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第百三十八話 封印の洞窟

 翌日から早速調査を始めることになった。パーティメンバーはクロエ、ローランドさん、そしてリュカス王子と僕の四名だ。当日まではベリちゃんは予定通りジュリアとお留守番となっている。当日はジュリアには何とかアリバイ工作を頑張ってもらいたい。


「洞窟って、ここから凄く近かったんですね」


 アンフィスバエナが封印されている場所はサフィーニア王の屋敷から徒歩圏内にあった。歴代の王がおさめることになっている由緒正しい土地とのこと。


「由緒正しい土地にドラゴンを封印するのは如何なものかと思うのだが……」


 クロエの言うこともごもっともだ。


「アンフィスバエナの封印も込みで王となります。つまり、一族から生贄を出さなければならないということになるのですけどね」


 生贄のところで、リュカス王子の顔が若干曇ったように思える。第一王女まで生贄にしなければならないのだから、相当な数の血縁者が犠牲となったことは想像できる。


「獅子族からの生贄はこれまでに何名が?」


「私が知っているだけでも二十名以上が犠牲となっております。お爺様の代も含めるとおそらくは五十を超えているでしょう」


 唇を噛みしめるように答えるリュカス王子からは悲哀を感じさせる。やるせない想いが伝わってくるし、ここで何とか止めたいという強い気持ちが伝わってくる。


「リュカス王子、あの洞窟がそうなのでしょうか?」


 ローランドさんの言葉につられるようににして前方を見ると、いかにもな洞窟が現れていた。


「ええ、そうです。あれが封印の洞窟になります」


 洞窟の入口には熊の獣人兵が厳重に警備をしており、明らかに怪しい雰囲気が漂っている。


「ここは獅子獣人と猫獣人のエリアになると思うんですけど、何故熊の獣人もいるのですか?」


「熊獣人とは昔から仲が良いのですよ。同じネコ(もく)分類ですからね。互いに足りない部分を補いながらタッグを組んでいるのです」


 どうやらスピード型の獅子獣人とパワー型の熊獣人は相性が良いとのこと。パーティを組む場合では混合タッグの方が強いらしい。


「あの洞窟の先にアンフィスバエナがいるんですね……」


「クロエ様、今日は魔法陣の状況を説明するのとアンフィスバエナを目視で確認してもらうだけでよかったですか?」


「はい、お願いします。先に魔法陣についてとサフィーニア公国が知っているアンフィスバエナについての説明をお願いします」


 とりあえず、ここで一旦セーブをしておこう。何度もやり直さずに進めるといいんだけどね。


 この魔法陣は熊獣人の賢者が管理をしており、生命力や魔力といったものをエネルギーに変え維持しているとのこと。そのため、若くて魔力の素地がある者が贄として候補にされる。


次に、アンフィスバエナについてであるが、予想通りというか、憎しみがとても強いドラゴンさんのようだ。何百年と封印され続けているので当たり前といえば当たり前なのだけどね。


「アンフィスバエナは用心深く、常にこちらの隙を突こうとしています。最近は魔法陣の効果が弱まってきていることもわかっているのでしょう。生贄を捧げる儀式が近いことも感じているはずです。必ず片方の頭は眼を覚ましています」


 交互に睡眠するなんて、器用なドラゴンさんだ。問題は憎しみが強いドラゴン=浄化できるドラゴンなのかという点と、魔法陣をリセットした瞬間に動き出すのかという点が知りたい。


「リュカス王子、アンフィスバエナの魔法陣を解除してから動き始めるまでの時間をお伺いしたいのですが」


 あくまでも文献による情報となるそうなのだが、冷静と憤怒の両面を持つ双頭のドラゴン。熊獣人と獅子獣人のようにお互いがカバーし合いながら攻撃してくるらしい。空中戦を得意としているようなので、洞窟内で勝負すべしとのこと。氷の魔法と炎の魔法を各々が使ってくるそうだ。


「ちなみに、解除したあとのアンフィスバエナの動きは私たちもわかりません。すぐに動き出すかもしれませんし、しばらくは動けないかもしれません。こればっかりは今まで解除したことがないので判断できないのです」


「了解しました。それではご案内頂いてもよろしいでしょうか」


 クロエが目線で確認してきているので軽く頷いておいた。もちろんセーブのことだろう。


「かしこまりました。ではご案内しましょう。魔法陣の前にはサフィーニア公国の『光の賢者』イヨール様もおられます」


 洞窟内はしっかりと整備されているようで、道も踏みかためられているのか歩きやすく、所々に松明があって先もある程度見通せるほどだ。


 流石に一本道という訳にはいかないようで、登ったり降ったりを繰り返しながらではあるが、進むこと二十分程で突き当たりまで到着した。


「イヨール様、『火の賢者』様のパーティをお連れ致しました」


 熊獣人にしては背も低く、痩せている不健康そうな『光の賢者』イヨール様は自ら持ち込んだと思われる木製の椅子に座って魔法陣とその中央に鎮座しているアンフィスバエナを見ていた。


「貴女が『火の賢者』クロエですか……。このアンフィスバエナの姿を見ても討伐できるとお思いか?」


 その姿はニーズヘッグよりも一回り大きく、赤黒い厳つい体表と鋭い眼をこちらに向けている。というか、両方起きてるじゃないか。

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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