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第百四十話 戦略の練り直し1

 ロードしたのはセーブの2番目。


 目の前ではイヨール様が、魔法陣に手をつき魔力を流し込んでいる。綺麗な光輝く魔法陣の色が赤に変わり点滅しながらぐるぐると回転していて、中央にいるアンフィスバエナはすぐにでも攻撃できるような前傾姿勢をとり、こちらに睨みを利かせている。絶対話し合いになる雰囲気ではない。



「ちっ、知らんからな! 解除(キャンセレーション)!」


「ハルト君!」

「みんな、これは二回目ね!」


「了解! アンフィスバエナを眠らせることは?」

「出来た! でも、片方だけしか寝てくれなかったんだ」

「片方だけしか……」


 魔法陣の束縛が解除され、アンフィスバエナは魔法陣の近くにいたイヨール様目掛けて攻撃というか、食事をするかの勢いで首を伸ばして突っ込んでくる。


 防御上昇(プロテクション)!!


 それでもアンフィスバエナの動きを予め知っていた僕の魔法の方が早く、噛み切れなかったイヨール様は盛大飛ばされた結果、無事助かったようだ。光はあっさり消滅してしまったが、本人はピクピクと動いているので多分死んではいないと思う。


「アンフィスバエナ、私はニーズヘッグを討伐した『火の賢者』です。あなたと話がしたい。少しだけ時間をもらえないだろうか?」



「よかろう。忌まわしい魔法陣の束縛から解除してくれた礼に、少しぐらいなら話を聞いてやってもよい。小娘、我々から何が聞きたい」

「おい、その前に、そこで伸びている賢者を喰わせろ。俺たちは何百年と血肉を啜っていないんだ」


「イヨール様を、賢者を食べるのは勘弁してもらえないか。先に私の話を聞いてほしい」


「何で俺たちが賢者の意見なんか聞かねぇとならねーんだ。お前から殺すぞ!」


「待て、(えん)。この賢者はニーズヘッグを倒したと言っている。もし本当なら少しだけ興味がある」

「ニーズヘッグを倒せるわけねーだろ(ひょう)。嘘に決まっている。こいつから竜種を倒す力なんぞ微塵も感じねーぜ」


「話次第では、あなた達を解放したいと思っている。このままずっと魔法陣に捕らわれているままよりも獣人達と共存する道を選べないだろうか?」


「何を言い出すかと思えば、この獣どもと共存だと? 言いたいことはそれだけか?」

「俺たちにこの汚らわしい獣と共存する意志はねー。俺たちは自由だし、お前らはただの食料だろ?」


「だ、だから言わんこっちゃない……。どうするのだ! これからまた魔法陣を完成させるにはどれほどの時間が掛かると思っておるのじゃ!」


 イヨール様、どうやら意識を取り戻したようだ。後で僕にお礼を言ってもらいたい。本当なら既に体真っ二つだったんだからね!


「おい聞いたか(ひょう)。本当に魔法陣はしばらく使えねーらしいぞ」

「聞いておる(えん)。これで我らを縛るものはないということか。『火の賢者』といったか、何故、我らを解放させたのかわからぬが礼を言おう。しかしながら、本気で話し合いで解決できるとでも思っておったか? 我らが何百年ここに封印されていたか知っておろう?」


「私たちがあなた達を解放させたのは、私たちがあなた達を御することが可能だからです。話に応じてもらえない場合は残念ながら倒すまでです」


(ひょう)、こいつ弱いくせにムカつくな。もう食べていいか?」

「待て、(えん)。『火の賢者』がこの地に来ていることがニーズヘッグを討伐したという証ではないのか。魔法陣を解除させるからには、それなりに我らを押さえられる手段を持っていると考えるべきであろう」

「こいつらが俺たちを? じゃあどうすんだよ。食べねぇのか?」

「そこの小僧が使った魔法が気になる。少し話をしたい」

「ふん、好きにしろ」


「やはり共生の道は厳しいのか。ハルトの使った魔法をみていたようだな。あれは珍しい眠らされる魔法なのだ。もちろんドラゴンにも有効だぞ」


「眠らせる魔法。そんな魔法聞いたことがない。しかし、そこの獅子獣人はその魔法で眠らされている。新しい魔法が生まれたのだな……」


「試しにどちらか片方を眠らせてみせましょうか?」


 アンフィスバエナの(ひょう)と呼ばれた方は少し悩むような素振りをみせたが、首を振った。


「いや、やめておこう。その魔法が果たして我々に本当に効果があるのか、または当てられるのかは判断できぬが、少なくとも我々を倒す手段というものの理由がわかった」


 氷の方は冷静だ。話し合いの場合はこの氷の方が前面に出てくる。安易な挑発にも乗ってこない。もう片方の炎の方なら簡単に乗ってきそうなんだけどね。


「それでどうするのだ。共生の道が無いというのなら、残念ながら折角解放してあげたのに再び封印しなければならない」


「随分と強気な賢者だ。まだ隠していることがあるのか……。しかしながら、我々の怒りはそう簡単に収まるものではなくてな。眠らされる前にそこの死にそうな賢者を食ってしまえば問題ないのではないか?」


 そういうと、アンフィスバエナはイヨール様に向かって突進していった。その動きにローランドさんが一瞬動こうとしたが、間に合わないと判断して諦めた。


「ひっ、ひっ! だ、だから言ったで……」


 せっかく助けてあげたのに、イヨール様二回目の死亡だ。


 いやまぁ、そうなるか。アンフィスバエナは目が四つある訳で、普通に魔法を撃っても判断力も早く、その圧倒的なスピードで避けられてしまう可能性が高い。どうやったら魔法を当てられるものか……。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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