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第百三十話 王都ベルシャザール

 途中、大型種の魔物とスレ違うという驚きはあったものの、その後はいたって何の問題もなく王都の港へと入港した。


「ハルト殿、私は父上に説明が必要となるので、出発は早くても明日になるであろう。宿泊場所はこちらで用意するので、ゆっくりしておいてもらいたい」


「はい、ありがとうございます。ちなみにその場所は?」


「もちろん、城の中である。部屋は三つ用意してあるので、みなさんで相談して決めてほしい」


「城の中ですか……。かしこまりました」


「食事の前に侍従の者を向かわせるので城の中のことや、欲しいものなどは彼女らに伝えてくれ」


「は、はい。ありがとうございます」





「ロカ、またね。またしばらくしたら戻るから先にカイラルに戻ってるんだよー」


 なぁ、にゃぁー


 ベリちゃんの言葉を正確に理解している様子のロカは、僕たちにも挨拶をするように鳴き声をあげると、漁師のいるであろう方向へと歩いていった。魚をもらいにいくのだろう。迷子にならずにカイラルに無事戻ってもらいたい。


 港にはすでに豪華な大型馬車が複数準備されていた。もちろん、ラシャド王子を迎えに来ているのだけど、僕たちも続くように次の馬車に乗り込み王城へと向かうことになった。


「ハルト君、やはりプロポーズしたのだから部屋割りとしてはクロエ、ハルト君、私とベリル様、ジュリアさんになりますかね。私、頑張ってベリル様のお世話をさせていただきます」


 何故、この変態はベリちゃんと同じ部屋になれると思っているのだろう。


「私、パパとママと一緒の部屋がいい」


「うん、大丈夫一緒よ。ローランドはたまに頭がおかしい時があるから気にしなくていいわ」


「いつも通り?」


「ええ、そうよ。一緒に寝ましょうね」


 クロエがしっかり線引きをしている。戦闘では頼りになるローランドさんだけど、ドラゴンが絡むと途端に心配になる。アンフィスバエナとの戦いが急に不安になってきた。情に訴えかけてくるドラゴンならあっさり裏切りそうで怖い。


「夕食になる前に少し打ち合わせをしようか。ローランドさんもいいかな?」


「ハルト君、つまり私も一緒の部屋に入っていいということだね」


「あっ、はい。打ち合わせの時だけですけども」


 港から城までは緩やかな登り坂となっていて、馬車の窓からは様々な農作物や肉、魚が大量に並ぶマルシェが道沿いに形成されている。それはリンカスターやハープナとは比べ物にならない人と活気に溢れている。


「いろんな匂いがするの」


「帰りにいろいろ買い物で回ろうね。みんなにお土産も買ってかなきゃね」


「ベリルもみんなにお菓子買ってく!」


 孤児院のお兄さん、お姉さんの顔が思い浮かんだのだろう。優しい子だ。


「ローランドさん、ヴイーヴルは何か好きな物とかあるんですか?」


「そうですね。キラキラしたものが好きなようです。収集癖がありまして、宝石の類いには目がありません」


「宝石かぁ、お金のかかりそうだね」


「別に宝石でなくても細工の入った小物などでも喜ばれるでしょう」


 サフィーニア公国でも何かキラキラしたものがないか探してみよう。今回、留守番の件や身隠しの粉でもお世話になっている。何か珍しいものでもお土産に渡したい。


 そんな話をしていたら、どうやら城へと到着したらしい。馬車を降りようとしたら何やら揉めているような声が聞こえてくる。


「クロエちゃんと結婚できないですって!」

「は、母上、事前に手紙を届けていたはずです」

「知ってるわ。納得できないから聞いているのでしょう。クロエちゃんはどこ?」


 降りようと思ったけど、なんだか降りたくなくなる雰囲気だ。どうやらラシャドママが納得されてないご様子。


「ハルト、行くぞ」


 相変わらず男らしいクロエが、僕の腕をとって馬車を降りていく。一気に大勢の目線が集まったような気がする。


「アステリア様、先日は大変お世話になりました。またお会いできて嬉しく思います」


「あら、クロエちゃん今日も可愛いわね。ところで隣の方を紹介してもらえるかしら」


「私の婚約者でハルトと申します」

「ハルトです。よろしくお願いします」


「聞き間違いかしら? その冴えない男が婚約者と聞こえたのだけど。クロエちゃんには、うちのラシャドちゃんの方が家柄、金銭面、愛らしさの全てにおいて上回っていると思うの」


「母上、もうおやめください。クロエ殿とは話がついております。ハルト殿はクロエ殿が賢者として苦労していた時から支え合っていた仲なのです。私の入る隙間などありません」


「まぁ、そうだったのね……。ラシャドちゃんがそう言うのならしょうがないわ。ではこちらからクロエちゃんにお願いをしようかしら」


「お願い……ですか?」


「サフィーニア公国のアンフィスバエナを討伐した次の標的はノースポリアのリントヴルムをお願いしたいの」


「リントヴルム……」


「母上、リントヴルムは『風の賢者』ニーナ殿が抑えているはずです。何故に?」


「『火の賢者』が難しいのであれば『風の賢者』を解放すればよいのです。ちなみにニーナちゃんはラシャドちゃんに好意を持っているとの情報を入手してるわ」


「い、いや、母上。賢者なら誰でもいいと言う訳ではなくてですね……」


「あら、とても可愛い女の子じゃない。嫌いなの?」


「好きとか嫌いとかではなくてですね。そ、その意識しておりませんでしたから急に言われてもですね」


「まぁいいわ、ラシャドちゃんはこれからすぐに家族会議よ。このまま会議室に来なさい。クロエちゃん達は夕食までゆっくり休んでいて頂戴ね。すぐに案内させるわ」


 アンフィスバエナ討伐の後はリントヴルムが控えているらしい。断ったら怒られそうだよね……。

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