成功、見事に弾いていた。


「こ、これは一体!? この首から上はアンフィスバエナなのか!?」


 どうやら奇跡的にこのドタバタで目を覚ましたリュカス王子が僕のことを助けてくれたらしい。近くで寝かせていたことが、結果的に功を奏していたらしい。多分、僕とベリちゃんの魔法は見られてないはず。


「た、助かりました、リュカス王子。正直、ダメかと思ってましたよ……。アンフィスバエナはあの頭で最後です」


「最後……」


「いやハルト君、もう動かない。どうやら討伐したようだよ」


「ローランドさん?」


 リュカス王子に弾かれたアンフィスバエナの頭は弾かれた場所から動かず、その恐ろしくインパクトのあるギョロ目は閉じられていた。


「ま、まさか、アンフィスバエナを本当に討伐したというのですか……そ、そんなことより、わたしは何故あんな場所で寝ていたのですか?」


「王子、それは魔法です。そこの少年が使う、人を眠らせる魔法のようじゃ」


 どうやらリュカス王子だけでなく、イヨール様もお目覚めらしい。


「眠らせる魔法……。ハルトさん、どういうことですか?」


「うーん、それについてはサフィーニア王も含めてお話をさせてもらってもよいですか。それよりも、このアンフィスバエナの頭はどうしましょうかね?」


 そう、奇跡的に魂浄化(プリフィーソウル)で消えなかった(えん)の頭部。その価値はプライスレス。おそらく、この世界で初めてとなるドラゴン討伐アイテムになるはずだ。少しでいいから素材をもらいたい。


「警備の者に運ばせよう」

「あっ!」

「まさか、警備の者も眠らせていたのか……」

「す、すみません」


「まったく……しょうがあるまい。警備の者を起こしてきますので、みなさんはここで待っていてください。外の者にも伝えねばなりません。アンフィスバエナの討伐を」


 そう言うと、リュカス王子は来た道を全速力で走り去っていった。早く、外の獣人達にもこのことを伝えたいのだと思う。


「ほ、本当に討伐したのじゃな……」


「ハルトが一人だけ死にそうになったけどな」


「ちょっ、クロエ! 油断大敵とか言うけど、頭だけで攻撃してくるとか反則というか衝撃だよ。しばらく頭から離れなそうな気がする」


「お疲れ様です、ハルト君、クロエさん」


「ローランドさん、いろいろと助かりました。このお礼はあらためて!」


「いえ、私はこのアンフィスバエナの鱗を数枚頂ければ大変満足ですとも」


 どうやら、この鱗を使って大盾を強化したいらしい。今回は全然大盾活躍出来なかったものね。大丈夫だとは思うけど、サフィーニア王にもお願いして鱗を貰えるように交渉しよう。


「問題は……」


「この(えん)の頭か」


「『火の賢者』的に有効なアイテムとかになりそうじゃない?」


「確かに火属性アイテムになりそうな素材ではあるな」


「ローランドさん、パッと見てどの部分が素材として使えそうかわかります?」


「そうですね。わかりやすいのは牙ですね。後は特徴的な眼球。あとは鱗、皮、骨でしょうか」


「えー、眼球とか素材になっちゃうの」


「何といっても竜の眼球であるからな。かなり高濃度の魔力が含まれているはずだ」


「売ってやっても構わぬが、かなり高額になると理解しておくことじゃな」


 とらぬ狸の皮算用をしていたら、ちょっと冷静になったイヨール様の低い声が話に割り込んできては、釘をバチコンと打っていった。


「イ、イヨール様……。やっぱり、これはサフィーニア公国のものになるのかな? 言ってはなんだけど、アンフィスバエナを倒したのは僕たちだと思うんだけど」


「我々を裏切って、眠らせている間にか? 王子がいなければお主は死んでいたであろう」


「いや、それは語弊がありますって。そもそも、裏切ってませんよ。アンフィスバエナを倒す為にはどうしても必要なことだったんですから」


「結果的に討伐はしているが、失敗した場合、全ての獣人が犠牲になっていたかもしれんのじゃぞ!」


 やはりというか当たり前だけども、眠らせたのを怒ってらっしゃるようだ。普通に考えて怒らない方がおかしいんだけどさ。


「えーっと、それについては申し訳ございませんでした。討伐するためには必要なことだったんです」


「ふんっ、理由は後で聞かせてもらおうか。しかしながら、アンフィスバエナを討伐してくれたこと、当代の『光の賢者』として礼を言わせて頂こう」


 そう言うと、イヨール様は僕たちに向かって頭を下げた。偏屈で体調の悪そうなお爺ちゃんかと思っていただけに意外ではあった。


「頭をお上げください、イヨール様。私たちも戦略とはいえ、騙すような真似をしてしまい申し訳ございませんでした」


 僕たちを代表してクロエがイヨール様に頭を下げていると、リュカス王子が多くの獣人を連れてあっという間に戻ってきた。


 さっき走っていったばかりなのに、やはりスピードがかなり早い。このスピードのお陰でロードし直さずに済んだんだけどもね。


「あれが、アンフィスバエナの頭だ。王宮へすぐに運んでくれ」


「はっ、かしこまりました」


「洞窟の外にいる者にも討伐のことは伝えております。すぐにベルシャザールへも連絡が届くでしょう」


「ありがとうございます」

「それでは、私たちも戻るとしましょうか」


「そうですね。今宵は宴です! あなた方はサフィーニアの英雄になったのです。我々は今日の解放を忘れはしないでしょう」


 英雄か……。リュカス王子は喜びの方が勝っている感じで、眠らせたことはあんまり怒ってなさそうな雰囲気。イヨール様がおとなしくしていれば、やり過ごせそうだなとか悪いことを考えながら洞窟の外へと向かうと、外は多くの獣人達で思いの外に凄いことになっていた。

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