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第百三十二話 リントヴルムと風の賢者2

 私と変わらないぐらいの小さいサイズになったリントヴルムを先導に洞窟の奥へと案内されていく。ドラゴンの住処なのだからもっと大きい場所を想定していたが、まさか自らの大きさを調節できるとは驚きだった。これではいくら住処を探しても発見できなかった訳だ。それにしても、この後ろ姿。サイズも小さいし弱そう。今攻撃したら絶対避けられないんじゃないかな。


「お、おい。今、魔力を感知したぞ。お前、まさかとは思うけど後ろから俺を狙おうなんて考えて無いだろうな」


「そんな卑怯な真似は多分しない」


「多分って何だよ! 洞窟内は絶対ダメだかんな。山狼の親子がいるって言ってるだろ」


「そもそも山狼って何だ。この地域にそんな魔物聞いたことがない。お前が嘘を言っている可能性がとても高い」


「ほらっ、あそこに横たわっているのが見えるだろう。これでわかったろ? っておい! 近づきすぎだ!」


 壁に寄り掛かるようにしながら母親が子を守ろうと立ち上がっている。かなり大きな狼だ。今までに見たことがない種なようだ。腹と脚を酷く怪我しているようで立っているだけで辛そうにみえる。しかしながら、私の目線の先にはふわっふわのもっこもっこの赤ちゃん狼しか見えていない。


「か、可愛い。ラシャド王子みたいに毛がチリチリでふわふわだ」


 母狼も危害が加えられる恐れがないと判断したのか、威嚇するのをやめてまた横たわっている。後ろにいたリントヴルムが何かしら合図を送っていたのかもしれない。


「危ねーだろ。母親は怪我をして気が立っているんだ」


「あー、そうっだったね。癒しの風(ヒール)!」


 母狼は魔法に一瞬驚くも、それが傷を癒す魔法だとわかったようで大人しくしていた。


「お前、回復魔法持ってたのか」


「当たり前。私を誰だと思っている『風の賢者』だぞ。ところで、あ、赤ちゃん触っていいか?」


 リントヴルムが母狼を見て何か合図を送ったようで、赤ちゃん狼を口にくわえて私の目の前に連れてきてくれた。どうやら回復魔法のお陰なのか信用してくれたらしい。


「うわあー、こいつふわっふわしてるな。とってもあったかい……。お、お前眠いのか、おいっ、寝ちゃいそうだぞ。お前の野生はどこにいった」


「うるさいな。その子落とすなよ」


「だ、大丈夫だ。それにしてもこの狼は魔物っぽくないな。一応お前もだが、それなりに知性を感じる。母親はお前とも意思疎通がとれているだろ」


「一応って、まぁ、そいつはフェンリスヴォルフ。またの名をフェンリルという。狼の最高峰に位置する種族だからな。知能レベルはお前より数段高い」


「お前、死にたいのか。洞窟ごとテンペストするぞ」


「怒るなよ。赤ちゃん狼が起きちゃうだろ。それで何だ、俺の言ってることが本当だとわかっただろ?」


「そうだな。……少しお前たちと話がしたい。しばらくここに通わせてもらう」


 リントヴルムとフェンリルが何やらお互いに見合わせて話をしているように思える。おそらく、この賢者一体何を考えてやがるんだといったところだろう。


「母狼はまだ傷が深く完治していない。私が回復魔法を定期的にかけよう」


「それで、お前の目的は何だ?」


「リントヴルムというドラゴンは共生できないドラゴンと聞いていた。今のお前を見ている限り、人間と上手くやっていくことができるのではないか?」


「悪いが、俺は自由だ。人間と上手くやるとかいう考えは持ち合わせていない。何にも縛られたくないし、好きな時に食べて好きな時に寝る。人間だって食べたくなったら食べるし気分次第で殺す」


「少なくとも私が賢者になってからリントヴルムに殺された人間というのは聞いたことがない。私はお前と話をして理解を深めたいと思い始めている」


「俺を見つけては殺そうとしていた野蛮な賢者様とは思えない発言だな」


「恋は人を盲目にさせる」


「意味がわかんねーよ!」


「気にするな。少なくともお前にたいしての考えが変わった。少し私にも考える時間をもらいたい。そのためにしばらく通わせてもらう」


「お前、赤ちゃん狼に会いたいだけだろう」


「ぐっ、リントヴルムは人の心が読めるのか!?」


「いや、読めねーよ」


「さっき、フェンリルと会話していたはず」


「あー、念話だな。よくわかったな」


「私も話がしたい。主に赤ちゃん狼と」


「ふん、気が向いたらフェンリルの方から話し掛けてくれるだろう」


「おー、そうか。つまりしばらく通っていいということだな」


「けっ、好きにしろ。その代わり、こいつらに危害が及ぶようなことがったら容赦しねーからな」


 お互いに会話が成立するのならもっと距離のとり方だったり、人間の世界との関わり方について私が橋渡し役になってもいい。少なくとも今、目の前にいるこのドラゴンはクソドラゴンではなく話し合いができそうなドラゴンに思える。


「フェンリルの好きな食べ物はなんだ?」


 リントヴルムがまた念話でフェンリルと会話をしている。こちらの質問を聞いてくれているのだろう。


「肉が好きらしいが、今は母乳を出さないといけないから鉄と水分、獣の髄が必要だと言っている」


「何で鉄が必要?」


「母乳は血液から作られるんだ。血を作るには鉄分が必要になる。母親がしっかり栄養と水分を取ることで母乳を飲ませることができるんだ」


「そうなのか。私も鉄をいっぱい食べれば母乳が出せるのか?」


「お前、やっぱり知能レベル低いだろ」


「クソドラゴン、やっぱりお前だけは殺す!」

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エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~
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